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書籍詳細

婦人科腹腔鏡手術学 The Kurashiki Method

婦人科腹腔鏡手術学 The Kurashiki Method

安藤正明 総監修・責任著者 / 菅野 潔 編集・著者

A4判 550頁

定価33,000円(本体30,000円 + 税)

ISBN978-4-498-16046-0

2023年05月発行

在庫あり

2万件以上の経験を誇るTeam ANDOUが集結してまとめた,婦人科腹腔鏡手術の決定版.

25年間の長きにわたり,婦人科腹腔鏡手術の最前線を走ってきた安藤正明氏と彼が率いる倉敷成人病センター産婦人科のエキスパート陣がまとめた低侵襲手術のテキスト.チャレンジを重ね,何度も壁を乗り越えてきたチームだからこそ書けた技術と哲学が詰まっている.彼・彼女らの思考とテクニックが紙面上でも体感できるよう,イラストや写真にもこだわった.産婦人科腹腔鏡手術の決定版にして,まさに至高の1冊と言える.

安藤正明の低侵襲手術の歴史と変遷

1987年 腟式単純子宮全摘術(現在まで腟式手術9000例以上)
1997年7月 腹腔鏡手術を開始
     腹腔鏡補助下腟式子宮全摘術(LAVH)
     腹腔鏡下付属器切除術
     腹腔鏡下卵巣囊腫核出術
1998年 腹腔鏡下骨盤リンパ節郭清(PLND)(側臍靭帯吊り上げ法)
     後腹膜鏡下傍大動脈リンパ節郭清(R-PAND)
     卵巣癌に対する腹腔鏡手術(大網切除,直腸切除,膵尾部切除,脾摘等を含む)
1999年 腹腔鏡補助下腟式広汎子宮全摘術(LARVT)
     フランス・リールに手術見学(Centre Oscar Lambret:Denis Querleu教授)
     全腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)
     腹腔鏡下子宮筋腫核出術(LM)
     腹腔鏡下尿管膀胱新吻合術
     子宮内膜症に対する腹腔鏡下直腸低位前方切除術
     腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC),腹腔鏡下Burch法
     腹腔鏡下仙骨前神経切断術
2000年 腹腔鏡下広汎子宮全摘術(TLRH)
2001年 腹腔鏡下広汎子宮頸部切除術(TLRT)
2004年 ドイツ・イエナに手術見学(Friedrich Schiller University:Achim Schneider教授)
2006年 腹腔鏡下ileal ureter substitution
2008年 腹腔鏡下尿管膀胱新吻合術(Boari法)
2009年 単孔式腹腔鏡手術(TLH,LM,PLND,PAND等)
     経腟腹腔鏡手術(軟性内視鏡によるvNOTES)
     腹腔鏡下造腟術(Ruge法)
2010年 腹腔鏡下造腟術(Davydov法)
2011年 細径腹腔鏡手術(TLH,LM,PLND,TLRH,TLRT等)
2013年 ロボット支援下手術を導入
     ロボット支援下広汎子宮全摘術(RARH),広汎子宮頸部切除術(RART)など
2015年 腹腔鏡下McCall手術
2019年 ロボット支援下後腹膜鏡下傍大動脈リンパ節郭清
     硬性内視鏡によるvNOTES
2020年 ロボット支援下尿管膀胱新吻合術
     ロボット支援下仙骨腟固定術(RSC)
2021年 ロボット支援下直腸低位前方切除術


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はじめに

 私が腹腔鏡手術を初めて行ったのは1997年7月10日と記憶している.
 開始する前に,当時数多く腹腔鏡手術をされていた宝塚市立病院の伊熊健一郎先生のところに二度ほど腹腔鏡補助下子宮全摘術(LAVH)の見学へ行かせていただき,動物ラボにも一度トレーニングに行った.そして,43歳にして初めて実際の手術で腹腔鏡機器に触れることとなった.腹腔鏡手術のパイオニアの先生方は1990年代前半に開始しておられ,少々遅れての出発である.
 それまでは腟式手術を数多く行っていた.1984年から1998年までに約7000例の腟式手術を行い,年間420例に達した時もあった.腹腔鏡による子宮全摘術を導入した当初はLAVHが主流で大半を占め,全腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)はほとんど行われていなかった.今では信じ難い話であるが,1999年頃は学会でTLHを発表すると「何でそんなことをするのか?」と批判的な空気さえあった.当時,腹腔鏡手術の事故や合併症の50%はトロッカー刺入の際に起きており,LAVHは従来の腟式子宮全摘術(TVH)と比べ合併症が増え,傷も増え(!),コストもかかる.さらに最も重要で困難なステップである前後のコルポトミーと子宮頸部周囲の靭帯の処理もTVHと全く同様に必要であり,簡単にはならないという内容の手術であった.そのため,筆者の目にはLAVHは合理的な手術と映らなかった.そこで,TVHができない症例にTLHを行うといったスタンスで開始した.TLHは開腹子宮全摘術を腹腔鏡下に再現する術式である.そのためには体腔内での縫合操作が必要となった.当時の腹腔鏡手術において体腔内縫合は一般的ではなかったが,これを必須と考え,ドライボックスで糸結びと縫合操作の練習を徹底的に行った.腹腔鏡での結紮において,鉗子先端の描く軌跡は非常に複雑である.腹腔鏡手術用の鉗子で結紮ができれば,あらゆる動きが可能と考えた.また,体腔内縫合ができれば,臓器あるいは腫瘍の切除後の修復・再建も可能となり,腹腔鏡手術で可能な手技の限界が格段に拡がることになる.この体腔内縫合を基礎とし,いろいろな婦人科疾患に適応を広げて行くことができた.
 腹腔鏡の導入当初,私は開腹で悪性腫瘍の手術を行っていた.卵巣癌や子宮体癌では剣状突起までの長大な切開が必要な場合も多く,全ての癌の手術を行っていた私は患者さんのダメージを目の当たりにしていた.ひどい場合には2—3週間寝たきりになってしまう.これをなんとか低侵襲化できないかと常に考えていた.低侵襲手術で最も恩恵を受けるのは,最も大きな侵襲の手術すなわち悪性腫瘍の手術である.広範囲に後腹膜の剝離操作が及ぶ婦人科癌手術において腹腔鏡手術の恩恵は計り知れないと感じた.そのため比較的早期から悪性腫瘍の手術に腹腔鏡を導入した.腹腔鏡の作業環境は不正確な切除に直結する.慣れない術者やこれを意識しない術者では不完全切除になってしまうことになる.癌の手術において最も重要なポイントは長期予後を損なわないことであることは言うまでもない.いくら回復が早くても,生存率が下がるようでは意味がないどころか有害な手技となってしまう.常に腫瘍の飛散を起こさず正確な範囲を切除するよう心掛けてきた.その結果,幸い良好な予後が得られている.
 これまでに腹腔鏡手術2万件以上,ロボット手術2000件以上を行ってきた.25年間に数多くのまた多様な低侵襲手術を経験する機会に恵まれ,幸い悲劇的な事故はなかったが,いろいろな問題点にも突き当たりそれに対する工夫を行ってきた.チャレンジ→壁→解決を繰り返し,ずっと限界に挑戦してきた感がある.これらの経験を活かし,この間に習得した技術をまとめておきたいと考えるに至った.現在,当院の産婦人科スタッフは20名であるが,このうち相当数の手術を執刀し指導的な役割を担っている者のみを本書の分担執筆者とさせていただいた.各々の分担内容全てに目を通し検討したが,私以上に考えて手術をしている点には少なからず驚いた.予想以上の出来映えと自負している.
 現在,一般財団法人倉敷成人病センターの理事長を務めているが,毎週20例以上の腹腔鏡あるいはロボット手術をしており,未だに現役である.身近なところに臨床があり,手術を中心に一日が回っている.したがって新鮮な生の意見が提供できるのではないかと考えている.少しでも良い手術をと常にチャレンジしているため全てが完成したものではないが,これらが研鑽を積まれている先生方に少しでもお役に立つのであれば望外の喜びである.

2023年3月
安藤正明

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Contents

  はじめに
  安藤正明の低侵襲手術の歴史と変遷

◆総論

1 婦人科腹腔鏡手術の基本事項[坂手慎太郎]

2 電気メス・各種エネルギーデバイスの原理と適正使用[柳井しおり]

3 腹腔鏡手術のトレーニング法[菅野 潔]

4 婦人科手術のための骨盤内解剖[菅野 潔]

◆各論

1 良性疾患に対する腹腔鏡手術
  A 異所性妊娠(卵管妊娠・間質部妊娠),卵管留水腫・留膿腫に対する腹腔鏡手術[坂手慎太郎]
  B 腹腔鏡下付属器切除,卵巣囊腫核出術(単純性囊胞,皮様囊腫)[坂手慎太郎]
  C 腹腔鏡下卵巣子宮内膜症性囊胞摘出術[澤田麻里]
  D 腹腔鏡下子宮筋腫核出術[菅野 潔]
  E 腹腔鏡下子宮腺筋症病巣切除術[坂手慎太郎]
  F 腹腔鏡下子宮全摘術(子宮筋腫・子宮腺筋症)[羽田智則]
  G 腹腔鏡下子宮全摘術(重症子宮内膜症)[安藤正明]
  H 腹腔鏡下子宮全摘術(大型筋腫・頸部筋腫)[安藤正明,菅野 潔]
  I 腹腔鏡下深部子宮内膜症切除術[柳井しおり,菅野 潔]
  J 稀少部位子宮内膜症に対する腹腔鏡手術[安藤正明,柳井しおり]

2 骨盤臓器脱に対する腹腔鏡下仙骨腟固定術[澤田麻里]

3 不妊症・子宮形態異常・性分化疾患に対する腹腔鏡手術[澤田麻里]

4 悪性疾患に対する腹腔鏡手術
  A 腹腔鏡下骨盤リンパ節郭清[菅野 潔]
  B 後腹膜鏡下傍大動脈リンパ節郭清[菅野 潔,柳井しおり,安藤正明]
  C 腹腔鏡下広汎子宮全摘術[安藤正明,菅野 潔]
  D 腹腔鏡下広汎子宮頸部切除術[安藤正明,柳井しおり]

5 腹腔内癒着・臓器損傷への対応
  A 高度癒着に対する腹腔鏡手術[安藤正明]
  B 臓器損傷に対する腹腔鏡下修復法[安藤正明,菅野 潔]
   I 腸管損傷
   II 下部尿路損傷
   III 血管損傷

6 更なる低侵襲アプローチ
  A 単孔式・細径・NOTES[安藤正明]
   I 単孔式腹腔鏡手術(TANKO)
   II 2孔式腹腔鏡手術
   III 細径腹腔鏡手術(needlescopic surgery)
   IV NOTES(natural orifice transluminal endoscopic surgery)
  B ロボット支援下手術[柳井しおり,菅野 潔]

コラム [安藤正明,菅野 潔,柳井しおり]
  1 トロッカーがない!
  2 Dr Kohと寿司
  3 師と私
  4 バンコク予想外の尿管子宮内膜症
  5 ものすごい数の産婦人科医
  6 キールは22時でも明るい
  7 ミラノに神風が吹く
  8 インドでLM?
  9 オーストラリアでの手術は大変
  10 倉敷TLHセミナー
  11 白酒で撃沈
  12 アヴェッリーノ予想外の手術デモ
  13 あなたはまた来週ね!
  14 バンコク大出血事件
  15 私が育った環境
  16 フランスの手術は早朝から
  17 中国の変わり身はすごい
  18 婦人科医2人(1人は研修医)で骨盤除臓術週3件!
  19 手術における剝離と“筋膜”

記憶に残る症例[安藤正明]
  症例1
  症例2
  症例3
  症例4
  症例5
  症例6
  症例7

  おわりに
  索引

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執筆者一覧

安藤正明 倉敷成人病センター理事長/産婦人科部長 総監修・責任著者
菅野 潔 倉敷成人病センター副部長 編集・著者
坂手慎太郎 倉敷成人病センター産婦人科副部長 
澤田麻里 倉敷成人病センター産婦人科医長 
羽田智則 倉敷成人病センター産婦人科部長 
柳井しおり 倉敷成人病センター産婦人科主任副部長 

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