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書籍詳細

間違いだらけの緩和薬選び 

間違いだらけの緩和薬選び 

世界一簡単な緩和薬の本

大津秀一  著

A5 170頁

定価3,300円(本体3,000円 + 税)

ISBN978-4-498-01794-8

2013年06月発行

在庫なし

緩和薬選びの常識を変える

一般病院,ホスピス,在宅支援診療所,大学病院.すべての緩和ケアのフィールドで常勤医として緩和医療を行ってきた著者が,そこで会得した真に最適な処方をあますところなく開陳する.厳選された薬剤を,重要度順に解説.疼痛・倦怠感・不眠・せん妄など,緩和ケアで問題となる諸症状のうち,どの薬剤がどれに奏効するかについても,本書独自の「緩和スペクトル」を見れば一発で理解できる.緩和薬選びの常識を変える究極の実用書!

はじめに

皆さん,こんにちは.緩和医療医の大津秀一です.
はじめての皆さん,はじめまして.
『世界イチ簡単な緩和医療の本』(総合医学社)の読者の皆さん,お久しぶりです.
この本は,世界一簡単な緩和医療の薬物療法の本を目指して書かれました.

緩和医療,皆さんは得意ですか?
ひょっとすると,やや苦手意識があるかもしれません.でも大丈夫です.この本を読み終えるころには,その苦手意識はだいぶ払拭され,一刻も早くこの本で知った薬物療法を使ってみたくなるに違いありません.それだけ有効な処方を本書の中で記したつもりです.またこの本のもうひとつの特徴であり,類書との違いは,私が「一般病院,ホスピス,在宅支援診療所,大学病院」全てで常勤医として働き緩和医療を行った経験があることです.様々な医療環境(特に在宅医療)で働くことで,より最適な処方が見えてきました.それが反映されることと思います.
さて,かつて若き医療者だった皆さんは,きっと先輩や同僚と居酒屋やレストランや夜の医局や,それこそ色々なところで「耳学問」をする機会があったに違いありません.特に,夜の酒場で熱く病棟の患者さんのことを語り合う中に,先輩の深い知識や同僚から自分が知らないことを聴く機会があって,それがとても勉強になったのではありませんか? そして今若き医療者の皆さんは,きっとそういう時間が大事な勉強の場になっているのではありませんか?
私はこの本で「緩和医療の耳学問」の場を提供したいと思います.夜酒場で,皆さんと私が語り合っているような,リラックスしているけれども,最新の緩和医療をマスターしてやる! というような気持ちで,耳を傾けて頂けたらと思います.
緩和医療をやってみたいけれども何から手をつけていいかわからない方,ある程度処方は勉強したけれども一歩を踏み出す勇気がない方,医師向け緩和ケア教育の基本プログラム(PEACE)を修了したけれども処方する機会がないまま時間が過ぎてしまった方,そんな皆さんにもこの本は一歩踏み出す力を与えてくれると思います.
苦痛の緩和は緩和医療の第一歩です.苦痛を取り除かなければ,患者さんは肯定的な気持ちなど抱きようもありません.この苦痛を早く終わらせてほしい,死なせてほしいと思うのも不思議ではありません.ですから,苦痛緩和の薬物療法をマスターすることはとても重要なのです.苦痛緩和をある程度なしえた後に,「患者さんのQOL(生活の質,生命の質)を改善する」という緩和ケアの真髄が初めて可能になります.皆さんが苦痛緩和をマスターした時,「患者さんの残り時間をより良いものにするためには何が最良なのか」という新しい,より難しく,より楽しく,よりやりがいのある課題が立ちはだかるでしょう.そのようになることを願ってやみません.
ですから,「処方で苦労するようなことはできるだけ避けたい」と思います.もちろんそれでも簡単に取り除けない苦痛があるのは事実です.しかしよりやらなければいけないことがある以上,処方の立案・施行までの時間は最小限にしたいものです.この本にはそういう強い著者の願いがあるため,薬剤の内容は絞り込まれるでしょうし,本当に効く薬剤を中心に挙げられることでしょう.そしてまた多くの医療者に時間が少ないこと(そして終末期の患者さんもそうであること)を鑑み,知識は削ぎ落とされた最も実践において重要なものになることでしょう.ゆえに,緩和医療の薬剤が既に自由自在に使用できる専門家に,という本ではなく,緩和医療の初学者の知識のために,緩和医療中級者に新しい示唆を提供するために,そして「今目の前で苦しむ方々を救いたい」と願う実践家・臨床家のために,もちろん緩和医療を専門としない方にも十分ご理解・ご使用頂くために,この本は綴られます.
最後にこの本は広き未開拓の地であった緩和医療の世界を切り拓いてくださった先生方の努力があって生まれた本です.緩和医療の大先輩方に深く御礼申し上げます.

使用上の注意
この本は多数の書籍,論文,ガイドライン類を参考に書かれていますが,私自身の緩和医療経験が深く反映されております.ゆえに,ガイドライン等での推奨が未だされていないもの,未収載のものなどがふんだんに含まれています.しかし,千例を超える事例の経験の中,できるだけ先入観を排し,冷静に観察した集大成が,余すところなく反映されていると思います.ぜひ実際に施行してみてください.論より証拠です.使用すれば,私の勧めるものが有効であることに気が付いてくださるものと信じております.ただ,薬剤の使用法や選択理由,あるいは病態や薬剤の諸解釈に個人的,経験的意見も含まれると思いますが,その点をご理解いただけると有り難いです.
またこの本は,極めて平易に「緩和医療で使用する薬剤」を記載することを目指しているために,記載が網羅的ではない所や,厳密に言うと正確ではない記載の箇所も少なからずあると思います.あくまで入門書として,決して浅くない緩和医療の世界の入り口として,あるいは究極の実用書として使っていただけると幸いです.その点をご理解いただけると有り難く思います.読了し,実践し,余裕があったら成書に挑んでいただければとても嬉しいです.最近相次いで出版された日本緩和医療学会の各種ガイドラインも,中級者以上の方々には読まれるのに好適であると思います.
最後に,お決まりの記載で申し訳ありませんが,薬剤の実際の使用については,他の書籍や薬剤の本もしっかり参照した上で,自己責任で行ってください.医療は期待できる効果が必ず得られるとは限らないことは,皆さんは十分ご承知かと存じます.ゆえに,この本を使用した上で得られた結果は,著者の責によらないことをお伝えします.また適応外使用もあるため,そしてまたそれを逐一記していないので,その点も注意してください.
患者さんが良くなるのも,悪くなるのも,その患者さんに直に関わっている医師及びコメディカルスタッフ全員の責任であることはどうか(ご承知のこととは思いますが)今一度心にお留め置きください.よろしくお願いします.
なお余談ですが,酒場での「緩和医療の耳学問」をコンセプトに作ったため,フランクな表現もあろうかと思いますし,遊び心もあろうかと存じます.また題名も「間違いだらけの◯◯◯選び」のオマージュでもあります.目指しているものはとても真剣なものです.しかし,できるだけわかりやすくするための工夫でもありますので,どうかご了解ください.
毎年緩和ケアを必要とする患者は世界中で1億人を超える一方で,実際にそうしたサポートを受けることができているのはそのうち8%に満たないそうです(The quality of death ranking end-of-life care across the world. Economist Intelligence Unit. 2010).少しでも多くの方の苦痛が緩和されるよう,ここから紹介する薬剤を駆使して努力して参りましょう.
なお薬剤はすべて私が緩和医療で「重要だと思う順番」に並べています.なお,これは暫定的なもの,かつ現時点での私の意見ですので(もちろん好き嫌いもあるでしょうし),今後変わりうる可能性があります.その点はよろしくお願いします.
最後になりますが,この本は「実用書」です.行ってもらって初めて,この本の正誤についても明らかになると存じます.どうか読了した後は,この本に記した緩和の薬剤を積極的に使用してみてください.よろしくお願いします.
では読み進めてください.

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目 次

はじめに
使用上の注意
緩和スペクトルの見方

序章 がんの患者さんの苦痛を取る時のポイント
   薬を適切に使用するための(薬以外の)基礎知識

1 ベタメタゾン,デキサメタゾン
2 ミダゾラム,フルニトラゼパム
3 疼痛の治療法
  ◆ アセトアミノフェン
  ◆ NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)
  ◆ オピオイド
  ◆ モルヒネ
  ◆ オキシコドン
  ◆ フェンタニル
 ★鎮痛補助薬のすべて
  ◆1 プレガバリン
  ◆2 デュロキセチン
  ◆3 アモキサピン
4 ブロマゼパム坐薬
5 呼吸困難の治療法
6 フェノバルビタール(注射と坐薬)

【精神症状の治療薬】
7 せん妄の治療薬
  ◆ クエチアピン
  ◆ リスペリドン
  ◆ ハロペリドール
8 不安の治療薬
  ◆ 抗不安薬
9 不眠の治療薬
10 抑うつの治療薬

【消化器症状の治療薬】
11 消化管閉塞の治療薬
  ◆ オクトレオチド
12 腸蠕動痛の治療薬
  ◆ ブチルスコポラミン
13 嘔気・嘔吐の治療薬
14 便秘の治療薬

【その他の身体症状の治療薬】
15 高カルシウム血症の治療薬
16 浮腫・腹水・胸水の治療薬
17 めまいの治療薬
18 口腔内カンジダ症の治療薬
19 抗菌薬と皮下点滴
20 皮膚転移の悪臭に

おわりに
索引

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執筆者一覧

大津秀一  緩和医療専門医/東邦大学医療センター大森病院 緩和ケアセンター長 著

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