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書籍詳細

誰も教えてくれなかった癌臨床試験の正しい作法

誰も教えてくれなかった癌臨床試験の正しい作法

國頭英夫 著 / 佐藤恵子 著 / 吉村健一 著

A5判 214頁

定価3,520円(本体3,200円 + 税)

ISBN978-4-498-02262-1

2016年07月発行

在庫あり

医師は個人的な意見を患者に語るべきか? 試験の最終結果は患者に知らせなくてはならないのか? 長大な説明文書は患者に読ませるべきものなのか? 臨床研究において実際に直面する様々なジレンマを活写した,ウィットに富む16のvignette(小品)を手がかりに,臨床医・臨床倫理学者・生物統計家が,答えの出ない問題の答えを求めて熱く語り合う.臨床試験を実施する医師の,プロフェッショナリズムを考えるよすがとなろう.

はじめに

 前著『誰も教えてくれなかった癌臨床試験の正しい解釈』出版から、はや5年が経過した。中外医学社からは改訂するように何度か依頼を受けたが、なにせ私はこの分野では素人であるので、なかなかおいそれと書き直すこともできない。
 実はこの間、いくつか生物統計に関する話題でのレビュー執筆を、他の出版社からも依頼されたので、それを書き溜めて改訂の元原稿にしようとしたこともある。しかし、なぜか私が原稿を書くと、出版社側が一転して出すのを渋るのである。「いろんなところに影響が出る」とか言われたが、なんのことか分からない。要するにスポンサーの機嫌を損ねるということらしい。いくつもの原稿がボツになった。
 そうこうしているうちにも、私もこの業界に身を置くものなので、いろいろ生物統計に関する疑問は湧いてきて、「悩む」ことになる。そのうちには、「どうしてこういうことはやってはいけないのか?」とか、「これって、やっちゃダメなんじゃない?」とかいうような、「倫理」に関するものも多い。自分で勉強するのは面倒なので、そういうのは詳しい人に聞こうと思い立った。我ながらよい思いつきである。
 というわけで、旧知の吉村健一先生と佐藤恵子先生を引っ張り出し、素人の素朴な質問に答えてもらう、というのがこの本の趣旨である。それだけではあまりに虫がよすぎるので、実際の「悩む」シチュエーションをvignetteに提示し、それをもとに討論する、という形をとった。あまりこういうのをお読みになったことはないと思うが、もちろんこれは私のオリジナルではなく、マーティン・コーエンという人の『倫理問題101問』(ちくま学芸文庫)を真似たものである。
 さて縁あって本書を手に取られたあなたにお読みいただくにあたって、野暮ったいがいくつかご注意申し上げる。
 第一に、各vignetteの内容は、あくまでもフィクションであって、「もしかしたらオレのことか?」と思われる方がおられたら、気のせいである。その後のdiscussionで私が「これは自分が経験したことで」とかなんとか言っている場合もあるが、無視していただきたい。
 第二に、私が吉村先生と佐藤先生にする質問は、私自身の見解を反映している場合もあるが、明確な答えを引き出すためのいわば「ヤラセ」であることも多い。いくつかは、わざと挑発的かつ偽悪的にしているので、良い子は真似しないように。
 第三に、これも『倫理問題101問』の方針を踏襲しているが、discussionは「解答」を与えるものではない。三人の意見が最後まで対立する場合もあるし、三人とも答が見つからず途方に暮れる、ということもある。世の中のことは大抵そうなのだから仕方がない。
 第四に、前著もそうであったが、これはなおさら、体系的網羅的な教科書ではない。本来的にはゴロ寝しながら読むものであって、「調べもの」に使うような用途には適さない。よって前著にはあった索引も作っていない。
 まあ、気楽に読んでちょうだい、である。Vignetteの登場人物の名前はどこかで聞いたようなものもあるかと思うが、最近私は幽明虚実の境が不明瞭で、自分でも区別がつかなくなってきた。それでは困るので、今回はvignetteの中での「里見清一」とは別人として、著者を代表してご挨拶申し上げる。


平成28年6月
日本赤十字社医療センター化学療法科
國頭英夫

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略歴


國頭英夫(くにとう・ひでお)
日本赤十字社医療センター化学療法科部長。昭和36年鳥取県米子市生まれ。昭和61年東京大学医学部卒業。横浜市立市民病院呼吸器科、国立がんセンター中央病院内科、三井記念病院呼吸器内科などを経て平成26年より現職。日本臨床腫瘍学会協議員・日本肺癌学会評議員、杏林大学腫瘍内科客員教授、日本赤十字看護大学非常勤講師。「里見清一」名義の著書に『偽善の医療』(新潮新書)、『誰も教えてくれなかった癌臨床試験の正しい解釈』(中外医学社)、『見送ル』(新潮社)、『医者と患者のコミュニケーション論』(新潮新書)など。


佐藤恵子(さとう・けいこ)
京都大学医学部附属病院臨床研究総合センターEBM推進部特任准教授。東京都生まれ。東京薬科大学薬学部卒、同大大学院博士前期課程修了、東京大学大学院健康科学看護学博士後期課程修了。薬剤師、保健学博士。田辺三菱製薬医薬研、国立がん研究センター中央病院、和歌山県立医科大学、京都大学大学院医学研究科などを経て現職。専門は研究倫理、臨床倫理学。共著に『これからの臨床試験』(朝倉書店)、『薬剤疫学の基礎と実践』(医薬ジャーナル社)、『がん臨床試験テキストブック』(医学書院)、『Informed Consent』(NOVA)など。幹細胞研究や再生医療の倫理的問題を考えてもらうための冊子『幹細胞研究ってなんだ』をHP(http://www.cape.bun.kyoto-u.ac.jp/project/project02/)に掲載。

吉村健一(よしむら・けんいち)
生物統計家。金沢大学附属病院先端医療開発センター特任教授/生物統計部門長。神戸大学大学院医学研究科客員教授。昭和51年愛知県碧南市生まれ。平成17年東京大学大学院医学系研究科博士後期課程修了(生物統計学/疫学・予防保健学)。国立がんセンターがん予防検診・研究センター、国立がんセンターがん対策情報センター、京都大学医学部附属病院探索医療センター、神戸大学医学部附属病院臨床研究推進センターを経て、平成26年8月より現職。これまで、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)データセンター統計家、西日本がん研究機構(WJOG)統計顧問、日本小児がん研究グループ(JCCG)生物統計委員会委員、愛知県立がんセンター客員講師なども務める。

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もくじ


第1部 情報開示の諸問題
  VIGNETTE 1  試験の途中経過の開示
    Discussion 途中経過の開示と選択バイアス
      Adaptive randomizationについて
      第II相試験で、成績がよくないことが分かってきた時に
      臨床試験の参加と利他主義
  VIGNETTE 2  たまたま私は知っている
    Discussion 中間解析と試験の継続・中止
      たまたま知った情報を「私用」してよいか
  VIGNETTE 3  試験治療と医者の「個人的見解」
    Discussion ランダム割り付けにおけるequipoise
      医師は個人的な意見を患者さんに言うべきか
      プロトコール逸脱と日常臨床
  VIGNETTE 4  試験治療の提示
    Discussion 臨床試験と標準治療の関係
      第I相試験での問題
      患者さんへの情報は、何をどこまで提供すべきか
  VIGNETTE 5  よその試験の結果
    Discussion 他の試験の結果をどこまで患者さんに伝えるか
      並行する試験でネガティブな結果が出たら
  VIGNETTE 6  最終結果の公表と開示
    Discussion 試験の最終結果は患者に知らせなくてはならないか
      試験の結果を公表できない場合
      説明文書にどこまで載せるべきか
      「患者様」?
第2部 試験デザインの妥当性
  VIGNETTE 7  病院の方針
    Discussion クラスターランダム化と患者さんの自己決定権
      ランダム化比較試験とpropensity score
      大きく異なる治療法の比較
      救命救急治療の比較
  VIGNETTE 8  もう1回やるのか
    Discussion Randomized phaseIIとphaseIII
      Randomized phaseIIの結果と治療の選択
      エビデンスの強さ
  VIGNETTE 9  同じことやるのか
    Discussion とにかく「やる」ことが大事!?
      試験登録制度
      PhaseII試験は必要か
  VIGNETTE 10  後出しジャンケン
    Discussion エンドポイントの閾値設定によって評価は変わる
      OSかPFSか
  VIGNETTE 11  非劣性試験は倫理的か
    Discussion 非劣性試験の問題点
      患者にどう説明するか
      ハイブリッドデザインとは
      QOLをどう測るか
  VIGNETTE 12  IRB承認の問題
    Discussion なぜ施設ごとにIRBがあるのか
      外部委員・専門外委員の役割
      外科領域における審査
第3部 試験と治療の境界
  VIGNETTE 13  臨床試験参加の本質は利他的なものか(その1)
    Discussion BRIM3試験の概要
      ランダム化比較やクロスオーバー禁止は必要だったか
  VIGNETTE 14  臨床試験参加の本質は利他的なものか(その2)
    Discussion Off-protocol治療の是非
      患者さんは利他的な動機で試験に参加する?
      Equipoiseは必要か
  VIGNETTE 15  希望を与える臨床試験
    Discussion 患者さんから臨床試験参加を希望してきたら
      患者さんの同意をめぐって
      エンドポイントをどう設定するか
  VIGNETTE 16  医療とビジネスの境界
    Discussion  説明文書は何のためにあるか
      「研究病院」の周知
      医師と患者の関係
      エンドポイントの考え方
      臨床データの研究利用をめぐって


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   2017年06月発行
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