思春期、内科外来に迷い込む
國松淳和 著 / 尾久守侑 著
四六判 254頁
定価3,080円(本体2,800円 + 税)
ISBN978-4-498-02098-6
2022年01月発行
在庫あり
思春期、内科外来に迷い込む
國松淳和 著 / 尾久守侑 著
四六判 254頁
定価3,080円(本体2,800円 + 税)
ISBN978-4-498-02098-6
2022年01月発行
在庫あり
國松淳和先生と尾久守侑先生が,内科外来にやってくる思春期の子たちについて語りつくす.診療科の狭間に落ちやすい思春期の体調不良を救うのは誰か.そこに内科外来の重要性を見いだし,全医療者の新たな可能性をひらく.クロスしないトークの話題は思春期診療だけにとどまらず,内科と総合診療,何となくの感覚,自己愛,チーム医療などに及び,二人の臨床風景がありありと浮かぶよう.さらに註釈の重ね塗りによって,立ち止まることのない思考の進歩も垣間見える.
出版社からのコメント
お寄せいただきました書評をご紹介
社会医療法人財団互恵会
大船中央病院
中野弘康先生より
“はざまの内科医” に憧れます
“新型コロナウイルスのワクチンを接種してから,ずっと体がだるくて何もする気になれなくて,微熱が出て,学校に行けず困っています.階段の昇り降りをすると心臓がドキドキして息が切れます”.そう話すのは16歳の女子高校生です.見た目やや色白なものの,おおよそ不健康そうな印象は受けませんでした.心配そうにわが子を見守るお母さんに半ば誘導されるように,内科外来を訪れました.この本に出会う前の私だったら,ざっとフィジカルとって(多分異常ないだろうけど)採血して,どれも異常なければ,メンタルだから心療内科をお勧めで終診としていたかもしれません.
コロナ禍だからというわけではありませんが,昨今,このような訴えで内科外来を受診される中高生を多く経験します.思春期の彼らは自身の悩みを打ち明けられず,家族にも弱音を吐けず,ひたすら我慢しながら窮屈そうに日常生活を送っているように見えます.冒頭の患者さんは,(予想通り)フィジカルで異常なく,血液検査でも炎症所見なく,心電図・胸部単純写真でも異常はありませんでした.ただ,安静時の脈拍がやや速いのが気になったため,起立試験を行ってみました.すると起立時に心拍数が30以上に上昇しシェロング陽性.動悸・労作時の呼吸困難は,体位性頻脈症候群(POTS)と診断し,十分な水分補給・塩分摂取に加えて少量β遮断薬と漢方薬(補中益気湯)を導入し外来フォロー.1週後には “動悸はいくらか良くなった.階段昇降でも息切れしなくなりました.でも相変わらず微熱があります……” といって毎日の体温をビッシリ書いた手帳を見せてくれました.既に採血で炎症反応は陰性であることが確認できています.これが國松先生の云う“機能性高体温症”か……と考え,少量セルトラリンを導入したところ,これが著効し,2週後の外来ではすっきりした表情で姿を見せました.以後微熱を感じることはなくなり患者さんと共に喜び合いました.
新型コロナウイルス感染症は私たちの生活を大きく変えましたが,思春期の子どもたちにとっても例外ではないはずです.今や,中高のグラウンド近くを歩いていれば普通に聞こえていた “放課後の部活動” はもう存在しません.コロナ禍で大声を出せず,何もかもが制限された思春期の真っ只中にいる中高生の苦労はさぞかし大きいものでしょう.
”思春期,内科外来に迷い込む“ ,まさにタイトル通り,彼女は私の外来に迷い込んできました.そこでどうやって患者の悩みを受容するか.その方法論については,両先生方のクロストークを是非味わっていただきたい.多くのパールに頷きながら,読後はふんわりとした心地よさを覚えるはずです.これまで思春期の不定愁訴って苦手だなあと思いこんでいたり,心療内科・精神科に深く考えず紹介していた先生方ほど,本書の読者対象としては好都合かもしれません.何を隠そう,私もそうだったから.