改訂にあたって
まずもって,前の本の序文にも記載していますが,私の手外科の恩師であります石井清一札幌医大名誉教授が本改訂版執筆中にご逝去されました.先生には北海道大学整形外科上肢班のチーフとして本当に公私ともに大変お世話になりました.また北大整形外科教授に就任したときには大変喜んでくださり,立派なフクロウの木彫像を送っていただきました.今でも居間にどっしりと飾っています.慎んで先生のご冥福をお祈りいたします.
さて2016年に「手の外科:私のアプローチ」初版を刊行させていただきました.初版の序文にも記載させていただきましたが,ほぼ手・肘の外科および整形外科領域で扱うマイクロサージャリー手術全般が網羅されていると思います.その後,改めてチェックすると前回,かなり注意したつもりですが,字句や表現の間違いなどが多数あることに気付きました.また,各項目毎に実際の症例をもっと加えた方が分かりやすいのではないかとも考えました.そこで出版社の担当者と相談し,初版から5年しか経過しておりませんが,改訂することを決心しました.字句の修正や加筆および症例供覧の追加などはほぼ全項目にわたり行いました.またせっかくの機会ですので,ずっと加えたいと思っていた40項目程度を新しく項目立てして入れさせていただきました.そのため,非常に分厚くなりましたが充実した本になったのではないかと自負しております.
今回の改訂にあたり初版刊行以降の手術症例を中心に採用していますが,北大時代や関連病院の症例も一部採用しています.手術症例提供にあたり,北海道せき損センター整形外科部長 東條泰明先生,整形外科部長 神谷行宣先生,産業医科大学整形外科 宇都宮祥弘先生,王子総合病院(苫小牧市)整形外科部長 鈴木克憲先生,帯広厚生病院整形外科部長 本宮 真先生,新潟手の外科研究所病院院長 坪川直人先生はじめ各病院の手術場のスタッフの皆様に心より感謝致します.
自分のわがままを許してくださり改訂版刊行をご快諾いただいた中外医学社編集部の秀島悟氏,輿石祐輝氏,小川孝志氏に改めてお礼を申し上げたいと思います.また今回の原稿投稿,編集にあたって,前回もお願いした北海道せき損センター医局秘書 篠原美智留さんに心よりお礼を申し上げます.
本書が手外科・マイクロサージャリー手術を行うにあたって多くの先生の診断や治療の指針になれば望外の喜びです.手術などに関しては私の考え方や手術方法を中心に記述しましたので,一人よがりのところがあると思いますが,お許しください.
2021年10月
著者 三浪明男記す