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書籍詳細

パーキンソン病における下部尿路機能障害診療ガイドライン

パーキンソン病における下部尿路機能障害診療ガイドライン

日本排尿機能学会 パーキンソン病における下部尿路機能障害診療ガイドライン作成委員会 編集

B5判 113頁

定価3,630円(本体3,300円 + 税)

ISBN978-4-498-06428-7

2017年04月発行

在庫あり

パーキンソン病患者の非運動症状としての下部尿路機能障害(神経因性膀胱)につき,エビデンスに基づいてまとめた本邦初の診療ガイドライン.治療に際して,予想される効果,気を付けるべき点などを示す.アルゴリズムも,神経内科医・一般医家むけ,泌尿器科医むけの2種類を掲載.Clinical Questionsでは,広く臨床家にとって有用な情報を提供する.

巻頭言

 パーキンソン病(Parkinson's disease: PD)は,安静時振戦,筋固縮,無動などをきたす代表的な神経変性疾患(神経難病)で,中脳黒質のドパミン神経などが減少することで起こる病気です.その診断は,ベッドサイドの診察が基本ですが,近年,脳dopamine transporter(DAT)single photon emission computed tomography(SPECT),心筋 I-metaiodobenzylguanidine(MIBG)シンチグラフィーにより,高い精度で比較的容易に,診断が行えるようになってきました.治療は,L-ドパ・ドパミンアゴニストなどの薬物療法が主体ですが,近年,深部脳刺激療法も広く行われ,運動機能の改善が得られるようになってきました.

 PDでは,泌尿器科医・消化器科医の間で広く知られておりますように,過活動膀胱・便秘をはじめとする多彩な「非運動症状」がみられます.このうち,下部尿路機能障害(神経因性膀胱)については,近年の下部尿路の生理学・薬理学の進歩により,かなりのことが明らかにされていますが,中枢の影響については,なお不明の点もみられます.ウロダイナミクスを行いますと,PD患者さんの下部尿路機能障害(神経因性膀胱)は,排尿筋過活動(detrusor overactivity: DO)が多く,残尿が少ないことから,典型的な中枢性の神経因性膀胱をきたすことが明らかにされてきています.その他,PDの蓄尿期の異常として,DOを伴わない膀胱知覚過敏,排尿期の異常として,残尿は少ないものの,軽度の排尿筋低活動が,一部の患者さんにみられます.さらに,合併疾患として,前立腺肥大症,腹圧性尿失禁,(夜間)多尿を伴うことも少なくありません.これらの中で,PD患者さんのDOは,過活動膀胱(overactive bladder: OAB)症状をきたします.一方,PD患者さんの下部尿路機能障害の治療に際して,どのような点に気をつけて行うべきなのか,どのような効果が予想されるのか,これまで,十分にまとまった参考資料がほとんどなく,治療の選択などで難渋する場合が少なくなかったように思われます.これらの点について,実際にPD患者さんの下部尿路障害の治療にあたっておられる,泌尿器科医・神経内科医・広く一般内科医の先生方から,身近で使えるガイドラインの必要性が聞かれておりました.

 この問題に対処すべく,今回,日本排尿機能学会において,パーキンソン病における下部尿路機能障害診療ガイドライン作成委員会を中心に,「パーキンソン病における下部尿路機能障害診療ガイドライン」を作成いたしました.PDの下部尿路機能障害は,病態面では,中枢性の神経因性膀胱の中で,最も研究が進んでいる領域と思われますが,なお不明な点が少なからずみられます.治療面では,多数例無作為二重盲検による介入研究が,残念ながらまだほとんど行われておりません.これらのため,従来のガイドラインと異なり,本ガイドラインは,推奨グレードが若干低くなり,大多数がエビデンスレベル3の論文となることが予想されました.しかし,本ガイドラインは,下部尿路機能障害で悩んでおられるPD患者さんの治療を,科学的かつ実際的に行う最初のステップになるものと考え,あえて作成に取り組むことと致しました.

 本ガイドラインでは,はじめに「パーキンソン病における下部尿路機能障害の診療アルゴリズム」を掲載致しました.

 アルゴリズム1は神経内科医・一般医家に,アルゴリズム2は泌尿器科医に向けたものです.

 続く第1部の「Clinical Questions」は,神経内科医・泌尿器科医・および広く臨床家の先生方に有用な情報をわかりやすい形で提供すべく,編集致しました.作成にあたり,ワーキンググループの先生方に,わかりやすく,実際的で,なおかつ科学的な記載を心がけて頂きました.

 続いて,第2部の「下部尿路機能障害に関わるパーキンソン病の概論」は,診療アルゴリズムおよび第1部の理解を深めるために,PDの下部尿路機能障害に関する総論的な事項をまとめたものです.

 この「パーキンソン病における下部尿路機能障害診療ガイドライン」が,広く参照され,臨床の場で役立ち,下部尿路機能障害で苦しんでおられるPD患者さんの助けになることを祈念しております.

   2017年吉日

 

 日本排尿機能学会                        

 パーキンソン病における下部尿路機能障害診療ガイドライン作成委員会

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パーキンソン病における下部尿路機能障害の診療アルゴリズム
    1.神経内科医・一般医家用アルゴリズム
    2.泌尿器科医用アルゴリズム

序章
   1.「パーキンソン病における下部尿路機能障害診療ガイドライン」の定義と目的
   2.作成の経緯と主体
   3.ガイドラインの種類と対象
   4.作成の原則
   5.文献検索の方法
   6.エビデンスのレベル
   7.推奨度(推奨グレード)について
   8.文献の記載方法
   9.改訂
  10.作成の資金源について
  11.ガイドライン作成に参考となる書籍
  12.CQの作成について
  13.文献データによるガイドライン作成の限界

第1部 Clinical Questions
  CQ1: パーキンソン病の下部尿路機能障害の診療において,下部尿路症状質問票は推奨されるか.
  CQ2: パーキンソン病の下部尿路機能障害の診療において,生活の質(QOL)の評価は推奨されるか.
  CQ3: パーキンソン病の下部尿路機能障害の診療において,排尿日誌(頻度・尿量記録)は推奨されるか.
  CQ4: パーキンソン病の下部尿路機能障害の診療において,認知機能の評価は推奨されるか.
  CQ5: パーキンソン病の下部尿路機能障害の診療において,残尿測定は推奨されるか.
  CQ6: パーキンソン病の下部尿路機能障害の診療において,尿流動態検査は推奨されるか.
  CQ7: パーキンソン病の運動障害に対する治療薬によって,下部尿路機能障害は改善するか.
  CQ8: 過活動膀胱を合併したパーキンソン病に対し,末梢性抗コリン薬は推奨されるか.
  CQ9: 過活動膀胱を合併したパーキンソン病に対し,β3アドレナリン受容体作動薬は推奨されるか.
  CQ10 : 過活動膀胱を合併したパーキンソン病に対し,ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は推奨されるか.
  CQ11 : 前立腺肥大症を合併したパーキンソン病に対し,α1アドレナリン受容体遮断薬は推奨されるか.
  CQ12 : 前立腺肥大症を合併したパーキンソン病に対し,前立腺肥大症手術は推奨されるか.
  CQ13 : 腹圧性尿失禁を合併したパーキンソン病に対し,尿失禁手術は推奨されるか.

第2部 下部尿路機能障害に関わるパーキンソン病の概論
 A.下部尿路症状とは
  はじめに
  1.蓄尿症状
  2.排尿症状
  3.排尿後症状
  4.神経疾患での下部尿路症状問診における注意点
 B.ウロダイナミクスとは
  はじめに
  1.尿流測定
  2.残尿測定
  3.膀胱内圧測定
  4.内圧尿流検査
  5.外尿道・肛門括約筋筋電図検査
    1) 蓄尿中および排尿中の外括約筋筋電図
    2) 外括約筋の運動単位電位分析
  6.その他のウロダイナミクス
    1) 尿道内圧測定
    2) ビデオウロダイナミクス
 C.パーキンソン病の診断
  はじめに
  1.診断基準
    1) Queen Square UK Brain Bank Criteriaの基準
    2) 画像を含めた診断の試み
    3) 国際パーキンソン病運動障害学会の臨床診断基準: 実効的な要約/完全版
  2.病期診断
  3.鑑別診断
  4.歴史・疫学
  5.症候
  6.病理・薬理
  7.画像
  8.遺伝子
  9.運動症状・非運動症状の治療
 D.パーキンソン病における下部尿路機能障害の基礎的検討
  はじめに
  1.下部尿路の神経機能
    1) 下部尿路の末梢神経支配
    2) 脳幹と排尿反射
  2.大脳基底核と排尿反射
    1) 黒質緻密部
    2) 線条体
    3) 視床下核(STN)
    4) 中脳水道周囲灰白質(PAG)
    5) 橋排尿中枢(PMC)
    6) 前頭前野
  3.パーキンソン病における高位排尿中枢ネットワーク
 E.パーキンソン病における下部尿路機能障害の脳画像
  はじめに
  1.健常者の排尿反射に関与する脳賦活部位
  2.特発性過活動膀胱(OAB)の機能的脳画像と前脳の排尿メカニズムの推定
  3.パーキンソン病患者の下部尿路障害のメカニズム
  4.パーキンソン病患者における排尿筋過活動(DO)発現時の脳画像
  5.視床下核深部脳刺激療法(STN-DBS)に伴う排尿症状の変化と機能的脳画像
 F.パーキンソン病における下部尿路機能障害の臨床: ウロダイナミクス検査を中心に
  はじめに
  1.下部尿路症状
    1) 頻度
    2) 蓄尿症状,排尿症状
  2.下部尿路機能障害の頻度(ウロダイナミクス検査)
    1) 蓄尿機能障害
    2) 排尿機能障害
 G.パーキンソン病における下部尿路機能障害に対する行動療法
  1.過活動膀胱(OAB)に対する行動療法
    1) 生活指導
    2) 計画療法(広義の膀胱訓練)
    3) 理学療法
 H.パーキンソン病における下部尿路機能障害に対する薬物療法
  はじめに
  1.パーキンソン病の運動障害治療薬と排尿機能〜ドパミン系薬剤の下部尿路への影響
  2.抗コリン(抗ムスカリン)薬による治療
    1) オキシブチニン
    2) オキシブチニン皮膚貼付剤
    3) プロピベリン
    4) トルテロジン
    5) ソリフェナシン
    6) イミダフェナシン
    7) フェソテロジン
  3.β3 アドレナリン受容体(AR)作動薬: ミラベグロン
  4.その他の薬剤
    1) フラボキサート
    2) セロトニン系薬物
 I.パーキンソン病における下部尿路機能障害に対するその他の治療
  はじめに
  1.パーキンソン病に合併した前立腺肥疾患に対する外科的治療
  2.経尿道的A型ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法
  3.経皮的後脛骨神経電気刺激法などの神経刺激療法
  4.脳深部刺激法の下部尿路機能障害への効果
  5.反復経頭蓋磁気刺激療法の下部尿路機能障害への効果
  6.その他の治療

    ■コラム1 Detrusor hyperactivity witth impaired contractile function(DHIC)
    ■コラム2 パーキンソン病での起立性低血圧治療薬の下部尿路機能障害への影響
    ■コラム3 パーキンソン病の膀胱に対して,L-ドパが短期的に亢進(増悪)・長期的に抑制(改善)の2相性効果を出す理由は?
    ■コラム4 パーキンソン病の蓄尿障害〜膀胱知覚過敏の関与
    ■コラム5 中枢性抗コリン薬(トリヘキシフェニディルなど)の下部尿路機能に対する影響

  索引

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執筆者一覧

日本排尿機能学会 パーキンソン病における下部尿路機能障害診療ガイドライン作成委員会  編集
作成委員  
■ 委員長   
榊原隆次 東邦大学医療センター佐倉病院内科学神経内科教授  
■ 副委員長   
山西友典 獨協医科大学排泄機能センター主任教授  
■ 委員(五十音順)   
荒木勇雄 滋賀県甲賀健康福祉事務所(甲賀保健所)所長  
内山智之 獨協医科大学排泄機能センター  
橘田岳也 北海道大学医学研究院腎泌尿器外科学教室  
関戸哲利 東邦大学医療センター大橋病院泌尿器科教授  
山本達也 千葉大学大学院医学研究院神経内科学  
■ 監修   
横山 修 福井大学医学部器官制御医学講座泌尿器科学教授  
武田正之 山梨大学大学院総合研究部泌尿器科学講座教授  
後藤百万 名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科学教授  
本間之夫 東京大学大学院医学系研究科泌尿器科学教授  
吉村直樹 ピッツバーグ大学医学部泌尿器科教授  
村田美穂 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院長  

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