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書籍詳細

ここが知りたい 血栓症治療の正解,不正解

ここが知りたい 血栓症治療の正解,不正解

後藤信哉 著

A5判 110頁

定価2,640円(本体2,400円 + 税)

ISBN978-4-498-13440-9

2021年03月発行

在庫あり

患者にとっての「正しい治療」とはいったい何であろうか.著者が自らの専門領域である「血栓症」の治療(投薬)をテーマに,「正しい治療とは何か?」という医療の根本的な命題について若手医師に問いかける.EBMとは何か? 診療ガイドラインの在り方やその読み方とは? 臨床試験の意味とは? 製薬会社の思惑とは? 患者を幸せにする「正しい治療」とは何か? について,指導医,専攻医,研修医3名の会話によってわかりやすく解説.

著者略歴
後藤信哉(ごとうしんや)

東海大学医学部内科学系循環器内科学教授/
東海大学大学院医学研究科代謝疾患研究センター長

◇経歴
1986年 慶應義塾大学医学部卒業
博士(医学):慶應義塾大学大学院
1992〜96年 スクリプス研究所分子実験医学部門博士研究員
1996年 東海大学医学部にて循環器内科助手,講師,助教授を経て
2007年より現職
2017年 米国心臓協会(AHA)機関誌Circulationの編集委員

血小板,血液凝固などと循環器疾患の関連に関する研究をThrombi-Cardiology分野として確立するリーダー.米国心臓協会(The American Heart Association)の雑誌Circulationの編集委員(Associate Editor)など各種国際雑誌の編集,国際共同大規模ランダム化比較試験の推進委員,データモニタリング委員など多数.

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 書籍を出版する機会を頂くのはありがたい.SNSなどにより個人の情報発信が容易になったとはいえ書籍刊行の感慨は無量である.筆者の専門である血栓症,抗血栓薬はトピックになったので複数の書籍刊行の機会を得た.なかでも,中外医学社から出版された『ここが知りたい 理屈がわかる 抗凝固・抗血小板療法』は多くの読者を得た.会話体としたので「読みにくい,分かりにくい」という批判と「わかりやすい」というコメントが両立していた.多くの読者から真逆の評価を頂いたわけだが,出版社から今回再度「会話体」での執筆を依頼された.出版のプロの視点では「会話体」が良いと判断されたのだと思う.
 実際,自分の脳内でも考えは揺らいでいる.「A」を考えた一瞬後に「B」を考える.文語体で自らの考えを書くと,筆者の脳内の考えの揺らぎが伝わらない.確立されたコンセプトを記載する以外の場合では文語体よりも会話体が良いかも知れない.ロシア文学の巨匠ドストエフスキーも現実にはあり得ない長口舌の会話体の小説が多い.難しいけれど,完全には確立されていない理屈の表現手段としては「会話体」が良いかも知れない.
 前著でも「理屈」を重視した.本書はさらに「理屈」重視の内容である.人間はあまりにも複雑・精妙なので個別の症例の本態はわからない.疾病も複雑なので本質は不明である.「正解」不明にて決断を迫られる医師の仕事はつらい.困難性の高い医師の仕事に単純な「正解」があるわけがない.各種学会は診療ガイドラインを公開しているが,世界的権威者であっても個別の症例の診断と治療における真の意味の「正解」はわからないものである.
 医療は本質的には医療従事者と個別患者の関係であった.しかし,疾病治療に巨額の費用がかかるとなると患者がすべて費用負担するのではかわいそう過ぎる.個別患者の経済的負担の軽減のため健康保険が整備され,税金が投入されることになった.健康保険が巨額化すると,予算化された公的資金の配分に利害関係者が複雑にかかわる.製薬企業,医療デバイス企業,行政にかかわる健康保険関係者の努力は日本人の健康寿命の延長に寄与した.「人類」の健康の維持には巨大組織の寄与が大きかった.しかし,個人ごとに異なる個別の事情を有する個別患者の健康と幸福は,個別患者と苦楽をともにする医師,看護師などの医療職が担っている.巨大企業は新薬,新規治療の開発コストの回収と利潤最大化に努力する.医師も企業も「人類」の健康長寿を目指す目的には類似性があるが,対象と目的が微妙に異なる.資本主義経済社会では,巨大医療関連企業と個別医師の社会に及ぼす力は大きく異なる.個別の医師の専門的判断よりも,ランダム化比較試験のエビデンスレベルが高いと規定されれば,自らランダム化比較試験を実施できない個別医師の治療選択も,ランダム化比較試験を施行できる巨大企業の影響を受けることになる.エビデンスレベルの高い臨床研究の結果を「診療ガイドライン」とすれば,個別医師の判断のインパクトはさらに小さくなる.
 エビデンスレベルの高い治療を選択すればすべての患者が幸福になるわけではない.診療経験の蓄積が個別医師の判断を改善させないわけもない.人工知能の研究者でもある筆者は,個別症例の歩き方,話し方,顔色など多彩な多次元入力信号から,個別症例の最適解を見い出す人間の頭脳の脅威に驚いている.患者集団を対象とした医療の科学ではランダム化比較試験に価値があった.多次元入力情報から最適解を見い出す個別最適医療では個別の臨床医の能力と科学的価値が再度注目される可能性が高い.個別医師に「自らの経験に基づく個別最適医療」実現に向けて自信を持ってほしい.
 本書執筆開始後に,世界は新型コロナウイルスの感染拡大と苦闘することになった.新型コロナウイルス感染による血栓症の増加も問題とされた.まさに,誰もが「正解」を知らない中で多くの医療従事者は頑張って感染拡大阻止,感染による疾病対応に尽力している.「正解」不明での苦闘を強いられる医学,医療の実情の理解者が本書により増えてくれれば著者としては幸甚である.
 
 2021年2月28日
 東海大学医学部内科学系循環器内科学
 後藤信哉

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目 次

CHAPTER 1 診療ガイドラインの推奨は「正しい」か?

CHAPTER 2 動脈系の血栓症と静脈系の血栓症から考える診断と治療の「正解」
 A:動脈血栓症と静脈血栓症の違いは何か?
 B:静脈血栓症と「正しい」治療・薬剤選択
  (1)深部静脈血栓症
  (2)心房細動の血栓症
 C:動脈血栓症と「正しい」治療・薬剤選択

CHAPTER 3 臨床試験の意味
 A:なぜ,臨床試験を行うのか?
 B:臨床試験の実際
  (1)抗凝固薬の臨床試験
  (2)抗血小板薬の臨床試験

CHAPTER 4 人工知能とコンピュータのインパクト
 A:人工知能の登場
 B:人工知能の医療応用
 C:高性能コンピュータの基盤整備により医療は変わる?
 D:帰納的論理と演繹的論理
 E:若手医師もベンチャーマインドを

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後藤信哉 東海大学循環器内科教授 著

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   定価2,640円(本体2,400円 + 税)
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