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書籍詳細

ケアとまちづくり、ときどきアート

ケアとまちづくり、ときどきアート

西智弘  著 / 守本陽一 著 / 藤岡聡子 著

A5判 240頁

定価(本体3,400円 + 税)

ISBN978-4-498-05730-2

2020年06月発行

在庫あり

急速な高齢化に伴い,緩和ケア・福祉の需要が増加傾向にあるなか,医療者が病院内で患者に接する時間は限られている.今のままでは患者の苦痛を取り除くことはできないと,はがゆい思いを抱えている医療者は少なくないだろう.現在,その解決方法として注目されているのが,社会的手法である.キーワードは「まちづくり」と「アート」.これは,近い将来日本の緩和ケアを救うかもしれない,新しいバイブルである.

は じ め に


「医療者は病院を出よう!」
「地域で介護を実践しよう!」
「福祉にアートを!」

 近頃、医療・福祉業界にいると、このような言葉をよく目にする。実際、病院や福祉施設という閉塞的な空間で、業務の枠に縛られ、時間的な余裕もなくケアが行き届かない現場に対して、もどかしい想いを持つ医療者も少なくない。そんな現状に対する不満が「病院を出て、地域でヘルスケアを実践していくんだ!」という医療者の動機を高めているのかもしれない。コミュニティナースとして街に出ていく看護師、まちなかで屋台を押す医師、駄菓子屋を併設する介護施設が次々と現れている。
 「ケアとまちづくり」ブームが迫ってきているのだ。多くの医療福祉関係者が地域に注目し始めている。一方で、東京一極集中の是正のため、地方創生の名のもとに、全国各地で地域活動やアート活動が盛り上がってきていることは、医療福祉関係者がまちに出てくるのを歓迎してくれる雰囲気がある。
 さて、どうすればいいだろうと、私たちは考える。まちなかで健康教室を開催すれば、診察室よりも時間をかけて丁寧に患者さんにアドバイスをすることができるんじゃないだろうか。「暮らしの保健室」のような、まちの相談所を開けば、病院には行きづらかった人が健康相談に来てくれるんじゃないだろうか。そんな「ケアとまちづくり」で、住民の幸せもケア従事者の貢献意識も満たすことができるのではないか。
 でも、実際には「その一歩」を踏み出すことが難しい。そして勇気を出して新しいことを始めるべく「聖なる一歩」を踏み出せたとしても、その先どう歩いていけばいいのかが悩ましい。良かれと思ってまちなかで活動を始めるも、地域に受け入れられずに、挫折していく医療者もいる。
 医療者が地域に出るときに、何を心がければいいのだろうか。どこにつまずきやすいポイントがあるのだろうか。
 この本は、地域に医療福祉関係者が出ていくことの意義を考え直し、地域に出ていくにあたって、ちょっとした手助けになるような本である。「まちに出ていきたい」と考える医療・福祉関係者は地域の貴重な資源になりうる大切な存在である。つまずく!とわかっているあからさまな石ころに足を取られて、地域から退場してほしくはない。この本を傍らに置くことで、「つまずかずに済むための考え方とは?」というようになってほしいし、「まちに興味はあるけど、どうやって出ればいいのか」という方の背中を押す力になる本でありたい。本書の中にはたくさんの事例が出てくるが、なかには「こんな取組みをしていかなければならないのか……」と気おくれしてしまう例もあるかもしれない。一方で「これだったら私にもできるかも……」という例もある。まずは小さく、取り組みやすいところからまちに入っていってほしい。まちの中に医療・福祉関係者が普通に「いる」未来がくることを願っている。


二〇二〇年四月
公立豊岡病院組合立出石医療センター 医師     守本 陽一
株式会社ReDo 代表取締役  藤岡 聡子
川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター 医師     西  智弘


※ 用語として、本書で扱う「コミュニティ」とは、人と人とがつながりあい活動していく「集団そのもの」、を指しており、「ネットワーク」とは個々人またはコミュニティ同士の「つながりそのもの」、もしくはつながり合った総体としての「網目状(Web状)の連帯全体」を指す言葉として用いている。

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目 次

1 ケアとまちづくり
 1 医療の「上流と下流」(西/守本)
   健康の社会的決定要因
   格差が大きいほど死亡率が高まる
   暮らしの場に医療・福祉を混ぜ込む
  コラム まちにあふれる商品のサイズ・表記と、人の行動の微妙な関係(西)
 2 医療者はなぜ地域に出てこないのか(守本)
   なぜ医療者がまちへ出ないのか
   医療者としての肩書なしにまちに入っていく
   「仕事に惚れろ、地方に惚れろ、女房に惚れろ」
 3 ケアとまちづくりのコミュニケーション (守本)
   平田オリザさんの講演から……コンテクストのずれ
   わかり合えないことを前提に対話が始まる
   環境をデザインする
   人は様々な役割をもって社会に生きている
 4 広い意味での緩和ケアの実践 (西)
   がん治療と緩和ケアの統合……「まず緩和ケアありき」
   「早期からの緩和ケア」はいつから?
   緩和ケアという高い壁
   まちなかで緩和ケア・ACPをする
 5 ポジティヴヘルス (藤岡)
   医療者が育んでいく心持ちそのもの
   自分と、他者と対話する
   地域全体を診る医師たち
   ハコの中身の設計に関わる家庭医、理学療法士たち
   国の医療基盤になり始めたポジティヴヘルス

 6 社会的処方とは何か (西)
   社会的孤立を解消する社会的処方
   イギリスなどにおける社会的処方
   社会的処方研究所
   社会的処方を文化にしていく
   社会的処方の落とし穴
   社会的資源を「使わせていただいている」感謝と謙虚さを忘れない
 7 地域への「入り方」と「在り方」(西)
   「ひとをあつめる」「ひとがあつまる」
   「行く系」「呼ぶ系」そして第3の「在る系」
   「往来におけるたき火」〜川崎かってにおもてなし
   「ハブ」と「マインドセット」
   ハブを押さえることのメリット 〜コミュニティ疲れを予防する
   どのようにコミュニティに入っていけるか?
 8 ソーシャル・キャピタル (西)
   ソーシャル・キャピタルの健康への影響
   ソーシャル・キャピタルの負の側面
   結合型&橋渡し型ソーシャル・キャピタル
   地縁型コミュニティとテーマ型コミュニティ、そして「分散型コミュニティ」へ
  コラム SNS時代に、医療情報を発信するということ(西)

2 今日どこかのまちで─社会的処方の実践例─
 1 地域を知るには……地域診断の方法と実践 (守本)
   まずは地域の先輩たちに聞いてみる
   「地域診断」とは
   地域診断の実践
 2 三種のスペシャリストを仲間にしよう (藤岡)
   一、「不動産」─ 家のことを知り尽くしている人 ─
   二、「編集者」─ものごとを客観的に、時に情熱的に言葉を紡ぐ人─
   三、「デザイン」─「絵」が描ける人─
 3 暮らしの保健室の本質 (西/守本)
   暮らしの保健室の落とし穴
   暮らしの保健室を始めるなら
 4 団地という場のケア (守本)
   団地が抱える課題
   団地内でソーシャル・キャピタルを増やす
   「ぐるんとびー」が編みなおす団地コミュニティ
 5 まちで暮らすを支える……長崎二丁目家庭科室の実践 (藤岡)
   ?関わりしろ?をつくったら、看板そのものがいらなくなった
   アウトプットとアウトカムの生み出し方
   「長崎二丁目家庭科室」を畳んだ後のまちの様子

3 明日、あなたの施設・あなたのまちで─社会的処方のはじめかた─
 1 多世代がいる環境を作る (守本)
   介護施設の課題
   多世代が集まる「銀木犀」
   多世代が集うしかけ
   仕事付き高齢者住宅、というあり方
 2 一緒に住む (守本)
   地域で一番力になってくれる場所……はっぴーの家ろっけん
   コレクティブハウジング
   高齢者住宅は突き詰めると、ただの住宅になる
 3 病院・施設をまちへ向けて開く……医療を「非日常」から「日常」に (守本)
   病院という場に「余白」をつくれるか
   まちと一体化した「余白のある病院」
   暮らしの導線上に病院があるまち
  コラム もしバナ……「もし、職場である施設のロビーを誰もが来られるよう
地域に解放しよう!」って話が出たら、何をどうする?  (藤岡) 

4 今、どこかのまちで─個人の取組みにみる展望─
 1 違う業界からみた違和感を形にしている、ヘラルボニーがクールすぎる。 (藤岡)
   ヘラルボニーのストーリー
   福祉作業所のプロダクト=低廉品の常識を打ち破った
 2 まち全体を健康にする (守本)
   気づいたら、健康になるしかけ
   地域住民と地域を楽しむ「谷根千まちばの健康プロジェクト」
   小さな公共空間を作るYATAI CAFÉ/モバイル屋台de健康カフェ
   銭湯という場の可能性とケアのつながり
  コラム 離れて、つながる(西/藤岡/守本) 

あとがき
索引

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執筆者一覧

西智弘  川崎市立井田病院化学療法センター医長 著
守本陽一 公立豊岡病院組合立出石医療センター総合診療科 著
藤岡聡子 株式会社ReDo代表取締役・福祉環境設計士 著

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   定価3,740円(本体3,400円 + 税)
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