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書籍詳細

血糖値をめぐる88の物語

血糖値をめぐる88の物語

村田 敬 編著 / 岡崎研太郎 編著

A5判 206頁

定価2,860円(本体2,600円 + 税)

ISBN978-4-498-12358-8

2014年12月発行

在庫なし

糖尿病の診療やケアで最も重要でありながら最も難しいとされていることの1つが,患者とのコミュニケーションである.多種多様な背景を持つ患者たちにどう対応していけばいいのか…経験豊かな執筆陣が,自身が直面した出来事や思いを下地にして物語として綴った.時に寄り添い,時に叱咤激励しながら患者と共に歩んだそれぞれのエピソードが,日々の患者への向き合い方で迷った時のヒントとなる.バイブルとも言える書だ.

■はじめに


昔、あったずもな。

遠野の里の語り部たちは、決まってこの言葉から物語を始めるという。

さて、この本は日本全国から寄せられた血糖値にまつわる88の物語を集めたものである。物語のなかには、語り部自身が経験したものもあれば、伝え聞いたものもあり、あるいは想像によるものが混じっているやもしれぬ。27人の語り部のなかには、医師もいれば、看護師、薬剤師、管理栄養士もいる。おそらく、語り部自身に秘められた病の経験や心の痛みがあって、そのことが登場人物の心と共鳴して、これらの物語が紡ぎだされたのではないかと思う。

どんどはれ。



■あとがき

 今の時代における物語の意味とは、何なのだろう。そんな漠然とした問いを胸に抱きながら、私は京都から岩手へ向かった。
 岩手といえば、遠野物語、そして宮澤賢治が思い起こされる。遠野物語は、短い口頭伝承の集合で、現代人からすると不可解に感じられる内容も少なくないが、注目すべきは、その多くが経験談の体裁をとっていることである。宮澤賢治の物語も、どこか現実離れしたところがある。
 東日本大震災から半年ほどたった2011年の晩秋。私は被災した友人を釜石の仮設住宅に見舞った。彼は、「いろいろと助言されるのが辛い。被災地支援で来てくれた人のなかに、ただ、ただ、話を聞いてくれる人がいた。それが、いちばんありがたかった」と話していた。その夜、私は風の又三郎が仮設住宅の上を、どっどど どどうど どどうど どどう、と駆け抜けるのを聞いた。そして空には、満天の銀河が輝いていた。
 この本に集められた88の物語をどう感じるかは、読者に任せたい。自己管理を要する慢性疾患に悩む患者がいて、そっと寄り添う医療従事者がいる。自己中心的な原理が勢いを増し、他者への無関心が蔓延する現代において、私は、ここに希望を見出したい。
 最後に、注文の多い編者と著者のさまざまな要望に、いささかの不満気な顔もせずつきあってくださった中外医学社企画部の鈴木真美子さん、大塚千佳子さん、藤原一義さんと同社編集部の沖田英治さんに感謝したい。また、解説の執筆にあたっては、分担執筆者の一人でもある能登洋先生に助言をいただいた。
 治せぬ病を癒すために。

2014年夏 イーハトーヴにて
著者一同を代表して
村田 敬

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書 評

評者 難波光義(兵庫医科大学病院病院長)

「患者さんになったことがありますか?」

 糖尿病の薬物治療における最近の進歩は著しいが,
生活指導の基本が食事・運動療法であることは,こ
れからも変わることなくそうであろうと思われる.
その指導に当たるのは医療者で,実践するのは患者
さんであるが,対峙する両者の相克は古来変わるこ
となくすべての医療施設で展開されてきた.
 現代の患者さんたちは,中・長期的には血糖の平
均値をより低下させることを求められ,空腹時血糖
は下がりすぎず,食後血糖は上がりすぎず,日内変
動をより小さくするように進言され続けている.確
かに,この課題の成就が合併症の進展を防ぎうるこ
とが判明したのも,血糖自己測定というツールを医
療者・患者さんともに使えるようになってからであ
る.患者さんは,血糖値という数値情報を明らかに
することを要求されている生体である前に,感性を
もつ生命体でもある.また,自らのQOL と生命予
後について自己決定権をもつ個人でもある.医療者
は,ときにその事実を忘れて血糖情報の洪水に押し
流されてしまう.
 また,患者さんたちは目標とすべきゴールを医療
者から指し示されているが,このゴールへ向かうの
に“薬の匙加減”という近道を選ぶか,“暮らしの自
立”という遠回りを選ぶかも任されているのである.
 患者さんは,一体どのように実生活を暮らし,わ
れわれの処方薬を受け入れ,使用しているのか? 
それ以前に,自分の病気をどのように解釈している
のだろうか? この世界に足を踏み入れて40 年近く
なる小職の外来ですら,“狐と狸の化かし合い”と
いった様相を呈している.当然のことながら患者さ
ん自身の気持ちに裏付けられた行動様式を知らずし
て,「よく効きましたねぇ!」も,「段々効かなく
なってきましたねぇ?」も,あったものではない.
 さてさて,“患者さんになる”わけにはいかないし,
“患者さんの気持ちになってみる”ことも難しい.せ
めて“自分が患者さんなら,どう振る舞うか?”そん
なふうに,立場の置き換えができる医療者を目指し
たいものである.
 村田・岡崎両先生のもとに全国の語り部から届い
た,血糖値をめぐる88 の物語.本書を通読された
読者たちは,きっと「狐に騙される狸も満更ではな
いな」と苦笑しながらも,いつしか“患者目線になっ
て,一皮?けた”糖尿病専門医療職に成長した自分
に気付くことであろう.
(「臨床雑誌内科」2015年6月増大号 南江堂より転載)

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目 次

第1章 測らない人と測りすぎる人
 家庭のストレス(50歳代、女性、1型糖尿病)
 インスリン調節のための血糖自己測定(80歳代、男性、2型糖尿病)
 本当にストレス?(40歳代、女性、1型糖尿病)
 インスリンポンプの効用(20歳代、男性、1型糖尿病)
 血糖自己測定はどうしても嫌!(30歳代、女性、1型糖尿病)
 環境の変化と血糖値(20歳代、女性、1型糖尿病)
 体重減少が心配な女性(20歳代、女性、1型糖尿病)
 インスリンのススメ(50歳代、男性、2型糖尿病)
 はじめての一人暮らし(10歳代、女性、1型糖尿病)
 俺は普通だから(20歳代、男性、1型糖尿病)
 血糖自己測定から卒業した劇症1型糖尿病の男性(50歳代、男性、1型糖尿病)

第2章 低血糖不安と高血糖不安
 やる気が弊害となるとき、家族の想い(40歳代、女性、1型糖尿病)
 まじめに測って重症低血糖?(40歳代、女性、1型糖尿病)
 インスリン増量…でも血糖値が下がらない?(60歳代、男性、2型糖尿病)
 不安感が強い患者さんの場合(70歳代、女性、2型糖尿病)
 原因不明の高血糖(60歳代、女性、1型糖尿病)
 測定後の補食。その真の理由は?(60歳代、女性、1型糖尿病)
 眠前高血糖対策です(30歳代、女性、1型糖尿病)
 3ケタが怖い!(70歳代、男性、2型糖尿病)

第3章 習慣と言えば、習慣なのですが
 前向きになる瞬間(60歳代、男性、2型糖尿病)
 CGMの活かし方(60歳代、女性、2型糖尿病)
 独自の工夫でやっています(60代、女性、2型糖尿病)
 元引きこもり患者への対応は?(50歳代、男性、2型糖尿病)
 インスリン注射をやめたくない!?(70歳代、男性、2型糖尿病)
 測定回数を増やしたい患者と減らしたい医者(80歳代、女性、2型糖尿病)
 測らなくたって、わかるよ!(70歳代、男性、2型糖尿病)

第4章 振り返りは大切です
 血糖値を測ることが生活習慣を改めるきっかけになりました(40歳代、女性、2型糖尿病)
 血糖コントロールもスマホの時代!?(50歳代、男性、2型糖尿病)
 減らす応用カーボカウント(50歳代、女性、2型糖尿病)
 インスリン治療を嫌悪する患者さん(60歳代、男性、2型糖尿病)
 低血糖の原因は孫!?(50歳代、男性、1型糖尿病)
 薬局薬剤師の仕事は、塾の先生と似ている(40歳代、男性、2型糖尿病)
 患者さんの「すごい発見」(50歳代、男性、2型糖尿病)
 血糖自己測定とインスリン注射がごっちゃになってしまう?(60歳代、男性、2型糖尿病)
 患者さんにとって血糖自己測定の存在って何なんでしょう?(50歳代、男性、2型糖尿病)
 測定回数が少なくたって、活かせる方法はあるんです(40歳代、女性、妊娠糖尿病)

第5章 インスリンを使っていない場合の血糖自己測定
 患者の生活スタイルに合わせた血糖自己測定(50歳代、男性、2型糖尿病)
 朝食前しか測らない。なぜ?(50歳代、男性、2型糖尿病)
 絶対糖尿病になりたくない!(40歳代、女性、耐糖能障害)
 太りたくない女心(20歳代、女性、2型糖尿病)
 血糖測定をすることが納得につながった男性(70歳代、男性、2型糖尿病)

第6章 誰でも年はとります
 患者さん同士のかかわりの大切さ(70歳代、女性、2型糖尿病)
 会話が第二のお薬です(70歳代、女性、2型糖尿病)
 父親の気持ち(70歳代、男性、2型糖尿病)
 インスリン注射器に付着する血液。その理由とは(70歳代、女性、2型糖尿病)
 やっぱり家族はありがたい(80歳代、男性、2型糖尿病)
 血糖値を測る回数が急に減ったら、「もの忘れ」の進行に注意(80歳代、女性、1型糖尿病)
 1日7回の血糖測定を約束したところ、低血糖や高血糖が頻発するようになった女性(60歳代、女性、2型糖尿病)
 血糖管理上手は暮らし上手(80歳代、男性、2型糖尿病)

第7章 血糖自己測定が重荷になるとき
 負担に感じてまで血糖値を毎日測る必要はありません(50歳代、女性、2型糖尿病)
 思春期だもの(10歳代、女性、1型糖尿病)
 僕が悪いんです…(50歳代、男性、1型糖尿病)
 本当は糖尿病なんて嫌い(40歳代、男性、1型糖尿病)
 兄ちゃん糖尿病?(10歳未満、女児、1型糖尿病)
 どうして退院したくないの?(60歳代、女性、2型糖尿病)
 いつまで頑張ればいいんだ!(60歳代、男性、2型糖尿病)
 指先での穿刺が難しい(60歳代、女性、1型糖尿病)
 ライフスタイルに合わせる指導(40歳代、男性、1型糖尿病)
 妊娠中は不安も倍です(30歳代、女性、2型糖尿病)
 しびれるんです(70歳代、男性、2型糖尿病)

第8章 その人にとっての血糖自己測定の意味
 血糖コントロールのその先にあるもの(60歳代、男性、2型糖尿病)
 いちばん大切なノート(40歳代、男性、膵性糖尿病)
 終末期の血糖測定(70歳代、女性、膵性糖尿病)
 「コントロール不能!」を打破せよ(60歳代、男性、2型糖尿病)
 ストレス→どか食い→ダイエット…女性が陥る負のスパイラル(20歳代、女性、1型糖尿病)
 「難しい糖尿病」の患者さん(70歳代、男性、2型糖尿病)
 もっと早く透析しておけば良かった…(70歳代、男性、2型糖尿病)
 頑張りすぎじゃないですか?(30歳代、女性、1型糖尿病)
 血糖測定の歴史と患者さんの歴史(40歳代、女性、1型糖尿病)
 管理されるのではない、管理するのです(70歳代、男性、2型糖尿病)

第9章 不自然な記録と出会ったときに
 介護サービスの導入で判明したことは…(70歳代、女性、2型糖尿病)
 症状に鈍感な年配のご夫婦が心配です(80歳代、女性、2型糖尿病)
 愚痴を言える関係(70歳代、男性、2型糖尿病)
 血糖自己測定ノートの「LO」が意味することとは?(10歳代、女性、1型糖尿病)
 虚偽報告疑い…証拠をつかむには(30歳代、男性、2型糖尿病)
 血糖測定用紙にきりの良い数字が並ぶことはありません(70歳代、女性、2型糖尿病)
 精神疾患を併発している患者さん(30歳代、女性、1型糖尿病)
 先生には良い数値を見せたい…(50歳代、男性、2型糖尿病)
 忍耐強く待つことだって、一つの解決法なんです(30歳代、女性、1型糖尿病)
 血糖自己測定ノートの数値が、きれいに揃っている女性(50歳代、女性、2型糖尿病)

第10章 血糖自己測定から生まれる信頼関係
 朝食前に血糖値を測る意味(60歳代、男性、2型糖尿病)
 誰のための血糖測定?(60歳代、男性、2型糖尿病)
 きりの良い数字も患者さんの個性です(70歳代、女性、2型糖尿病)
 うわべだけではわからない、不安な気持ちの本当の理由(50歳代、女性、2型糖尿病)
 患者と医者の気持ちは平行線?(30歳代、男性、1型糖尿病)
 やる気のない患者さんへ。発想の転換とチーム医療(70歳代、男性、2型糖尿病)
 血糖自己測定ができない理由(60歳代、男性、2型糖尿病)
 血糖自己測定は最高のコミュニケーションツール(70歳代、男性、2型糖尿病)

解説

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執筆者一覧

村田 敬 国立病院機構京都医療センター糖尿病センター 編著
岡崎研太郎 名古屋大学大学院医学系研究科地域総合ヘルスケアシステム開発寄附講座 編著
大澤理代 京都大学医学部附属病院薬剤部 
大橋 健 国立がん研究センター中央病院総合内科 
岡田 浩 国立病院機構京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室 
加藤 研 国立病院機構大阪医療センター糖尿病内科 
加藤頼子 天理よろづ相談所病院看護部 
久保田亜希 名古屋大学医学部附属病院薬剤部 
小久保敦子 国立病院機構京都医療センター看護部 
騎馬沙苗 国立病院機構京都医療センター臨床栄養科栄養管理室 
佐野喜子 神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科 
澤木秀明 有澤総合病院糖尿病センター 
陣内秀昭 陣内病院内科 
清家美香 高島市民病院看護部 
鶴尾美穂 寺沢病院内科 
西村博之 陣内病院薬剤部 
能登 洋 聖路加国際病院内分泌代謝科 
原 栄子 新潟中央病院薬剤部 
平田 匠 先端医療振興財団国際医療開発センター事業推進室 
廣田勇士 神戸大学医学部附属病院糖尿病内分泌内科 
古家美幸 天理よろづ相談所病院内分泌内科 
真鍋 悟 国立病院機構和歌山病院診療部内科栄養管理室 
丸山 歩 新潟県厚生連柏崎総合医療センター薬剤部 
三浦順之助 東京女子医科大学糖尿病センター内科 
村内千代 関西医科大学附属滝井病院看護部 
村田裕子 高島市民病院看護部 
山根あゆみ 国立病院機構東近江総合医療センター栄養管理室 

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   定価2,860円(本体2,600円 + 税)
   2014年12月発行
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