OGOG Project 創部管理マニュアル Perinatal Wound Management — Cesarean Section & OASIS —

定価:
6,380円(本体価格5,800円+税)

在庫あり

書誌情報

書誌情報
サイズ B5
122頁
ISBN 978-4-498-16060-6
発行日 2026年07月14日
OGOG Project 創部管理マニュアル Perinatal Wound Management — Cesarean Section & OASIS —

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内容


妊産婦の人生に「きずあと」を残さないために。
産婦人科領域の適切な創部管理を学ぶ一大プロジェクト――OGOG Projectが遂に書籍化!帝王切開をはじめとする産婦人科手術では創部管理が患者の回復やQOLに大きく影響します。一方で、創部管理の実践は施設や職種による違いも大きく、十分に体系化された学習機会は限られていました。本書では、OGOG Projectの活動をもとに、帝王切開や会陰裂傷を中心とした創部管理の考え方と実践を解説。現時点で得られている知見と臨床経験を集約し、産婦人科領域の創部管理に携わるすべての医療者に向けた唯一無二のテキストです。

序文

はじめに
 医療は,日々進歩しています.
 ロボット手術,AI,遠隔医療,データサイエンス――.
 時代は確実に変わっています.
 しかし,その一方で,私はずっと違和感を抱いていました.
 「なぜ,こんなにも身近で,患者さんにとって切実な問題が,置き去りにされているのだろう」
 帝王切開.日本では年間約15万人が受ける,産婦人科医にとってはごく一般的な手術です.ですが,その術後創部について,体系化された教育も,標準化された管理も,十分には存在していませんでした.
 傷が痛む.赤く盛り上がる.かゆい.人に見せたくない.恥ずかしい.温泉に行けない.鏡を見るのがつらい.
 それらは,医学的には「瘢痕」という一言で片付けられるのかもしれません.
 しかし,患者さんにとっては“人生そのもの”に関わる問題でした.
 私は産婦人科医として,多くの女性と向き合う中で,その現実を何度も目の当たりにしてきました.にもかかわらず,そこには「仕方ない」という空気がありました.
 施設によって違う.医師によって違う.教える人によって違う.
 つまり,“標準”が存在しなかったのです.
 私はそこに,医療の大きな課題があると感じました.
 OGOG Projectは,2021年,「創部をきれいにしたい」という極めてシンプルな想いから始まりました.
 最初は小さな挑戦でした.
 手術手技を見直し,形成外科の理論を学び,創部管理を徹底し,教育を仕組み化していく.
 しかし,取り組めば取り組むほど,見えてきたことがありました.これは単なる“縫い方”の問題ではない.
 教育の問題であり,標準化の問題であり,医療DXの問題であり,そして,「患者さんの人生をどう守るか」という問題なのだと.
 だから私たちは,現場だけでは終わらなかった.
 全国の仲間とネットワークを作り,多施設研究を進め,AI解析に挑戦し,現在では教育アプリの開発にも着手し始め,さらにはSaMD(プログラム医療機器)として社会実装を目指すところまで歩みを進めました.
 今,OGOG Projectは,単なる一つの研究ではありません.
 「経験」や「勘」に依存してきた医療を,再現性のある医療へ変える挑戦です.
 そしてそれは,産婦人科だけの話ではありません.
 外科,整形外科,形成外科,在宅医療,遠隔医療――.創傷管理という領域そのものを変える可能性を持っています.
 私は,このプロジェクトを通じて強く感じています.
 医療の未来を変えるのは,特別な天才ではない.「これはおかしい」と思い続ける執念であり,「患者さんのために」という極めてシンプルな想いであり,そして,志を共にする仲間たちの存在です.
 ここまでの道のりは,決して平坦ではありませんでした.
 理解されないこともありました.前例がないと言われたこともありました.本当に実現できるのか,自問自答したこともあります.
 それでも進み続けられたのは,現場に答えがあったからです.きずに悩む患者さんがいた.
 もっと良い医療を求める仲間がいた.
 日本から世界へ発信できる医療を,本気で作ろうとしている仲間がいた.
 だから,私は諦めませんでした.
 この本には,単なる技術論だけを書いたつもりはありません.
 OGOG Projectの思想,
 教育,標準化,AI,社会実装,そして未来.
 私たちが何を見て,何に苦しみ,何を信じて進んできたのか.
 そのすべてを,この一冊に込めました.
 もしこの本が,誰かの挑戦を後押しできるなら.
 もしこの本が,現場を少しでも変えるきっかけになるなら.
 そして,未来の患者さんの笑顔につながるなら.
 それ以上に嬉しいことはありません.
 OGOG Projectは,まだ道半ばです.
 しかし私は,信じています.
 日本発の医療が,世界を変えられることを.
 そして,現場から始まる小さな違和感こそが,未来の標準医療を作ることを.
 この挑戦の記録を,ぜひ受け取ってください.

2026年7月吉日
鳥取大学医学部附属病院女性診療科群 講師
小松宏彰

目次

目次
監修言 〈関沢明彦/佐村修〉 iii
はじめに 〈小松宏彰〉 iv
Ⅰ章.帝王切開のベストプラクティス
―解剖・創部管理・創傷治癒理論
1.肥厚性瘢痕・ケロイドとは?
A.帝王切開術後における肥厚性瘢痕・ケロイドの発症率 〈杉田洋佑〉
 1 .異常瘢痕の定義と医学的評価  
 2 .腹部手術における肥厚性瘢痕・ケロイド発症率
 3 .帝王切開術後の肥厚性瘢痕・ケロイド発症率
 4 .筆者らの研究:患者自己評価による異常瘢痕発症率
B.肥厚性瘢痕の原因とリスク 〈細川義彦〉 
 1 .肥厚性瘢痕・ケロイドの原因と病態
 2 .肥厚性瘢痕とケロイドの臨床的差
 3 .リスク因子
 4 .帝王切開におけるリスクと手術手技
C.肥厚性瘢痕の影響 〈杉田洋佑〉
 1 .身体症状
 2 .QOLへの影響
 3 .精神的健康への影響:産後うつとの関連
 4 .医師と患者との認識乖離と創部管理指導の重要性
D.肥厚性瘢痕の予防 〈漆山大知〉
 1 .肥厚性瘢痕を予防できない背景
 2 .肥厚性瘢痕の原因と病態
 3 .リスク因子とリスク評価
 4 .手術手技による予防
 5 .貼付剤と患者指導・早期の対応
2.術前管理
A.抗菌薬,投与時間や種類に関して 〈平山貴士〉
 1 .帝王切開における手術部位感染と周術期抗菌薬予防投与の意義
 2 .帝王切開における抗菌薬投与タイミングのエビデンス
 3 .抗菌薬の選択と投与量
 4 .肥満患者への抗菌薬の投与量
B.剃毛は必要か 〈榎本尚助〉 
 1 .手術前に剃毛をルーチンで行うことは,感染予防の観点から推奨されない
 2 .毛の処理が必要な場合は,電気クリッパーを手術当日に行うことが国際標準である
 3 .切開ラインはどこにするか?
3.術中管理
A.皮膚切開 〈井平圭〉
 1 .執刀前の準備~知識の整理と心の準備~
 2 .切開ラインを描こう~正しい手術には地図が必要である~
 3 .いよいよ皮膚切開~決めたら迷わずに~
B.瘢痕切除 〈中野和俊〉 
 1 .瘢痕部分の評価
 2 .手術に必要な器具
 3 .解剖
 4 .肥厚性瘢痕・ケロイド切除の実際
C.浅筋膜縫合 〈草開妙〉 
 1 .皮下組織を支える浅筋膜の構造
 2 .手術中にみる浅筋膜 
 3 .浅筋膜縫合 
D.真皮縫合 〈井平圭〉 
 1 .真皮縫合に取りかかる前に
 2 .愛護的な操作の徹底
 3 .最新の情報にアンテナを張ろう
E.皮下ドレーンは必要か 〈尾臺珠美〉
 1 .創傷治癒過程における渗出液とは
 2 .創合併症のリスク因子
 3 .肥満とSSI
 4 .皮下ドレーンの目的
 5 .皮下縫合の有効性
 6 .皮下ドレーンの有効性
F.術直後の貼付材 〈細川義彦〉
 1 .術直後の貼付材の目的
 2 .術直後の貼付材に求められる要件
 3 .術直後の貼付材の種類
 4 .術直後の貼付材や期間に関するアンケート
 5 .術直後の貼付材の貼付期間
4.術後管理
A.貼付剤の種類とその意義 〈小野寺洋平〉
 1 .セルフケア貼付剤継続によるメリット
 2 .セルフケア貼付剤のいろいろ
 3 .セルフケア貼付剤の長期使用を妨げる因子とその対策
 4 .患者教育の1例
B.助産師・看護師による創部ケアと患者教育 〈小寺千聡〉
 1 .帝王切開術後の創部管理における助産師・看護師の役割
 2 .術後早期の創部ケアと患者教育
 3 .退院指導:肥厚性瘢痕・ケロイド予防を意識したセルフケアへの移行
C.肥厚性瘢痕の兆候と対策(帝王切開創) 〈末光徳匡〉
 1 .兆候の特徴~みる・さわる・自覚症状の変化を大事にする~
 2 .セルフケアの強化と教育~経過の見える化ときずケア継続~
 3 .医療機関での対応~セルフケアを見直し,必要時に形成外科紹介を~
 4 .肥厚性瘢痕予防のためのきずケアのポイント~今日から実践できるプロトコル~
D.ケロイドや肥厚性瘢痕ができてしまったら?次回帝王切開(repeat CS)での瘢痕治療:切除と再発予防 〈長﨑澄人〉
 1 .術前の考え方
 2 .手術手技
 3 .術後(再発予防)
 4 .ステロイドテープ
 5 .その他 
Ⅱ章.会陰裂傷の診断・修復
1.会陰の解剖について
 1 .会陰(perineum)の範囲
 2 .会陰体(perineal body)
 3 .尿生殖三角(urogenital triangle)
 4 .肛門三角(anal triangle)
 5 .会陰部の血管・神経
 6 .肛門挙筋(levator ani)
2.会陰裂傷2度の正しい評価・修復・教育―解剖を理解し,3 Stepで修復する―
 1 .会陰切開のエビデンスと手技(正中側切開を中心に)
 2 .解剖に基づく損傷部位の同定と修復(未診断OASISを疑うポイントを含む)
 3 .連続縫合を基本とした3 Step修復(標準手順)
 4 .糸材と縫合法(単結節か連続か)
 5 .教育実装:縫合の標準化と評価(簡略シート)
3.産科的肛門括約筋損傷(OASIS)の疫学と診断について
 1 .OASISによる影響
 2 .OASISの頻度とリスクファクター
 3 .OASISの教育,トレーニングについて
 4 .OASISの診断
4.産科的肛門括約筋損傷(OASIS)の修復について
 1 .肛門括約筋修復の基本原則
 2 .器械
 3 .手術室での損傷の再評価
 4 .修復手順と各層のポイント
 5 .修復術後の管理
 6 .外来でのフォローと次の分娩様式への配慮
巻末言 〈末光徳匡〉

索引

執筆者一覧

  • 昭和医科大学医学部産婦人科学講座主任教授 関沢明彦 監修
  • 東京慈恵会医科大学産婦人科学講座教授 佐村 修 監修
  • 鳥取大学医学部附属病院女性診療科群講師 小松宏彰 編集
  • 東京慈恵会医科大学産婦人科学講座助教 末光徳匡 編集
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