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書籍詳細

高齢者薬物療法ハンドブック

高齢者薬物療法ハンドブック

小澤利男 他編著

B6判 578頁

定価7,260円(本体6,600円 + 税)

ISBN978-4-498-01752-8

2002年07月発行

在庫なし

高齢者の診療には常に,年齢と個体差を念頭において行われなければならないが,それには特別なノウハウが必要とされる.
本書は東京都老人医療センターのスタッフを中心とした高齢者医療に習熟した著者らが様々な症候・病態を呈する高齢者診療の実際を薬物療法に重点をおいて解説したものである.
多剤投与に傾きやすい高齢者治療では副作用・相互作用の問題があり,一方で定額の保険診療の関係から必要な投与を控えるという問題もある.高齢者のための効果的で適切な薬物療法を行うガイドブックとして,研修医,臨床医に役立つ実践の書である.


 高齢者とは,一般に65歳以上を指す.介護保険の対象者も,この年齢を超えるものとなっている.しかし,平均寿命の延びが顕著なわが国では,60歳代はまだ中年に近い熟年期とみなされる.高齢の障害が問題となってくるのは,70歳以降である.75歳を境界として高齢前期(65〜74)と高齢後期(75〜)とに2分すると,医療と福祉の面で問題が多発するのは,高齢後期である.特に85歳以上の超高齢期では,死亡の確率が高く,要介護者と痴呆も増加し,医療と福祉の適切な対応が望まれている.しかも,人口の増加率からみると,この年齢層が今後最も大きくなるものと推測されている.
 高齢者は,しばしば小児と対比される.だが高齢期が小児期と根本的に異なるのは,個体差が大きいという点にある.治療は常に,年齢と個体差を念頭において行わねばならない.個体差は,老化の進行度,老年病の合併頻度とその重症度,生活機能障害の有無などにあらわれる.認知機能の評価は特に重視されるべきである.
 薬剤の副作用の増加は,薬物療法で最も注意すべき点である.多臓器に疾病があり,訴えもさまざまであり,急性期症状も多いことから,高齢者では多剤投与に傾きがちである.一方では,定額の保険診療の関係で,必要な薬剤投与を控えるむきもある.
 本書では以上の点を踏まえ,高齢者に対して適切な薬物療法を行うための手引きとなるように,配慮した.その主眼は日常遭遇することの多い症状ならびに疾患を対象としている.したがって個別的な疾患についての詳しい専門的治療の記載は,充分ではない.それは,それぞれの成書を参照されたい.本書のねらいは,さまざまな症候をあらわす高齢患者のプライマリーケアにあたる一般臨床医の診療ガイドという点にある.
 執筆者は,東京都老人医療センター勤務医の他,高齢者医療に習熟した医師に広く委任した.単なる薬物療法のみではなく,鑑別診断の要点や非薬物療法,超高齢者への対応などにも,配慮してある.
 本書が,高齢者と接する機会の多い医師,あるいは薬剤師の日常診療の手引きとなれば,望外の幸である.

2002年3月
東京都老人医療センター名誉院長 小澤利男
東京都老人医療センター院長 折茂 肇

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目 次

§1.高齢者薬物療法の注意点 〈小澤利男〉
    A.高齢者ではなぜ薬剤の副作用が多いか
    B.高齢者で使用される薬物
    C.老年者薬物療法の注意点
    D.QOLの重視

§2.症状の鑑別と投与薬剤
  1.意識障害:昏睡,傾眠,せん妄(錯乱)〈宮崎徳蔵〉
  2.めまい〈榎本武郎〉
  3.失 神〈谷口 泰,桑島 巌〉
  4.立ちくらみ〈小澤利男〉
  5.手のふるえ〈板東充秋〉
  6.手足のしびれ〈榎本武郎〉
  7.不 眠〈井川真理子〉
  8.痙 攣〈名倉博史〉
  9.頭 痛〈小林 秀〉
  10.食欲不振〈梁 京賢〉
  11.便 秘〈梁 京賢〉
  12.下痢,軟便〈梁 京賢〉
  13.腹 痛〈黒岩厚二郎〉
  14.悪心,嘔吐〈黒岩厚二郎〉
  15.吐血,下血〈黒岩厚二郎〉
  16.咳,痰〈山田浩一〉
  17.発 熱〈増田義重〉
  18.呼吸困難(息切れ・喘息)〈西永正典〉
  19.動悸,不整脈発作〈千田宏司〉
  20.胸 痛〈土持英嗣〉
  21.尿失禁,頻尿〈村山猛男〉
  22.排尿困難〈村山猛男〉
  23.血 尿〈粕谷 豊〉
  24.下腿浮腫〈西永正典〉
  25.全身倦怠〈服部明徳〉
  26.腰 痛〈石橋英明〉
  27.関節痛〈石橋英明〉
  28.痒 み〈種井良二〉

§3.慢性疾患の管理における薬物療法
  1.高血圧〈桑島 巌〉
    A.高齢者における診療の注意点
    B.管理のポイント
    C.薬物療法
    D.処方例
    E.薬物療法以外の治療
    F.救急の対応
  2.糖尿病〈井藤英喜〉
    A.高齢者における診療の注意点
    B.管理のポイント
    C.薬物療法
    D.処方例
    E.薬物療法以外の治療
    F.救急の対応
  3.高脂血症〈荒木 厚〉
    A.高脂血症の定義
    B.高脂血症の分類
    C.高脂血症の検査
    D.高脂血症の治療開始値,治療目標値
    E.高コレステロール血症の治療
  4.骨粗鬆症〈細井孝之〉
    A.高齢者における骨粗鬆症の特徴
    B.診断のポイント
    C.管理のポイント
    D.薬物療法
    E.処方例
  5.慢性閉塞性肺疾患(COPD)〈木田厚瑞〉
    A.COPDの概念
    B.COPDの危険因子
    C.COPDの診断
    D.COPDの薬物療法
    E.COPDに対する包括的呼吸リハビリテーション
    F.肺気腫に対する肺容量減少手術
  6.脳血管障害〈山之内博〉
    A.心由来の脳塞栓の再発予防
    B.動脈硬化性血栓性脳梗塞の再発予防
    C.脳梗塞の後遺症等に対する治療
    D.処方例
  7.うつ病〈小山恵子〉
    A.高齢者における診療の注意点
    B.管理のポイント
    C.薬物療法
    D.処方例
    E.薬物療法以外の治療
    F.救急の対応
  8.痴 呆〈小山恵子〉
    A.高齢者における診療の注意点
    B.管理のポイント
    C.薬物療法
    D.処方例
    E.薬物療法以外の治療
    F.救急の対応
  9.うっ血性心不全〈西永正典〉
    A.高齢者におけるうっ血性心不全の特徴
    B.治療・管理のポイント
    C.薬物療法
    D.処方例
  10.不整脈,心房細動〈千田宏司〉
    A.高齢者における診療の注意点--高齢者の不整脈の特徴
    B.管理のポイント
    C.薬物療法
    D.処方例
  11.虚血性心疾患〈藤田直也〉
    A.高齢者における診療の注意点
    B.管理のポイント
    C.薬物療法
    D.処方例
    E.薬物療法以外の治療
    F.救急の対応
  12.胃十二指腸潰瘍〈紀 健二〉
    A.高齢者における診療の注意点・鑑別についての注意
    B.管理のポイント
    C.薬物療法
    D.処方例
    E.薬物療法以外の治療
    F.救急の対応
  13.甲状腺疾患〈堀内敏行〉
   I.甲状腺機能亢進症を伴う甲状腺中毒症
    A.Basedow病
    B.無痛性甲状腺炎
    C.Plummer病および中毒性多発結節腺腫
   II.甲状腺機能低下症
    A.橋本病
    B.アイソトープまたは外科的手術後の甲状腺機能低下症
    C.続発性甲状腺機能低下症
   III.甲状腺腫瘍
  14.変形性関節症,変形性脊椎症〈石橋英明〉
    A.高齢者における診療の注意点
    B.管理のポイント
    C.薬物療法
    D.処方例
    E.薬物以外の治療
    F.救急の対応
  15.前立腺肥大症〈村山猛男〉
    A.高齢者における診療の注意点
    B.管理のポイント
    C.薬物療法
    D.処方例
    E.薬物療法以外の治療
    F.救急の対応
  16.パーキンソン病,パーキンソン症候群〈金丸和富〉
    A.高齢者における診療の注意点
    B.管理のポイント
    C.パーキンソン病の薬物療法
    D.処方例
    E.薬物療法以外の治療
    F.救急の対応
  17.慢性呼吸不全〈木田厚瑞〉
    A.高齢者の在宅酸素療法
    B.適応基準
    C.導入上の注意点
    D.導入の手順
    E.在宅酸素療法の効果
    F.包括的呼吸リハビリテーションとしての在宅酸素療法
    G.処方例
  18.閉塞性動脈硬化症〈荒木 厚〉
    A.症 状
    B.検 査
    C.日常生活の注意と理学療法
    D.薬物治療
    E.処方例
    F.外科治療
  19.貧 血〈森眞由美〉
    A.高齢者における診療の注意点
    B.管理のポイントと薬物療法
    C.処方例
    D.薬物療法以外の治療法
    E.救急の対応
  20.慢性腎不全〈安藤 稔〉
    A.高齢者における診療の注意点
    B.管理のポイント
    C.薬物療法
    D.処方例
    E.薬物療法以外の治療
    F.救急の対応
  21.肝機能障害〈梁 京賢〉
    A.高齢者の肝機能障害の特徴
    B.管理のポイント
    C.薬物療法
    D.処方例
    E.薬物療法以外の治療
    F.救急の対応
  22.肺結核〈桂 秀樹〉
    A.高齢者の肺結核の特徴
    B.診断のポイント
    C.薬物療法
    D.処方例
    E.管理のポイント
    F.結核の再治療および多剤耐性結核の治療
  23.褥瘡〈種井良二〉
    A.高齢者における褥瘡診療の注意点
    B.管理のポイント
    C.薬物療法
    D.処方例
    E.薬物療法以外の治療
    F.救急の対応

§4.急性疾患における対応
  1.かぜ症候群〈増田義重〉
    A.かぜ症候群とは
    B.病 型
    C.治 療
  2.インフルエンザ〈稲松孝思〉
    A.高齢者における診療の注意点
    B.管理のポイント
    C.薬物療法
    D.処方例
    E.薬物療法以外の治療
    F.救急の対応
  3.肺炎〈木田厚瑞〉
    A.高齢者の市中肺炎
    B.早期診断のあり方
    C.検査の進め方と所見
    D.入院の適応
    E.肺炎の治療
    F.肺炎の予防
  4.気管支喘息〈山田浩一〉
    A.高齢者における診療の注意点
    B.管理のポイント
    C.薬物治療
    D.処方例
    E.喘息急性増悪時の救急対応
  5.脳卒中発作〈山之内博〉
    A.脳浮腫対策
    B.各病型別治療
    C.処方例
  6.急性冠症候群〈藤田直也〉
    A.診断のポイント
    B.急性心筋梗塞の治療
    C.不安定狭心症の治療
    D.高齢者における注意点
  7.転倒,骨折〈山本精三〉
    A.高齢者における骨折診療の注意点
    B.高齢者骨折患者管理のポイント
    C.薬物療法
    D.処方例
    E.薬物療法以外の治療
  8.脱水〈服部明徳〉
    A.代表的な点滴の種類
    B.脱水の種類
    C.高齢者での点滴量
  9.高血糖〈荒木 厚〉
    A.非ケトン性高浸透圧性昏睡
    B.糖尿病性ケトアシドーシス
    C.シックデイ(意識障害がなく,高血糖が予想される場合)の治療
  10.低血糖〈荒木 厚〉
    A.定 義
    B.低血糖をきたす疾患
    C.症 状
    D.治 療
  11.不穏,興奮〈井川真理子,小山恵子〉
    A.診察にあたって注意すること
    B.高齢者でみられる不穏とその治療
  12.帯状疱疹〈種井良二〉
    A.診断のポイント
    B.診療上の注意点
    C.薬物療法
    D.処方例
    E.対応のポイント
  13.膀胱炎〈金子裕憲〉
    A.高齢者の膀胱炎の特徴
    B.診断のポイント
    C.治療上の注意点
    D.長期尿道カテーテル留置例の対処
    E.処方例
  14.イレウス〈樋口芳樹〉
    A.定義と病態生理
    B.分類と病因
    C.高齢者における特徴・注意点
    D.診断のポイントと検査
    E.治 療

§5.各種薬剤の使用上の注意点
  1.抗菌薬〈稲松孝思〉
  2.抗炎症鎮痛薬〈菱川隆史〉
  3.降圧薬〈桑島 巌〉
    A.利尿降圧薬
    B.β遮断薬
    C.α遮断薬
    D.Ca拮抗薬
    E.ACE阻害薬
    F.アンジオテンシンII受容体拮抗薬
  4.抗精神病薬,抗うつ薬,抗不安薬,睡眠薬〈塩塚慎一〉
    A.抗精神病薬(いわゆるmajor tranquilizer)
    B.抗うつ薬
    C.抗不安薬,睡眠薬
  5.抗凝固薬,抗血小板薬〈坂井 誠〉
    A.ワルファリンカリウム
    B.血小板凝集抑制薬(抗血小板薬)
  6.抗癌薬〈森眞由美〉
  7.消化器系薬剤〈紀 健二〉
    A.健胃消化薬
    B.胃腸機能調整薬
    C.消化性潰瘍治療薬
    D.止痢・整腸薬
    E.炎症性腸疾患治療薬
    F.下剤
    G.利胆薬
    H.肝疾患治療薬
    I.膵疾患治療薬
    J.消化器用薬剤の使用上の注意点

§6.高齢者における漢方薬の使い方〈折茂 肇〉
    A.生理的観点からみた高齢者の特徴
    B.高齢者の病態および疾患の特徴
    C.高齢者医療のあり方
    D.高齢者医療における漢方治療の意義
    E.高齢者における漢方薬の使い方
    F.高齢者の主要疾患の漢方治療
    G.西洋医薬と漢方薬の併用
    H.高齢者の漢方治療で特に注意すべきこと

§7.知っておくべき薬剤の配合禁忌(薬物間相互作用) 〈矢澤知子〉
    A.薬理作用に影響する高齢者の特徴
    B.薬物間相互作用

§8.高齢者に汎用される薬による薬剤誘起性疾患
  1.薬剤性パーキンソニズム〈名倉博史〉
  2.消化管出血〈田中康夫〉
  3.ステロイド薬〈菱川隆史〉
    A.ステロイド潰瘍
    B.感染症
    C.ステロイド糖尿病
    D.骨粗鬆症
    E.副腎機能低下
    F.精神症状
    G.無腐性骨壊死
    H.動脈硬化症
    I.ステロイド筋症
    J.緑内障
  4.NSAID〈小玉嘉昭〉
  5.抗癌薬〈大田雅嗣〉
    A.血液毒性(骨髄抑制による汎血球減少症)
    B.消化器毒性(口内炎,悪心嘔吐,下痢)
    C.主としてアンソラサイクリン系薬剤による心筋障害,心不全
    D.肺障害(多くは間質性肺炎の形をとる)
    E.神経毒性
    F.肝障害
    G.腎毒性
    H.皮膚障害
    I.Tumor lysis syndrome
    J.その他

§9.特別養護老人ホーム診療所に常備が望ましい薬剤 〈日野恭徳〉
    A.特養居住者に多い疾患
    B.特養に必要な薬剤
    C.疾患別薬剤

薬物索引
事項索引

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