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書籍詳細

医学論文を読んで活用するための10講義

視野を広げるエビデンスの読み方

医学論文を読んで活用するための10講義

青島周一 著

A5判 300頁

定価4,840円(本体4,400円 + 税)

ISBN978-4-498-10916-2

2020年05月発行

在庫あり

EBMは現時点において最も信頼できる科学的根拠を踏まえながら,最善の臨床判断を模索する臨床行動スタイルです.正しい理解のもとで実践すれば医療者にとって有益な武器となるものの,根本的な理解が追いついていなければ十分な利益をもたらさないでしょう.本書は,著者が実施した研修会の内容を再構築し、医学論文の実践的かつ効率的な読み方,そして論文結果を多面的に考察するために必要な視点についてまとめました.

出版社からのコメント

「エビデンスを読む,エビデンスと向き合う」

青島周一先生が執筆された
『医療情報を見る、医療情報から見る エビデンスと向き合うための10のスキル』はこちら!
(株式会社金芳堂様のWEBページに飛びます)

序文
エビデンスに基づこうと意図したとき,私たちは何を思考しているのだろうか

エビデンスという言葉は保健・医療分野のみならず,情報技術分野,あるいは金融業界など,ビジネス用語としても広く用いられています.とはいえ,生活レベルの会話において,エビデンスを語る機会は少ないように思います.日常生活はエビデンスに裏打ちされるような何かではなく,むしろ感情によって豊かさを享受しうる人の生そのものです.
エビデンスという言葉を口にするとき,私たちは何を考え,どんなことを期待し,そしてどんな判断や決断を下そうとしているのでしょうか.エビデンスが証拠という意味で使われる限りにおいて,そこには客観性や普遍性への関心,あるいは証憑性の担保という意図が垣間みえます.あるいは,人間の主観的な認識に基づく価値判断から脱却することで,科学的であろうとする態度と言っても良いかもしれません.
EBM(Evidence-Based Medicine)は臨床における医療者の行動スタイルですが,その関心が少なからずエビデンスに向いていることは否めないでしょう.「エビデンスに基づく」という思考は,人の感情や価値観という要素を希薄にさせてしまう印象があります.「エビデンスの押しつけ」というようなEBMに対する誤解がいまだ存在することは,こうした言葉の問題なのかもしれません.しかし,天気予報に示された降水確率の解釈が人によって異なるように,エビデンスに示されたデータの解釈もまた多様です.絶対的に正しいエビデンスの解釈が存在しないからこそ,人の感情や価値認識に寄り添えるのだと思います.
本書は,独立行政法人国立病院機構栃木医療センターの後期研修プログラムの中で,EBM学習の一環として,私が担当させていただいた研修会の内容を再構築したものです.2018年4月から2020年3月にかけて行われたレクチャー内容に基づき,エビデンス,すなわち臨床医学論文の実践的かつ効率的な読み方,そして論文結果を多面的に考察するために必要な視点について,講義形式でまとめました.
これまで臨床医学論文を全く読んだことがない方,統計や英語の読解に自信のない方でも容易に読み進められるよう配慮しています.また,すでにEBMを実践され,数多くの論文に触れている方にとっても,論文結果の解釈をめぐる議論は興味深く読んでいただけることでしょう.さらには,EBMに関する教育に携わっておられる方にも有益な示唆を得られるものと考えています.
栃木医療センターでの研修会は,これまで私が実践してきたEBMを見つめ直すきっかけになっただけでなく,参加してくださった先生方から多くの気づきを得る貴重な機会となりました.研修会の中で頂いた数多くの質問や意見は,本書の内容にも反映されています.このような機会をくださった栃木医療センターの内科医長,矢吹拓先生に改めて感謝を申し上げます.
2020年3月
青島周一

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目次

introduction 科学的に考えるということ(科学と疑似科学の境界)
根拠とは?科学的とは?
ホメオパシー医学
占星術による占い
実験や観察に基づくデータがあれば科学的と言えるのか?
診療ガイドラインの推奨は科学的と言えるのか?
漢方薬は科学か?
高血圧治療の決定実験
糖尿病治療の決定実験
既存の理論を否定する研究結果
ACCORD試験以後
科学と疑似科学の境界問題,再び

第1講1限目 PECOとランダム化比較試験
前提を疑い,そして問いを立てる
背景疑問と前景疑問
EBMは前景疑問を解決するためのツール
実際の臨床場面を想定してみる
どんな情報を調べますか?
医学的介入の有効性・安全性を評価するにあたり参照優先度が低いエビデンス
妥当性の高い比較を行うには
外的妥当性
EBMとはエビデンスの使い方に関するものである

第1講2限目 ランダム化比較試験論文を読む
論文の結果を見てみる
■Column 喫煙と禁煙がもたらす健康への影響

第2講1限目 問いを立て,検証する
なぜ真のアウトカムを重視するのか?
理論と現象
ランダム化比較試験の評価項目
統計的仮説検定を理解する
統計的な有意差と臨床的に意味のある差
統計的過誤という概念
研究に必要な症例数の決め方
一次アウトカムとは?

第2講2限目 設定されている一次アウトカムは何か?
研究結果を見てみる
FREED試験の結果が,いかに曖昧なのかを予備校の合格実績で考えてみる
研修会の終わりに

第3講1限目 プラセボ効果の威力とPROBEの罠
オープンラベル試験とその問題点
疾患の自然治癒
侮れないプラセボ効果
プラセボ効果で死亡リスクは減るのか?
ピグマリオン効果とホーソン効果
薬剤効果検証試験ではefficacyのみを検出したい
二重盲検法が採用できないケース
PROBEの問題点
PROBE試験の例

第3講2限目 プラセボ効果の活用を考える
論文のPECOを確認する
研究の結果は?
プラセボ効果のメカニズム

第4講1限目 ランダム化は保持されているか? 非劣性を見るとはどういうことか?
Per Protocol Set: PPS
Intention-to-treat: ITT
Full Analysis Set:FAS
どんな手法で解析するのがベストか?
追跡状況を見る
非劣性試験とは
非劣性を示すにはどうすれば良い?
統計的有意とはどういうことか?
有意差なし≠効果なし
非劣性の検討ロジック
非劣性マージンをどう決めているのか?─仮想プラセボという考え方
糖尿病治療薬の臨床試験を巡るあれこれ
非劣性試験の解析方法

第4講2限目 非劣性試験論文を読む
研究デザインと論文のPECOを確認する
解析方法を確認する
サンプルサイズについて
論文の結果を見る
そもそも,高尿酸血症は心血管疾患や死亡のリスク因子なのか?
■Column アロプリノールかフェブキソスタットか?

第5講1限目 文献検索をしてみる!
情報の鮮度という問題
情報検索戦略
PECOTによる定式化と疑問に適した研究デザイン
エビデンスレベルはナンセンス!
原著論文と総説論文
PubMedによる論文検索ステップ
Googleによる論文検索ステップ
検索ワードの注意点?:MeSHデータベースの活用
検索ワードの注意点?:理論演算子
PubMed Clinical QueriesとSingle Citation Matcher

第5講2限目 クロスオーバー試験を読む
調べたいテーマについて,実際に論文を検索してみる
検索ワードを考える
論文のPECOと盲検化
クロスオーバー試験とは
解析方法と追跡状況
研究結果を見てみる

第6講1限目 多変量世界へのいざない
因果関係と相関関係
因果関係は実在するのか?
臨床研究における因果推論
原因と要因を区別する
原因の強さを考える
原因の強さと因果パイモデル
因果パイモデルで考える不適切処方と死亡
因果パイモデルで考えるHPV感染と子宮頸がん
そもそも,それは真に原因か? 交絡を考える
コホート研究
コホート研究の具体例と研究手法上の限界

第6講2限目 コホート研究論文を読む
疑問の定式化
論文のPECOを探る
研究参加者の背景を探る
交絡への配慮はどのようになされているか?
追跡期間を確認しながら研究結果を見てみる
■Column 高齢者に対するスタチン一次予防効果

第7講1限目 選択バイアスと社会疫学的視点
前向きコホート研究/後ろ向きコホート研究
研究結果にどんなバイアスが影響しているのか
選択バイアス(selection bias)
コホート研究で問題となることが多い選択バイアス
■Column 診断陰性例コントロールを用いた症例対照研究
交絡の影響を防ぐための解析手法:傾向スコアマッチング
健康の社会決定要因
社会疫学的視点
ソーシャル・キャピタルと生存
収入と寿命の関係
収入の変化と健康
社会保障と健康問題

第7講2限目 コホート研究論文をより深く考察する視点
お酒を飲むことのリスクとお酒をやめることのリスク
論文のPECOを探る
研究結果を見てみる
飲酒と健康リスク
信念対立,その落としどころを探る
信念の対立を解きほぐすために…

第8講1限目 既存のデータを解析する
ランダム化比較試験や前向きコホート研究の問題点
症例対照研究の基本的な考え方
症例対照研究におけるバイアスとそのコントロール
症例対照研究の具体例
「症例群」集団の特性について
「対照群」集団の特性について
想起バイアス(recall bias)の問題
前向き症例対照研究
症例対照研究と類似した研究デザイン
■Column セルフコントロールド・ケースシリーズ研究

第8講2限目 症例対照研究論文を読む
論文のPECOを読み解く
疾病の誘導期間と曝露
どんな薬剤が曝露として検討されていた?
配慮された交絡因子は?
結果を見てみる
■Column ベンゾジアゼピンと認知症リスク
■Column PPIと認知症リスク

第9講1限目 研究結果を統合する
1つの研究結果だけ眺めていても…
複数の研究結果を見ていく必要がある
網羅的に集めるにはどうすれば良いか
集められた情報の質はどう見る?
集めた研究結果を統合する
異質性を意識してメタ分析の結果を見る
薬の使い分けを考えてみる
ネットワークメタ分析
ネットワークメタ分析の問題点

第9講2限目 システマティックレビュー・メタ分析論文を読む
論文のPECOを探る
メタ分析の4つのバイアスを評価する
メタ分析の結果を見ながら異質性も評価してみる
薬剤効果の文脈依存性を考える

第10講  エビデンスはどこまで可能か?─表現としての医療
公衆衛生と生活のギャップ
人の情動や関心とエビデンス
プロスペクト理論で考える
公衆衛生と生活の間に立ちはだかるジレンマ
エビデンスはどこまで可能か?
臨床アウトカムの多因子性
薬剤効果の極小性
表現方法によって変わる薬剤効果認識
エビデンスに付加されたナラティブの可能性
立ち上がる倫理的な問題(公衆衛生と意思決定)


索 引

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執筆者一覧

青島周一 医療法人社団徳仁会中野病院 著

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   定価4,840円(本体4,400円 + 税)
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