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書籍詳細

最新肝臓病理学

形態と分子病態

最新肝臓病理学

内田俊和 著

B5判 516頁

定価37,400円(本体34,000円 + 税)

ISBN978-4-498-04280-3

1999年05月発行

在庫なし

これまでの病理学に分子生物学の研究成果を盛り込むとともに,カラー写真を多用して視覚から肝病理の形態を理解しやすいようにビジュアルに解説した.病理学を臨床に密接させて解説した臨床のための病理学書である.また,研究史や最先端の研究の現状を紹介して,興味深く学べる書とした.


 肝臓病学はここ10年間で急速に進歩した.新たに肝炎ウイルスとしてC型とE型が同定され,これまで非A非B型といわれてきた肝炎の実体が解明された.それでもA 〜E型ではないウイルス肝炎が存在するが,そのほとんどはサイレント (HBs抗原陰性)のB型肝炎であることが筆者の研究から明らかになり,少なくとも日本ではもう未知の肝炎ウイルスは存在しないであろうと判断されるに至 った.日本の肝疾患の大半はウイルス肝炎である.まだ治療には改善の余地が多々あるが,少なくともウイルス肝炎の診断に関してはほぼ完成の域に達したといえるかもしれない.
 日本ではめずらしいが,欧米に多い肝疾患は遺伝性ヘモクロマト ーシスやα1-抗トリプシン欠損症などの遺伝病である.これらの遺伝病も最近の目覚ましい分子生物学と遺伝子学的技法の適用により,原因遺伝子がクロ ーニングされ,その変異が次々と明らかにされてきた.こうしてみると,今は腫瘍以外の全ての肝疾患が遺伝子レベルで発生機序を,分子レベルで病変の進展を語れるようにな ったとい っても過言ではない.
 ウイルス肝炎の診断が血清検査で可能になり,しかも病変が分子・遺伝子レベルで解明されている現在,肝臓病理の相対的地位の低下は否めない.以前は肝病理から得られる情報がきわめて重要な位置を占めていた.最近は肝組織を採取して観察に供さなくとも,血清デ ータや画像などのさまざまな臨床検査学の情報を総合すると多くの肝病変の診断は可能である.しかしそうであ っても肝病理の肝臓学に占める重要性は揺がないと思われる.それは臨床検査では未知な情報が得られるだけではなく,病態の理解を促す決定的な所見を提供するからである.
 筆者はこれまで「ウイルス肝炎 組織像と鑑別診断」 (中外医学社1983年),「肝細胞の病理」 (HBJ出版局1992年),「細胞からみる肝臓病ことはじめ」 (文光堂1997年)と3冊の肝臓病理学の著書を上梓した.本書はこれらの集大成といえるかもしれない.本書の記述は基本的に各疾患に関し,はじめに疾患の概説と臨床的事項を,次に病理形態像を,そして最後に分子レベルの研究の最前線を展開するようにし,疾患を立体的に把握できるように心掛けた.よ って本書は肝臓病を志す臨床医・病理医のみならず,肝臓の解剖・生理学者や肝疾患の分子生物学者にも役立つと確信する.
 もし読者が肝臓病の全くの初心者なら,本書をひもとく前に「細胞からみる肝臓病ことはじめ」をまず通読されることをお勧めしたい.これには肝疾患の理解のための基礎的事項が展開されているので,これを一読すると本書の理解が早まると思われる.
 本書に使用した写真はできる限り過去の著書に使わなか ったものを用いたが,一部は入手の困難さから重複して使用せざるを得なか ったものもある.読者のご寛容を予め期待したい.本書の写真を準備するにあたり,金沢大学医学部病理の中沼安二先生,癌研究所病理の神田浩明先生,昭和大学医学部内科の柴田実先生,大阪市立総合医療センタ ーの井上健先生,東邦大学医学部内科の住野泰清先生,その他多くの先生方のご協力を受けた.紙面を借りて深謝したい.また本書の刊行にあたり,中外医学社の荻野邦義部長,秀島悟課長,齋藤喜信氏にお世話にな った.彼らの御協力がなければ本書は世に出なか ったであろう.深謝したい.最後に本書の写真は,特に断りがない限り,光学顕微鏡写真はヘマトキシリン&エオジン染色による.なお拡大倍率は撮影時のオリジナルの倍率である.

1999年2月
内田俊和

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目 次

第1章 肝臓の構造と機能
 1.肝臓の機能
 2.肝臓の解剖学
 3.肝臓の組織学と肝小葉
 4.肝細胞

第2章 胆汁の生理と異常
 1.胆汁の成分と分泌
 2.ビリルビンの代謝とその先天異常
  A.Crigler-Najjar病 (症候群)
  B.Gilbert症候群
  C.Dubin-Johnson症候群
  D.Rotor症候群
 3.胆汁うっ滞と黄疸
 4.家族性肝内胆汁うっ滞症候群
  A.Alagille症候群
  B.進行性家族性肝内胆汁うっ滞と良性再発性肝内胆汁うっ滞

第3章 肝細胞消失の3パターンと肝細胞障害のバリエーションとその原因
 1.肝細胞消失の3パターン
 2.細胆管の性状と起源
 3.肝細胞壊死のパターン
  A.壊死炎症(肝炎)反応
  B.直接ウイルス障害作用
  C.単純壊死
  D.炎症性壊死
  E.胆汁うっ滞
  F.圧迫
  G.循環障害
  H.代謝障害
 4.肝細胞壊死の名称

第4章 肝細胞壊死に続発する所見と肝硬変
 1.肝細胞再生
  A.再生肝細胞の形態と機能
  B.肝細胞再生の分子機序
  C.肝細胞の増殖因子
 2.肝線維化
 3.不規則再生
 4.肝硬変
 5.門脈圧亢進症
 6.肝不全

第5章 肝細胞以外の組織成分の病変
 1.肝内門脈の病変
 2.肝内肝動脈の病変
 3.肝内肝静脈の病変
 4.肝内胆管の病変
 5.門脈域結合織の病変
 6.小葉内の病変

第6章 ウイルス肝炎
 1.肝炎ウイルスの特徴と肝細胞親和性の理由
 2.ウイルス肝炎の地球疫学
 3.各肝炎ウイルスの特徴
  A.A型肝炎ウイルス
  B.B型肝炎ウイルス
  C.C型肝炎ウイルス
  D.D型肝炎ウイルス
  E.E型肝炎ウイルス
 4.ウイルス肝炎の分類と命名
  A.急性ウイルス肝炎の形態像
  B.慢性活動性ウイルス肝炎の形態像
  C.持続性ウイルス肝炎の形態像

第7章 ウイルス肝炎以外の肝感染症
 1.ウイルス感染
 2.細菌感染
 3.リケッチア感染
 4.スピロヘータ感染
 5.マイコバクテリア感染
 6.真菌感染
 7.原虫・寄生虫感染
 8.膿瘍
 9.門脈炎
 10.単核球症
 11.後天性免疫不全症候群(エイズ)
 12.肝外重症感染症あるいは敗血症/エンドトキシン血症
 13.肝サルコイド症

第8章 自己免疫性肝疾患
 1.自己免疫性肝炎
 2.原発性胆汁性肝硬変
 3.原発性硬化性胆管炎

第9章 アルコール肝疾患と類似病変
 1.アルコール代謝
 2.発生病理,危険因子
 3.血清マーカー
 4.肝細胞の病変の段階的進行
 5.肝細胞の障害性病変
  A.脂肪変化(沈着)
  B.泡沫変性
  C.硝子変性
  D.水腫変性
  E.その他の肝細胞障害と組織像
 6.線維化
 7.アルコール肝疾患の分類
  A.急性硬化性硝子壊死
  B.アルコール泡沫変性
  C.急性水腫変性
  D.門脈域硬化と中心静脈硬化
  E.門脈域周囲線維化と中心静脈周囲線維化
  F.小葉中心閉塞性線維化
  G.びまん性間質性線維化
  H.前硬変と肝硬変
  I.肝細胞癌
  J.その他
 8.病変の成り立ちと進行の動態
 9.肝発癌
 10.地理病理
 11.アルコール肝疾患類似病変
  A.糖尿病,肥満病変
  B.短絡腸管症候群
  C.完全非経口栄養
  D.クワシオルコル
  E.インド小児肝硬変

第10章 代謝性・栄養性肝疾患
 1.鉄過剰症
 2.Wilson病(肝レンズ核変性)
 3.α1-抗トリプシン欠損症
 4.糖原病(糖原貯蔵症)
  A.I型(Von Gierke病)
  B.II型(Pompe病)
  C.III型(Cori病)
  D.IV型(Anderson病)
  E.VI型(Hers病)
  F.IXa型とIXb型
  G.低分子重量グリコーゲン型
  H.O型
 5.ポルフィリン症
 6.嚢胞性線維症
 7.ペルオキシゾーム異常症
 8.ガラクトース血症
 9.遺伝性果糖不耐症
 10.遺伝性チロシン血症
 11.原因不明組織球増殖症
 12.ムコ多糖(体)症
 13.ライソゾーム貯蔵病
  A.Gaucher病(グルコシルセラミドリピドーシス)
  B.Niemann-Pick病(スフィンゴミエリン-コレステロ ールリピドーシス)
 14.フ ィブリノ ーゲン貯蔵病
 15.Lafora病(Lafora体を伴うミオクローヌスてんかん)
 16.遺伝性出血性毛細管拡張症(Rendu-Osler-Weber病)
 17.その他のさまざまな遺伝疾患
  A.糖蛋白と蛋白代謝障害
  B.小胞体貯蔵病
  C.アミノ酸代謝障害
  D.リポ蛋白・脂質代謝障害
  E.ペルオキシゾーム障害
  F.ミトコンドリア性細胞障害
  G.その他の先天性代謝障害
 18.肝アミロイド症
 19.妊娠
 20.膠原病
 21.甲状腺疾患
 22.副腎疾患
 23.炎症性腸疾患
 24.Reye症候群

第11章 薬剤・毒物の肝障害
 1.肝炎型
 2.肉芽腫炎型
 3.胆汁う っ滞型
 4.単純壊死型
 5.脂肪・脂質沈着型
 6.胆管破壊型
 7.血管障害型
 8.腫瘍誘発型
 9.その他

第12章 循環障害性肝病変
 1.虚血
 2.うっ血
 3.乏血-再環流障害
 4.Budd-Chiari症候群
 5.中心静脈閉塞病
 6.特発性門脈圧亢進症
 7.肝外門脈閉塞
 8.肝紫斑病
 9.肝内門脈の先天性欠損
 10.その他の病変
  A.梗塞
  B.体循環-門脈動静脈フィステル
  C.肝内動脈静脈および門脈体循環フ ィステル
  D.自然肝破裂
  E.肝実質の結節化
  F.門脈血栓症
  G.類洞拡張症
  H.鎌状赤血球症
  I.毛細胞白血病

第13章 胆道系の非腫瘍性病変
 1.単純嚢胞
 2.絨毛肝前腸嚢胞
 3.von Meyenburg複合体(微小胆管過誤腫)
 4.先天性肝線維症
 5.Caroli病(先天性肝内胆管拡張症)
 6.総胆管嚢胞
 7.多嚢胞性肝疾患
 8.先天性肝外胆管閉鎖症
 9.機械的胆汁閉塞
 10.胆管炎

第14章 移植片対宿主病と同種肝移植関連病変
 1.移植片対宿主病
 2.同種肝移植関連病変
  A.拒絶反応
  B.同種肝拒絶反応の機序とマ ーカ ー
  C.虚血-再環流障害(保存障害)
  D.手術操作の失敗
  E.薬剤性肝障害
  F.レシ ーピエントの以前の病変の再発
  G.感染症(日和見感染を含む)
  H.血栓症
  I.感染症以外の肝外病変

第15章 肝内非腫瘍性結節病変
 1.限局性結節性過形成
 2.結節性再生性過形成
 3.局所性結節化
 4.炎症性擬腫瘍
 5.孤立性壊死結節
 6.その他

第16章 肝細胞の腫瘍
 1.肝細胞腺腫
  A.原因と基礎疾患
  B.形態像
  C.病態と発生機序
 2.肝細胞癌
  A.成因,原因
  B.発癌までの潜伏期
  C.非癌部病変
  D.組織像
  E.封入体と合成・沈着物質
  F.癌に対する生体の反応
  G.広がりと転移
  H.組織分類
  I.異型過形成と低悪性肝細胞癌-肝発癌の多段階発生
  J.肝臓以外の臓器の肝細胞癌類似癌-類肝癌
  K.肝発癌の遺伝子学
 3.肝芽腫
  A.肝細胞癌との違い
  B.分類と組織像
  C.癌発生
 4.結合癌
 5.混合悪性肝腫瘍

第17章 胆管細胞の腫瘍
 1.胆管腺腫あるいは過誤腫
 2.胆管乳頭腫症
 3.胆管嚢胞腺腫と嚢胞腺癌
 4.胆管癌
 5.扁平上皮癌

第18章 肝細胞と胆管上皮以外の腫瘍
 1.血管とリンパ管の腫瘍
  A.血管腫
  B.小児血管内皮腫
  C.類上皮性血管内皮腫
  D.血管肉腫
  E.悪性血管外皮細胞腫
  F.リンパ管腫とリンパ管腫症
 2.脂肪細胞の腫瘍
  A.脂肪腫
  B.脂肪肉腫
  C.骨髄脂肪腫
  D.血管筋脂肪腫
 3.平滑筋・横紋筋の腫瘍
  A.平滑筋腫
  B.平滑筋肉腫
  C.腺筋腫
  D.横紋筋肉腫
 4.線維組織細胞の腫瘍
  A.線維肉腫
  B.悪性線維性組織球腫
 5.神経細胞の腫瘍
  A.神経線維腫
  B.顆粒細胞腫瘍
 6.胎芽(未分化)肉腫
 7.悪性リンパ腫
 8.その他の肝原発腫瘍
  A.軟骨腫
  B.骨肉腫
  C.限局性線維性中皮腫
  D.カルチノイド
  E.悪性黒色腫
  F.胚細胞腫瘍
  G.小胞樹状細胞腫
 9.奇形および発生異常
  A.間葉性過誤腫
  B.過誤腫
  C.副腎遺残腫瘍
  D.異所性膵組織
 10.転移性腫瘍

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