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書籍詳細

加藤血液細胞形態学 −血球との対話−

加藤血液細胞形態学 −血球との対話−

加藤 淳 著

B5判 268頁

定価(本体12,000円 + 税)

ISBN978-4-498-22500-8

2016年10月発行

在庫あり

一つ一つの細胞と向き合ってきた著者自身の理念に基づいた言葉で解き明かされた、血液・造血細胞アトラスの決定版骨髄穿刺の方法、標本作製と観察という基本中の基本から正常細胞の特徴、疾患ごとの細胞のみかたを精緻な記述と他に類のない写真と動画で解説した。



 本書を拝読して,血液学的検査の重要性を改めて認識した次第です.実は,私は,東京医科歯科大学で島峰徹郎教授から血液病理学を,小宮正文教授から血液内科学を学び,臨床血液学に興味を持ち,時間があれば,顕微鏡下で血液細胞を眺めながら,血液細胞アトラスを座右に置き,診断を付けるべく,夢中になっていた時代があり,懐かしい思いがあります.
 加藤淳先生のこの「血液細胞形態学」は,私が今まで目を通して来た血液細胞アトラスの内容をはるかに超えており,ご自身が体験して来た学習をもとに,きわめて詳細に記載されており,実は,今回,大変感動を覚えた次第です.骨髄穿刺の方法から標本の作製方法が具体的で,特にがん細胞,悪性リンパ腫の観察には押しつぶし標本の有用性が強調されており,染色についても自動染色にまかせず自分の手で染め,最適条件を見つけることが重要且つ基本であることが強調されています.細胞観察では,顕微鏡での観察の仕方から標本の観察する部位についてまで,きめ細かい注意点の記載があります.血球の分化から造血細胞,非造血細胞の形態的特徴,染色性の特徴についても多数の血液細胞のカラー写真が掲載されており,大変分かりやすくなっています.
 正常を逸脱した形態異常を呈する異形成疾患を理解,診断するための細胞形態図譜が詳細に明示されており,この点もこのアトラスの特徴の一つと言えます.造血器腫瘍の分類,骨髄増殖性腫瘍,骨髄異形成症候群,急性白血病,リンパ増殖性疾患,悪性腫瘍の骨髄転移,赤血球の異常,白血球の異常,血小板の異常について,もちろん各骨髄細胞およびその腫瘍性疾患の細胞学的特徴についても詳細な記載があります.内容が豊富で,多数の図譜が挿入されており,血液学を学ぶ医師をはじめ検査技師の座右の書にされることをお薦めしたい.

2016年8月
元都立墨東病院院長
足立山夫

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はじめに

血球との対話 形態学の楽しみ 
 科学(science)の基礎は「もの」を正確に見る(観察する)ことにある.したがって形態学は科学の根幹をなすものであるが,残念ながら主観が入らざるを得ない宿命を備えている.血液細胞の観察について言えば,顕微鏡を通して見る世界であり,例えば同じ景色を前にしてもその時の状況によって全く別のものに見えることがあるように,見た瞬間一番印象に残るものによって直感的に認識される性格をもっている.しかし科学はある一定の見方を共有する「認識のルール」を作り,それを順守することを大前提として成り立っているのであるから,血液細胞を見るにあたっても一定の見方を共有しなければならない.しかし顕微鏡を通して1個の細胞を観察する場合,写真を撮りその特徴を正確に記述する作業は容易ではない.なぜならば視覚は本来,直感的であって説明を要さないものであるのに対し,「言葉」は概念であるから抽象的であり,「文章」ともなると,意図せずとも記述者の知性,感性,知識,経験によってバイアスがかかるので事情はさらに複雑になる.同じ細胞を見ていても人によって異なりさまざまな言葉で表現するであろうし,国が違えば言語,歴史,風俗,習慣の違いからさらに複雑になるので外国の教科書は完全に理解することは難しい.
 元来日本語は情緒的であって,多様な解釈を許さない断定的な表現を嫌う特性を備えていることは,一度でも英語で論文を書いたことがある人であれば痛感するに違いない.したがって日本語は自然科学を記述する言語としては適さない欠点があるが,我々日本人は感覚的に優れた特性を備えており,色ひとつとってもさまざまな動植物の微妙な色合いの違いを認識して,優に50を超える色彩を区別しそれぞれ独特な呼び名で表現してきた伝統がある.
 さて筆者は38年間飽きもせずほぼ毎日ヒトやマウスのさまざまな細胞をながめ暮らしてきた者であるが,これを機会にこれまでに頭にこびりついた先入観,たまった垢を捨て,初めて顕微鏡で細胞を見る人のように驚き,不思議に思い,考え,悩み,喜んだりしながら基本的な細胞の見方をいっしょに考え,そのうえで筆者の見方を提示したい.1個の細胞を前にして筆者にはこう見えるが,読者にはどのように見えるのであろうか? 興味は尽きない.本書は筆者の眼にはこのように映り,脳はこのように認識,分析し,最終的に1個の細胞が何であり,そこで何をしているのか,あるいはしていたのか判断する過程を述べたものである.したがってこれまでの論文や教科書に明記されていない事柄について筆者の主観に基づいて述べたり,さらには定説に反することを述べていることもあることをあらかじめお断りしておきたい.
 1個の血液細胞を観察して,ここに1人の高名な血液学者が「この細胞はAである」と言った場合,初学者のほとんどはその権威を信じ「そうなんだ.Aとはこういうものか」と無批判的に受け入れざるを得ないが,多少経験を積んでくると,自分がこれまでに見た細胞と比較して「AではなくBのようである.いやCかも知れない」などと独自の考えが浮かんできて,成書の記述に疑念を抱くようになるであろう.果たして正解はどうであろうか? 正解とは何か? そもそも正解は存在するのか? 正解はいつの時代にもその時点までに到達した自然科学のレベルやその時代の支配的な考え方に影響を受けるが,それだからこそ面白味がある.筆者が言いたいことは,先人の意見を尊重することは必要であるが,もっと大切なことは自分の目に見えることをすなおに信じ,納得できないことには安易に妥協しないことである.そのような批判的な見方ができれば,より多面的,複眼的な見方ができるようになり,さらに研究を進めれば新たな真実の発見につながるかも知れない.
 臨床に即して言うと,1枚の末梢血あるいは骨髄塗抹標本ほどありがたいものはなく,そこから得られる情報量は無限であり,診断法から言えば迅速かつ安価であるという利点がある.現在広く用いられているフローサイトメトリーによる細胞の免疫学的形質の分析,染色体分析,FISH法,サザンブロット法,PCR法などの分子生物学的検査については,自ら行っても数時間〜数日,外注検査では項目によっては結果が得られるまで数日〜数週間を要する.これに対しある程度形態学に習熟していれば,1枚の標本を見て瞬時に診断可能な症例もある.したがって1枚の血液または骨髄塗抹標本を観察することは,血液内科医にとっては重要な「視診」のひとつであり,まずはじめに体得すべき診断技術のひとつである.
 1880年のEhrlichによる白血球染色法の研究を端緒とし,以後Romanowsky(1890年),Wright(1902年), May, Giemsa(1902,1904年)ら先人による血液細胞染色法の研究開発からほぼ130 年経過したが,現代の我々は彼らと比べて血液細胞がどこまで見えるようになったであろうか? いや形態学が軽視されて久しい今日では,むしろ細胞を見る力が低下しているのではないかと危惧している.
 武蔵野赤十字病院に奉職して8年間患者さんと向き合い,末梢血,骨髄あるいはリンパ節のスタンプ標本を眺めレポートを書く毎日を送ってきた.レポートには細胞の写真も掲載しているが,日々の診療を通じて少しずつ写真を撮りためてきた結果,2万5000枚を超える画像が手元にあり,これらを整理し中外医学社の支援を受けてようやく上梓まで漕ぎ着けることができた.感無量である.本書はこれまでの経験をもとに,筆者に見えること,見て考えたことを余すところなく伝えることを意図して書いたものであり,最大の目的は1枚の末梢血および骨髄塗抹標本を観察することにより,読者が迅速かつ的確な診断を下すことができるようになることである.したがって,骨髄穿刺,塗抹標本作成,染色標本の観察法を細かく論じ,さらに形態学以外の診断上のポイントも加えて実践的な内容とし,できるだけ単純明快,平易な表現を用いて記述した.
 ところで我々が通常観察している細胞は固定された「死細胞」であるから,生きている細胞の本来の姿ではなく,固定,染色により人工的に修飾された細胞を見ているに過ぎない点でバイアスがかかっている.ではどうしたら生きている細胞を観察できるか? それには位相差顕微鏡が最も適しており,この意味から本書では位相差顕微鏡による写真,動画も多く掲載し,その独特の形態について光学顕微鏡,電子顕微鏡と対比して詳述するようにした.位相差顕微鏡では通常見慣れた塗抹標本と著しく異なる点が多々あって驚かされ,細胞自身,細胞内小器官が常に動いており一刻も同じ形態を示さない.スライドガラスに末梢血あるいは骨髄液を1滴滴下し,カバーガラスで覆えば,染色しなくても即座に観察できるので,ぜひ一度位相差顕微鏡で細胞を観察することをお勧めする.そこにはまた別の「ワンダーランド」があり,興奮と驚きの連続で見ていて時を忘れる.筆者は偶然,巨核球が血小板をさかんに産生,放出している様子を観察する機会に恵まれた(2014年第76回日本血液学会学術集会で“flower bud model”を提唱).特殊な条件下ではあるが採取直後の生きた巨核球であるから,おそらく生体内でも同様にして産生しているものと考えられる.まさに幸運でもあり,その迫力に圧倒された.それと同時に位相差顕微鏡による観察を通して,あらためて生きた細胞の形態は刻々と変化することを再認識した.特に活性化した好中球の動きは活発で一時もじっとしていず,まるでアメーバのようである.また細胞表面が平滑な細胞はひとつとしてなく,どのような細胞でも多かれ少なかれさまざまな突起があって,突起自身も変化している.また最終分化を遂げた好中球でさえも明瞭な核小体を持ち,ほとんど全ての細胞でミトコンドリアが激しくうごめいていることは新鮮な驚きであった.おそらく感動の少ない日々を送っている大多数の人々が,大げさに言えば筆者が感じた「驚き」と「感動」を共有できれば,これに勝る喜びはない.
 本書で心がけたことはまず美しい写真を載せること,さらに初心者にわかりやすい平易な表現を用いること,日々の臨床に役立つ実践的な内容にすることの3点である.したがって血液内科で扱うことの多い疾患をまずクローン(腫瘍)性疾患と非クローン(腫瘍)性疾患に2大別し,前者は白血病,悪性リンパ腫,多発性骨髄腫,骨髄異形成症候群,骨髄増殖性疾患(腫瘍)の5つに分け,後者は貧血,血小板減少症,顆粒球減少症・増加症,異型リンパ球で特徴づけられる感染(伝染)性単核球症を重点的に扱った.また私の考え方を自由に述べたのでWHO分類の考え方と相容れない点があることもあらかじめお断りしておきたい.この点は本書の表題に反映されているが,表題を見て奇異に感じた方もおられると思うので,なぜ個人名を表題に加えたのかその理由を説明しておきたい.それは本書があくまでも筆者個人のものの見方,考え方,言わば「哲学」を著した特異な「血液・造血細胞アトラス」であることによる.すなわちこれまであいまいであった形態学の用語,表現について筆者自身の言葉で定義,詳述したこと,細胞の画像も光学顕微鏡写真のみならず位相差顕微鏡写真を多く掲載し,さらにその動画を加えたことは少なくとも筆者の知るところ他に類を見ない.また「血球との対話」という副題も奇を衒っているようだが,筆者にとっては至極当然のことで,顕微鏡観察に際してはこれまで一貫して1つ1つの細胞と向き合い「一体あなたはどういう細胞で,どこから来てこれからどこに行くのか?,そこで何をしようとしているのか,あるいはしていたのか?」と問いかけ,その謎を知りたくて対物レンズのピントをずらし,周辺にいる細胞を眺めて考えてきたことを意味している.実際,どのような標本を見ても一体何なのか,よくわからない細胞が必ず存在する.古い学問であるから研究されつくしたように思われがちであるが,形態学は不思議な世界であってまだ我々の知らない真実が多く隠されており,研究の余地は十分に残されていると筆者は確信している.
 最後に医師としてこれまで育てていただいた患者さん,看護師,検査技師の方々,筆者を支えてくれた同僚,先輩と後輩,そして妻と両親にこの場を借りて謝意を表したい.とりわけ拙書が,筆者を導いてくれた形態学の師匠足立山夫先生(光学顕微鏡,前都立墨東病院院長),田中康一先生(電子顕微鏡,前都養育院基礎病理部長)に喜んでいただければこんなに誇らしくうれしいことはないが,さていかがであろうか?

2016年9月  平町にて
加藤 淳

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目次


第1章    総論

1.骨髄穿刺の方法―患者さんに負担なく,迅速に,かつ良質な検体を得るには
2.標本作製―よい標本を作るには
  1.塗抹標本の作製
  2.位相差顕微鏡標本の作製
  3.染色法―どうしたらきれいに染められるか? 自分の手で染めてみることが肝心
    1.手染め法
    2.特殊染色
     a)ペルオキシダーゼ染色
     b)好中球アルカリホスファターゼ染色
     c)エステラーゼ二重染色
     d)PAS染色
     e)鉄染色
3.標本の観察
  1.顕微鏡の取り扱い
  2.観察に適した部分
  3.血液・造血細胞を観察するにあたってのポイント−全体と個
  4.位相差顕微鏡による観察
4.光学顕微鏡による細胞観察の基本
  1.全体の形の観察
  2.核の観察
    1.クロマチン(染色質)
    2.核小体
    3.細胞質の観察
5.血球の分化
  1.造血幹細胞
  2.赤芽球の分化
  3.巨核球の分化
  4.顆粒球の分化
  5.単球の分化
  6.リンパ球の分化
    1.B細胞の分化
    2.T細胞,ナチュラルキラー(NK)細胞の分化
6.非造血細胞
  1.脂肪細胞
  2.血管内皮細胞
  3.線維芽細胞,線維細胞
  4.破骨細胞
  5.骨芽細胞
7.正常末梢血細胞とその異常
  1.正常赤血球とその異常
  2.正常白血球とその異常
    1.顆粒球の異常
    2.リンパ球の異常
    3.単球の異常
  3.正常血小板とその異常
8.異形成
  1.核の異形成
  2.細胞質の異形成
  3.核と細胞質の分化度の不一致
  4.芽球の異形成
  5.赤芽球の異形成
  6.巨核球の異形成
  7.顆粒球系細胞の異形成
  8.単球系細胞の異形成
  9.リンパ球系細胞の異形成

第2章    疾患各論

腫瘍(クローン)性疾患
  A.造血器腫瘍の分類
    1.造血器腫瘍,分類法の歴史
    2.分類法
    3.WHO分類改訂版
  B.骨髄増殖性腫瘍
    1.慢性骨髄性白血病
    2.真性赤血球増加(多血)症
    3.本態性血小板血症
    4.原発性骨髄線維症
    5.慢性好酸球性白血病,特発性好酸球増加症候群
  C.骨髄異形成症候群
  D.骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍
    1.慢性骨髄単球性白血病
    2.非定型的慢性骨髄性白血病
    3.若年性骨髄単球性白血病
    4.環状鉄芽球および血小板増加を伴う骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍
  E.急性白血病
    1.急性白血病の定義
    2.芽球の定義:1型の芽球と2型の芽球(FAB分類,1982年)
    3.FAB分類による急性白血病の形態学的特徴
  F.リンパ増殖性疾患
    1.急性リンパ性白血病
    2.多発性骨髄腫
    3.原発性マクログロブリン血症
    4.慢性リンパ性白血病とその亜型
    5.成人T細胞性白血病・リンパ腫
    6.悪性リンパ腫の骨髄浸潤
  G.悪性腫瘍の骨髄転移
非腫瘍性疾患
  H.赤血球の異常
    1.貧血
    2.赤血球増加症
  I.白血球の異常
    1.白血球増加症
    2.白血球減少症
    3.異常白血球の末梢血出現
    4.血球貪食症候群
  J.血小板の異常
    1.血小板減少症
    2.血小板増加症

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