TAVIテクニカルハンドブック 改訂2版
- 定価:
- 10,780円(本体価格9,800円+税)
在庫あり
書誌情報
| サイズ | B5 |
|---|---|
| 頁 | 296頁 |
| ISBN | 978-4-498-13683-0 |
| 発行日 | 2026年08月31日 |
内容
TAVIの標準化を目指して
「TAVIの標準化」を目指し膨大な知見をまとめあげたテクニカルガイドの改訂版.初版刊行後に登場したデバイスや手技の情報を加え,全体に渡ってアップデートを施した.術前評価,基本手技,応用治療,トラブルシューティング,TAVI後コロナリーアクセスについて取り上げ,手技の背景にある解剖学的な考え方まで詳細に解説した本領域の決定版.
序文
2版の序
TAVIテクニカルハンドブック初版を刊行してから数年が経過した.私にとって初めての単独執筆による書籍であったが,これまで多くの読者の方々から感想やご意見をいただく機会に恵まれた.なかでも面識のない医療従事者の方々が本書を手に取り,日常診療や手技の参考として活用してくださっていると伺うたびに,書籍が持つ影響力の大きさを実感する.本書が,私自身が長年追求してきた「TAVIの標準化」に少なからず貢献できているのであれば,著者としてこれほど嬉しいことはない.
一方で,TAVIの進歩は極めて速い.わずか数年の間にも新たなデバイスが登場し,新しい手技や治療戦略が日常診療に取り入れられていく.さらに,私自身の経験の蓄積とともに,手技に対する考え方や重視するポイントも少しずつ変化してきた.その結果,初版刊行時には十分と考えていた内容にも,改めて補足や修正を加えるべき点が少なくないことに気づかされた.今回改訂版の出版を決意した最大の理由は,まさにそこにある.
ところで,私がSHDインターベンションに携わるなかで,常に大切にしている考え方がある.それは,心臓を三次元構造として捉えることである.
外科手術では術者が実際に心臓を目の前にして操作するため,もともと三次元的な理解が前提となっている.一方,カテーテルインターベンションでは透視,CT,心エコーといった画像情報を通じて心臓の構造を理解し,デバイスを操作する.私たちが日常的に目にしている画像は二次元であるが,実際の心臓には軸があり,奥行きがあり,複雑な立体構造が存在する.そのため術者には,得られた情報を頭の中で三次元化し,解剖学的構造やカテーテルの位置関係を正確に把握する能力が求められる.
しかし,単に多くの画像情報を集めればよいわけではない.CTや心エコーには三次元再構築の技術が存在するが,最終的に私たちが勝負する舞台は二次元の透視画面下であり,限られた情報から三次元立体構造をイメージし,デバイスの挙動を予測しながら操作する力こそが重要であると私は考えている.
左室をLAO cranialで観察すること,大動脈弁をperpendicular viewだけでなくen face viewで評価すること,自己拡張型TAVIをcusp‒overlap viewとLAO viewを切り替えながら展開する,deep RAO viewやL分離cusp‒overlap viewまで駆使すること―これらはすべて,透視角度の意味を理解し,その画像がどのような三次元情報を表現しているのかを意識するための工夫である.本書では,それぞれの手技やテクニックを紹介するだけでなく,その背景にある解剖学的な考え方や画像の捉え方についてもできる限り解説したつもりである.
私が長年追求してきた「TAVIの標準化」とは,単に手順を統一することではない.同じ画像を見たときに同じ解剖学的構造を認識し,同じ現象を理解し,そして同じようにカテーテル操作を考えられることである.その共通言語を築くことこそが,私の考える標準化である.
本書が,TAVIに携わるすべての医療従事者にとって日常診療の一助となり,より安全で再現性の高い治療につながることを願っている.
2026年7月
多 田 憲 生
初版の序
2015年7月,私はアメリカ留学時代のメンターであるDr. Saibal Karに再会した.日本ではまだSAPIEN XTとClassic CoreValveでTAVIを行っていた頃で,弁輪破裂や左室穿孔など重症合併症の危険性と常に隣り合わせだった時期だが,欧米ではすでに次世代のSAPIEN3が使われていた.
SaibalにSAPIEN3の感想を聞くと,“S3 is angioplasty”と言った.直訳すると“SAPIEN3は血管形成術だ”になるが,この場合はそうではない.彼は,“SAPIEN3はPCIのように簡単だ”と言ったのだ.
その時,私の前にTAVIの近未来的ビジョンがみえた.目指すべきは“標準化”なのだと.
実際にSAPIEN3やEvolutを使うようになると,確かにイージーに使え,合併症も少なくなり,複雑症例に対しても良い成績を出せるようになった.はじめは私だけが第一術者をしていた当院も今では術者は8人までに増え,TAVIは一定のレベルの術者であれば誰でも行うことができる治療になった.
しかし,地域ごと病院ごとで見たらまだ弁そのものへのカテーテル操作に自信がない術者や症例選択,戦術の構築に慣れていない施設,確率の少ない合併症に怯えている施設が未だ存在する.
私の目指すところはTAVIの標準化である.どの施設でもどの術者でも安全に良い大動脈弁を作ることである.そのために今回,インターベンショニストとしてテクニカルな部分にこだわった技術書を執筆した.これまでTAVIの技術に関する話は,我々がTAVIを始めた時に海外の術者から教わったことや,企業のマニュアルに書いてあることくらいであった.しかし,この本では,私のインターベンショニストとしての感覚,理論に基づいて多くの症例における成功と失敗から築いてきた技術論を展開している.
TAVIの適応や術後の抗血栓療法などの学術的内容については,本書では触れていない.あくまで,TAVI手技に関する内容にこだわっている.また,私は循環器内科カテーテル専門医なので,外科的な部分である経心尖アプローチや,直接大動脈アプローチについては割愛させていただいた.
第6章では,TAVI後コロナリーアクセスについても概説している.この章においては,心臓カテーテル医であれば誰でも必要な知識であるので,TAVIはしないがPCIはする,という人にも読んでもらいたい.
これからTAVIを始める方,TAVIってどんな世界だろうと思っている方,またTAVIをすでに行っているけどまだ迷いのある方,特殊な症例に遭遇し対応に困っている方など多くのTAVI関係者に読んでもらいたい.
2023年10月
多 田 憲 生
目次
目 次
本書の動画視聴方法
第1章▶▶術前評価
1 アクセス評価①:総腸骨動脈から大腿動脈
2 アクセス評価②:穿刺点
3 アクセス評価③:大動脈
4 アクセス評価④:人工物
5 大動脈弁の形
6 大動脈弁複合体①:弁輪,LVOTカルシウム
7 大動脈弁複合体②:SOV,STJ,冠動脈高
8 大動脈弁複合体③:膜性中隔長
9 二尖弁
10 左室の形
第2章▶▶基本手技
1 大腿動脈穿刺からクロージャーデバイス
2 pigtailのアクセスはどこから?
3 大口径シース挿入
4 弁通し
5 心臓の軸
6 左室内操作①:JRで入った場合
7 左室内操作②:アンプラッツで入った場合
8 左室内操作③:pigtailからstiffwire
9 horizontal aortaにおける左室ワイヤー操作
10 前拡張①:いつ行うのか?
11 前拡張②:どのように行うのか?
12 大口径カテーテルのデリバリー
13 側壁は危険地帯
14 終わり方
第3章▶▶SAPIEN3
1 SAPIEN3の構造
2 SAPIEN3留置の流れ
3 弁サイズ①:考え方
4 弁サイズ②:術前シミュレーション
5 留置深度
6 アライメント
7 rapid pacing
8 インフレーション
9 手応えインフレーション
10 インフレーション実例
11 留置後の血圧回復
12 留置後の評価
13 後拡張
14 SAPIEN3の特性を活かした症例
15 SAPIEN3 Ultra Resiliaと溶血
第4章▶▶Evolut
1 Evolutの構造
2 インラインシース? 大口径シース?
3 Evolut留置の流れ
4 stiffwireは誰が持つ?
5 Evolut展開開始準備
6 Evolutの展開
7 3分の2評価
8 リリース
9 デリバリーカテーテル回収
10 Evolutの後拡張
11 カスプオーバーラップテクニック①:基本
12 カスプオーバーラップテクニック②:N分離カスプオーバーラップビューとLAOビューを使い分ける
13 commissure alignment
14 Evolutのサイズ選択
第5章▶▶Navitor
1 Navitorの構造
2 Navitorのサイズ選択
3 Navitorの展開
4 80%展開時評価
5 Navitorの軸づくり
6 AMAGAMI
7 リリース
8 Navitorの特性を活かした症例
第6章▶▶応用治療
1 TAV in SAV①:適応
2 TAV in SAV②:冠動脈閉塞リスク評価
3 TAV in SAV③:実際の手技
4 leaflet modification ①概論
5 leaflet modification ②BASILICA
6 leaflet modification ③UNICORN
7 leaflet modification ④有事対応
8 緊急TAVI
9 透析TAVI
10 経鎖骨下動脈アプローチ
11 経頸動脈アプローチ
12 脳塞栓保護デバイス
第7章▶▶トラブルシューティング
1 腸骨大腿動脈狭窄
2 穿刺部合併症
3 補助循環
4 大動脈弁輪破裂①
5 大動脈弁輪破裂②
6 大動脈弁輪破裂③
7 冠動脈保護
8 冠動脈閉塞SAPIEN①
9 冠動脈閉塞SAPIEN②
10 冠動脈閉塞Evolut①
11 冠動脈閉塞Evolut②
12 冠動脈閉塞Evolut③
13 左室流出路狭窄
14 2nd valve(SAPIEN)
15 自己拡張型TAVI弁の引き抜き
16 PVL閉鎖
第8章▶▶TAVI後コロナリーアクセス
1 TAVI弁の構造
2 透視角度
3 大動脈弁基部とTAVI弁との位置関係
4 カテ操作
5 en face view
6 CTによるTAVI後コロナリーアクセスストラテジー
7 en face viewでの右冠動脈アクセス
8 低い左冠動脈はアンプラッツ(AL)がよい
9 TAVI弁の外にスペースがある時は外から狙ってもよい
10 coronary misalignmentに対するコロナリーアクセス
11 TAVI後コロナリーアクセスのライブ症例
12 最初にガイドカテーテルは難しい.診断カテーテルからエクスチェンジしよう
索引