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書籍詳細

わかりやすいメディカルマーケティング

わかりやすいメディカルマーケティング

真野俊樹 編著

A5判 210頁

定価3,740円(本体3,400円 + 税)

ISBN978-4-498-14820-8

2022年04月発行

在庫あり

個人がスマホで心拍数や血圧などバイタル記録や薬・診療の記録を管理する時代となったいま,医療・ヘルスケア領域にもマーケティングの視点が必要だ! 患者の行動変容・日常生活への介入が必要な生活習慣病の治療効果をUPさせるカギもマーケティングが握っている.診療・病院経営・ヘルスケア領域の開発など関連領域に幅広く役立つ知識を1冊で学べる,医療関係者のためのマーケティング入門書.

マーケティングと筆者:前書きに変えて

 今回ご縁があり,伝統ある医学系出版社の中外医学社から,「わかりやすいメディカルマーケティング」という書籍の編集および執筆をさせていただくことになった.
 この本は,医療関係者の方も多く読まれると思うので,最初になぜ医師である筆者がマーケティングという学問に関心を持ったかを簡単に述べておきたい.
 これは筆者が思い出話を語りたいわけではない.先日(2020 年10 月),日本を代表する経営系の学会である「組織学会」にて,京都などの老舗伝統企業の持っている最大「資源」として,その歴史は何物にも代えがたいブランドであるという話を聞いたからでもある.おそらく,医療界で本格的にマーケティングということを言い出し,書籍化したのは筆者のように思うので,まえがきで短いながら歴史を語るのも参考になるのではないかと考えたからである.
 筆者は,思えば2003 年に「医療マーケティング」という書籍を出版させていただいている.これは医学系の出版社ではない日本評論社から出版したものではあるが,幸い増刷を重ね,さらには改訂を繰り返し2019 年には第3 版を発行することになった.一時期は韓国語にも翻訳された.
 医療とマーケティングの関係については本文に譲るが,筆者が医師免許を取った1987 年は今から35 年程前になるが,この頃には,医療と経営というものはある意味相反するものだと捉えられていた.ただし,医療とは別個に「医業」という言葉があり,医業経営といった用語で当時の病院経営や診療所経営を伺い知ることはできる.言い換えれば.「医療経営」という言葉はご法度であったのだ.
 しかし,当時であったとしても経営という視点が医療からまったく無縁であったわけではないので,この頃も医療にマーケティングをという考えはなかったわけではない.しかし,マーケティングという考え方に直接向き合うのではなく,どちらかと言えばいかに患者を集めるか,集患という目的でマーケティングが理解されていたように思う.
 筆者自身のことに話を戻そう.筆者は,学生時代にとある縁からドラッカーの本を読む機会があり,非営利組織の役割にフォーカスしている点や,まさにマネジメントあるいはマーケティングという視点でドラッカーの書籍を多く読んだことを覚えている(筆者は現在,ドラッカー学会の理事).
 言うまでもなく,ドラッカーはイノベーションということにも重点を置いているのだが,学生であった筆者にはイノベーションといった発想はなかった.こんなことを言うと,現在のように学生でのアントレプレナーが多い時代と比べて昔日の感があるが,マーケティングの話に戻すと,ドラッカーを通してマーケティングという概念をおぼろげながら掴んでいた筆者にとっては,やはり医師としての医師患者関係というものが一番気になる点であった.
 医師になってからは,糖尿病内科という医師と患者が長い付き合いをして,場合によっては,行動変容を患者に起こさせなければいけない生活習慣病を主に診察していたので,患者が来られた時に医師患者関係を改善する手法としてマーケティングを捉えることが筆者の最初であった.
 であるがゆえに,筆者の先ほど述べたような一連の著書も,医師患者関係という視点がどうしても強くなっていると思われる.もちろんマーケティングの本質が,交換を促進することとすれば,医療マーケティングの場合,医師と患者あるいは医療者と患者の間の交換を促進することになる.
 そう考えれば,この視点も良いのだが,近年の医療分野の広がりはそんなに単純なものではないように思える.
 ここ数年のデジタル社会の及ぼす変化によりマーケティング概念も変わったが,それ以上に世の中の構造が変わった.あるいは変わりつつあると思われる.
 今回はそういった状況を踏まえて,メディカルを意味する医療のみならずさらに幅広く健康を維持するあるいはより健康になるといった意味でのヘルスケア分野も含めたメディカル& ヘルスケアマーケティングの書籍を執筆しようと思ったのがこの本の企画の最初の動機である.
 「医療も聖域ではない」というのは,小泉構造改革の時のキャッチフレーズの1 つでもあるが,現代ではもはやもっと幅広く医療が生活の一部になりつつあるともいえよう.このことに関しては多少説明がいると思われるし,本書を貫く考え方の1 つでもあるので少し説明しておきたい.
 医療分野は手術や救急医療に代表されるように侵襲的な手技が必要であって,裏を返せば,メスなどで人を切るといった通常許されない行為を資格を持った医師が行うという領域である.この分野は参入障壁が高く主なプレーヤーは病院である.ここを本書ではメディカル領域と捉えたい.一方,ヘルスケア領域を広義と狭義に分け,狭義は健康や予防を扱う分野とし,広義はメディカル+ヘルスケア(狭義)として考えてもいい.
 ただ実際には,医師や医療関係者が行っている領域はかなり幅広くなっている.代表例が先ほど述べた糖尿病領域になる.糖尿病のような生活習慣病の領域は,広い意味では予防と言ってもいいかもしれないが,例えば糖尿病であれば血糖値が高い状況が長く続くことによって起きる合併症,例えば腎症による透析導入,網膜症による眼底出血の手術,場合によっては動脈硬化による心筋梗塞や狭心症の発症,といった救急医療や手術が必要になる状況に陥ることを防ぐという概念になる.
 これは,医師や医療者が対応すべき主たる疾患が,感染症から生活習慣病に変化してきたことが原因である.ただここで生活習慣病というように,こういった病気は生活と密接にリンクしており,ここに医師が患者の生活に介入する必要性が出てきた.これが筆者の考えてきたマーケティング手法の適用ができる面である.マーケティングで言えば消費者行動といった概念になろう.
 さらに筆者はそこに健康という概念を導入しようと思い,医療マーケティングの書籍の成功に気をよくし2005 年に健康マーケティングという書籍を著した.しかしながら時期尚早であったのか,筆者の実力のなさか,この本はあまり人気が出なかった.
 時代が10 年流れ,デジタル技術が非常に発達してきた.こんななかで生活者は自ら選択する機会が増え,また情報の洪水にさらされるようになった.これは医療分野も例外ではなく,例えばスマートフォンに体重,歩数,場合によっては心拍数,さらには心電図といった,従来であれば,本書でいうメディカルの領域の情報が簡単に得られるようになった.そして豊かな国においては健康を求める人が増え,近年では東南アジアなどにみられるが,新興国でも健康意識が強い人が増えてきた.こういった流れのなかで,もはや日常生活と健康(生活習慣病の予防もその一部になる)は切っても切り離せない関係になってきていると筆者は考えている.
 そんなわけでこの書籍においては,単にメディカルの分野のマーケティングだけではなく幅広くヘルスケア,状況によっては日々の生活についても考えようということで企画された.幸い,素晴らしい共著者に恵まれることができた.私の恩師であり,中央大学の戦略経営研究科の教授でもあり,日本マーケティング学会の前会長,消費者行動論などのベストセラー書籍の執筆者でもある田中洋先生にはマーケティングの基本を幅広く,特に消費者行動論の視点から記載していただき,ついで純粋な意味の医療者ではない第三者の視点から,ヘルスケア領域を中心に電通の比留間さん,一方メディカル領域では同じく日本マーケティング学会で活躍されている昭和大学の的場先生にメディカル領域の中心ともいえる病院の視点から,そしてここで述べているような考え方をすでに実行している米国事例としてメイヨークリニックをずっと調査されている上原さんに執筆いただくこととなった.
 本書は狭い意味での医療マーケティングの書籍ではない.生活も含めたヘルスケア領域すべてに対しての知見を有している書籍であると自負している.皆様のご愛読を期待するものである.

2022年1月
中央大学大学院戦略経営研究科教授
真野俊樹

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目 次

1章 医療やヘルスケア(狭義)の変化とマーケティングの意味合い 〈真野俊樹〉
  A. 医療(メディカル)領域に漂う閉塞感
  B. 薬価差の減少
  C. 医療従事者のメンタリティの変化
  D. 医学部は大人気
  E. 変化の兆し
  F. 狭義のヘルスケア分野からの見え方
  G. 健康に関する政策
  H. 医療とマーケティングの関連の歴史
  I. なぜ,日本の医療界にマーケティング思考が根付かなかったのか
  J. 医療への満足度は高くない
  K. 徐々に取り入れられている医療マーケティング
  L. ヘルスケア業界とマーケティング
  M. 今後,日本のヘルスケア分野にマーケティング思考が重要になり,根付いていくと考える理由
  N. オンライン診療の例
  O. 医師患者関係の変化
  P. 医師がアドバイザーに
  Q. 経済的課題
  R. 技術の視点
  S. 広い意味でのオンライン化はますます進む

2章マーケティングの考え方〜4 つの「志向性」について〜〈田中 洋〉
  A. マーケティングとは
   1. 野尻知里博士との対話
   2. マーケティングの定義
   3. マーケティングへの誤解
  B. マーケティングの志向性
   1. 4 つの志向性
   2. 顧客志向(1)
   3. 顧客志向(2):外部と内部の顧客
   4. 顧客志向(3):細分化・標的化
   5. 収益志向:売上と利益
   6. 戦略志向
   7. 社会志向

3章 ヘルスケアマーケティング入門と実践〈比留間雅人〉
  A. はじめに:本章の使命と方法
   1. 本章の使命と構成
   2.「 マーケティング」とは何か? あるいは「本章の方法」について
   コラム(1) 「知っている」ということと「信じる」ということと
   コラム(2) 実証可能性をあきらめ知恵を得る
   コラム(3) 経験と接続した観念のもたらす「知恵」
  B. ヘルスケアマーケティングの「静態的」把握
   1.「 ヘルスケア」がなぜ主題になるのか?
   2. ヘルスケアに求められていること
   コラム(4) ICT 技術等の活用により「フィットネス以上のもの」に進化するフィットネス・サービス
   コラム(5) 治療“ 以前” と治療“ 以降” を繋げるICT
   3. 医療とヘルスケアの境界問題
  C. ヘルスケアにおけるマーケティングの使命
   コラム(6) 「禁煙」を売る
  D. ヘルスケアマーケティングにおける「顧客志向」とは具体的にどういうことか
   1. 知らないからやらない/ 知っている“ のに” やらない・知っている“ から” やらない
   コラム(7) 「知っている」という確信
   2. 事前の価値/ 事後の価値
   3. 個人財としての健康/ 世帯財としての健康
   4. 顧客視点で考える「技術の価値・意義」
   5. 誰が何のために使うのか/ 誰が何のために支払うのか
   コラム(8) 利用者と購入者
  E. まとめにかえて:「ヘルスケア“ の” マーケティング」から,「ヘルスケア“ による” マーケティング」へ

4章 メディカル分野のマーケティング〈真野俊樹〉
  A. メディカル領域のマーケティング
  B. 顧客の創造ができるのか
  C. 忘れてはいけない顧客の論理
  D. メディカル領域のマーケティングの役割
  E. 医療者や医療機関と患者の関係におけるマーケティング思考
  F. 価値と価値観について
   コラム(1) 価値観について
  G. 満足度の改善にIT を使用する
  H. PX の重視が必要
  I. 医療とデジタル
  J. デジタルマーケティング
   コラム(2) AIDMA やAISAS モデルとは
  K. マーケティング戦略と医療機関
  L. インターナルマーケティング
  M. ES なくしてCS なし
  N. 患者と医療者の関係性の事例
  O. カイザーパーマネンテの事例:カイザーは3 つの組織からなる
   コラム(3) 米国の医療制度
   1. カイザーパーマネンテの特徴
   2. 保険者優位のカイザーの仕組み
   3. 病院
   4. ICT の活用

5章 日本でのメディカルマーケティングの実践事例〈的場匡亮〉
  A. 病院における地域連携活動
  B. 地域の医療ニーズや近隣の医療機関などに関するリサーチ活動
  C. 地域医療機関との関係構築
  D. 患者情報のやり取り
  E. 地域密着型の連携,広域型の連携
  F. 国立がん研究センターの取り組み
   1. 中央病院のオンラインセカンドオピニオン
   2. 東病院の「(仮称)柏の葉ホテル」計画
  G. 市場の選択と競争優位の獲得
  H. 患者の声を病院運営にいかす,PX(patient experience)をもとにした改善活動
  I. 患者自らが医療に貢献する
   1. 患者の声を運営に生かす仕組み
   2. 飯塚病院認定地域医療サポーター制度
   3. 病院と患者(顧客)との距離
   4. 病院における価値共創活動
   5. 医療機関の事業領域

6章 米国No.1 病院としてのメイヨークリニックのマーケティング戦略〈上原繁夫〉
  A. 米国でNo.1 病院に選ばれる戦略に成功したメイヨークリニック
  B. メイヨークリニックの150 年続く病院経営
   1. 概要
   2. 先進の技術:デジタルヘルス
   3. 患者教育と患者ライブラリー
   4. 患者を癒すボランティア
   5. ペイシェントエクスペリエンス室は患者対応からニーズを引き出す
   コラム(1) 日本の患者相談室とペイシェントエクスペリエンス室の違い
   6. ペイシェントエンゲージメント(patient engagement)の向上
   7. 後援者の支援と寄付
   8. メイヨークリニックの経営の構成要素
  C. メイヨークリニックのマーケティングとソーシャルメディア
   1. マーケティング戦略とビジョン
   2. メイヨークリニックのマーケティングの要点
   3. 医療ソーシャルメディアとデジタル化
   コラム(2) エンゲージメントを高める投稿(記事)
   コラム(3) ソーシャルメディアのモニタリング:OECD の提案
   4. 医療ソーシャルメディアの現実とメイヨークリニックの対応
   コラム(4) ソーシャルリスニングとソーシャルメディアモニタリングの違い
   5. ウェブサイト
   6. マーケティングプランとマネージメント
   7. メイヨークリニック・ソーシャルメディア・ネットワーク

  索引

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執筆者一覧

真野俊樹 中央大学大学院戦略経営研究科教授・多摩大学大学院特任教授 編著
田中 洋 中央大学名誉教授 
比留間雅人 株式会社電通 事業共創局 ビジネス開発・プロデューサー 
的場匡亮 昭和大学大学院保健医療学研究科准教授/ 経営戦略企画室室長 
上原繁夫 株式会社日本医療ソリューションズ代表取締役 

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   定価3,740円(本体3,400円 + 税)
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