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書籍詳細

脳梗塞診療読本 2版

脳梗塞診療読本 2版

豊田一則  編著

A5判 408頁

定価7,040円(本体6,400円 + 税)

ISBN978-4-498-22819-1

2016年04月発行

品切れ・重版未定

改訂にあたって

 本書の初版を上梓して1年後の2015年春に,中外医学社編集部から善いニュースが届きました.年内には初版が底を突きそうだとのこと.読者の皆様の関心の高さに喜びました.全面改定を行うには時機が早いと思いましたが,ちょうど脳梗塞診療の大きな転換点となった2015年に当たるので,分担執筆者の先生方にご判断をお願いして,大幅ないし小幅な修正を行っていただきました.
 2015年とはどのような年であったか? 元日のNew England Journal of Medicine誌に,超急性期脳血栓回収治療の成功を告げるMR CLEAN試験が掲載されたのを皮切りに,年の前半に多くの同種試験の結果がNEJM誌上を飾りました.いずれも目を瞠る好成績でした.それを受けて,年の後半にはこれらの比較研究やサブ解析結果などが発表され,多くの学術誌に脳梗塞治療新時代を踏まえた特集記事や提言が掲載されました.国内では6年ぶりに脳卒中治療ガイドラインが改訂されましたが,今回の新たな治療のうねりをガイドラインに網羅するには間に合わず,本体と別に「経皮経管的脳血栓回収機器 適正使用指針 第2版」が刊行されるなど,脳梗塞治療の指針が大きく動いた年でした.このような変革の年に,本書改訂に向けての作業を進めることができたのは,幸運に思えます.
 改訂にあたって分担執筆者の先生方および中外医学社編集部の皆様に,多大なご尽力をいただきましたことを,深く御礼申し上げます.
 大きく変容しつつある脳梗塞診療について,本書が読者の方々への手軽で信頼される羅針盤になればと,願うばかりです.

平成28年3月
国立循環器病研究センター 脳血管内科
豊田一則

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序 〜脳卒中に手が届いた〜
 
 昭和の終わりに医者になり,平成の初年に国循で脳卒中医療を学ぶため大阪へ移った.
 なかなか治せなかった.いつの日にかと夢見たが,現実は手強かった.
 平成と同じ年だけ脳卒中と向き合い,ここに来て進歩を実感する.見えなかった病変が写るようになり,動かなかった血栓が溶けるようになった.
 何度目かの静注血栓溶解の成功を体験したときに,touchable!(やっと手が届いたぞ)と思った.この治療は間違いなく,全国に根付くと.
 でもまだ少し触っただけ.もっとしっかりと,抱きつくほどにこの病気を掴まなければ.解決すべき課題は,山積している.
 本書は,近年中外医学社から上梓された「SCUルールブック」,「脳卒中レジデントマニュアル」の上級編を意識して,作られた.先行する2書が脳卒中・神経領域の修練医,研修医の皆さんを主たる読者と考えて編まれたのに対して,本書ではビギナーを含めて現場の最前線で働く脳卒中チームの方々の実践書となるよう,最新の情報をより詳しく収載した.同時に,専門領域以外の方にもわかりやすく読んでいただけるよう,図表を多く採り入れるなど工夫した.脳卒中全般を網羅したかったが,近年の新知見の集積が著しく,予定された厚さではとても収まらなかったので,今回は脳卒中の中でもとくに頻度の高い脳梗塞,そしてその治療に焦点を絞った.全国に数多おられる専門の先生方の中から,今回は編者と同い歳,同期生を中心に,さらにより若手の現場指揮官の方々に執筆をお願いした.平成の同じ景色を見てきた方に書いていただこうという,編者の些細なこだわりではあるのだが.
 発刊にあたって分担執筆者の先生方および中外医学社編集部の皆様に,多大なご尽力をいただきましたことを,深く御礼申し上げます.
 脳卒中医学の優れた解説書が多く存在する中で,本書を手にされた読者の方々が,なるほどと得心して読み進めてくださるような,そして本書から得た知識が日々の診療や研究活動に少しでもお役に立つような,きらりと光る一冊になればと,願うばかりです.

平成26年2月 
国立循環器病研究センター 脳血管内科
豊田一則

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目 次


第1章 脳梗塞救急診療

 ❖1 総論:救急治療の必要性と対応策〈豊田一則〉 
   A.脳梗塞患者への救急治療の意義
   B.迅速な診療を行うための方策
 ❖2 ERでの診察と症候学的診断〈中村幹昭 西山和利〉
   A.脳梗塞急性期治療の流れにおける診察の位置づけ
   B.病院前診療における神経診察
   C.病院到着後の初期診察
   D.脳梗塞の神経所見
   E.NIHSS
 ❖3 検体検査と生理検査,バイオマーカーの意義〈吾郷哲朗〉
   A.血液凝固・線溶系に関連するマーカー
   B.血小板凝集に関連するマーカー
   C.心・血管障害の指標
   D.基礎疾患の管理・評価
   E.脳梗塞に関連したバイオマーカー
 ❖4 画像診断〈古賀政利〉
   A.コンピューター断層撮影(CT)
   B.核磁気共鳴画像検査(MRI)
   C.血管撮影検査(DSA)
   D.超音波検査
   E.核医学検査
 ❖5 静注血栓溶解療法〈平野照之〉
   A.適応判断のポイント
   B.説明と同意
   C.アルテプラーゼ投与の実際と治療開始後の管理
   D.不成功例への対応
   E.静注血栓溶解療法の理論背景
   F.今後の課題:Therapeutic time windowを拡大する
 ❖6 超急性期の血管内治療〈早川幹人〉
   A.各治療手技とエビデンス
   B.急性期脳梗塞に対する血管内治療のエビデンス
   C.血管内治療の適応


第2章 急性期からの薬物治療

 ❖1 総論:病期と病型から考える急性期治療〈豊田一則〉
   A.病期から考える脳梗塞治療
   B.病型から考える脳梗塞治療
 ❖2 急性期抗血栓療法〈山上 宏〉
   A.止血機構と血栓形成
   B.脳梗塞の病型による急性期抗血栓療法
   C.急性期脳梗塞に対する抗血小板療法
   D.急性期脳梗塞に対する抗凝固療法
   E.脳梗塞に対する超急性期治療後の抗血栓療法
   F.脳梗塞急性期の抗血栓療法に関する現在のガイドラインと今後の展望
 ❖3 脳保護療法と再生医療〈猪原匡史〉
   A.脳保護療法
   B.再生医療
 ❖4 血圧管理〈佐藤祥一郎〉
   A.急性期(血栓溶解療法非施行患者)
   B.超急性期(血栓溶解療法対象患者)
   C.亜急性期・慢性期
 ❖5 糖・脂質代謝の管理,栄養管理と摂食訓練〈坂口 学〉
   A.脳梗塞急性期の糖代謝の管理
   B.脳梗塞急性期の脂質代謝の管理
   C.脳梗塞急性期の栄養管理・摂食訓練
 ❖6 慢性期抗血栓療法〈長尾毅彦〉
   A.慢性期抗血栓療法は正確な病型診断から始まる
   B.抗血栓療法は1種類ではない
   C.動脈硬化性脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞,ラクナ梗塞)における再発予防療法
   D.心原性脳塞栓症における再発予防療法
   E.日本人の敵,抗血栓療法関連の頭蓋内出血を予防するためには


第3章 非薬物治療を中心に

 ❖1 頸動脈の血行再建治療〈飯原弘二 西村 中〉
   A.症候性および無症候性頸動脈狭窄症におけるCEAの適応
   B.CEAとCASの比較試験
   C.本邦および米国のガイドライン
   D.症候性頸動脈狭窄症急性期におけるCEA
   E.今後の展望
 ❖2 頭蓋内動脈の血行再建治療〈吉村紳一〉
   A.病型
   B.治療法
   C.治療法選択における考え方
   D.まとめ
 ❖3 抗浮腫療法と減圧開頭・血腫除去術〈高橋 淳〉
   A.脳浮腫と出血転化
   B.内科的抗浮腫療法
   C.大脳半球梗塞・出血転化に対するテント上開頭術
   D.小脳梗塞に対するテント下開頭術
 ❖4 理学療法と作業療法〈酒向正春〉
   A.機能予後予測
   B.理学療法
   C.作業療法
   D.急性期リハビリテーション
   E.回復期リハビリテーション
 ❖5 言語障害,せん妄,うつ病性障害/アパシー,認知症への対応〈大槻美佳〉
   A.言語障害とその対応
   B.せん妄(delirium)とその対応
   C.うつ病性障害/ アパシーとその対応
   D.脳血管性認知症とその対応
 ❖6 脳梗塞の診療情報管理と医療経営〈鴨打正浩〉
   A.脳梗塞の現況
   B.脳梗塞診療の質とquality indicator
   C.診療情報と質の改善
   D.脳梗塞とDPC
   E.脳梗塞DPCと診療報酬
   F.脳梗塞と回復期リハビリテーション


第4章 特殊な虚血性脳血管障害と類縁疾患

 ❖1 一次予防と無症候性脳血管障害への対応〈高橋愼一〉
   A.無症候性脳実質病変
   B.無症候性脳血管病変
 ❖2 一過性脳虚血発作〈上原敏志〉
   A.TIAの定義
   B.急性脳血管症候群(ACVS)の概念
   C.TIA発症後早期の脳卒中発症リスク
   D.TIA後早期の脳卒中発症リスクに関する予測因子
   E.TIA発症後早期診断・治療の有効性を示すエビデンス
   F.TIA患者への初期対応(入院の適応,初期評価のタイミング)
   G.TIAの発症機序
   H.TIAの症候
 ❖3 脳動脈解離〈松岡秀樹〉
   A.脳動脈解離の原因と病態
   B.脳動脈解離の実態
   C.脳動脈解離の診断
   D.脳動脈解離の治療
   E.脳動脈解離の予後
 ❖4 大動脈原性脳塞栓症と奇異性脳塞栓症〈藤本 茂〉
   A.大動脈原性脳塞栓症
   B.奇異性脳塞栓症
 ❖5 凝血的異常,自己免疫異常,炎症,悪性腫瘍を伴う脳梗塞〈上坂義和〉
   A.凝血的異常
   B.自己免疫異常
   C.悪性腫瘍に伴うもの
 ❖6 もやもや病〈黒田 敏〉
   A.もやもや病の概念
   B.もやもや病の臨床的特徴
   C.もやもや病の画像診断
   D.もやもや病の治療
 ❖7 CADASIL/CARASIL〈土肥栄祐 倉重毅志 細見直永〉
   A.CADASIL
   B.CARASIL
 ❖8 RPLS,RCVS〈後藤 淳〉
   A.RPLS
   B.RCVS
   C.関連する病態
❖9 静脈性脳梗塞〈片岡大治〉
   A.脳静脈の解剖的特徴
   B.脳静脈・静脈洞閉塞症の原因
   C.脳静脈・静脈洞閉塞症の症状
   D.脳静脈・静脈洞閉塞症の画像診断
   E.脳静脈・静脈洞閉塞症の治療

索引

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執筆者一覧

豊田一則  国立循環器病研究センター脳血管内科部長/脳血管部門長 編著
中村幹昭  北里大学医学部神経内科学 
西山和利  北里大学医学部神経内科学教授 
吾郷哲朗  九州大学大学院医学研究院病態機能内科学(第二内科)講師 
古賀政利  国立循環器病研究センター脳卒中集中治療科医長 
平野照之  杏林大学医学部脳卒中医学教室教授 
早川幹人  国立循環器病研究センター脳血管内科医長 
山上 宏  国立循環器病研究センター脳神経内科医長 
猪原匡史  国立循環器病研究センター脳神経内科医長 
佐藤祥一郎 国立循環器病研究センター脳血管内科医長 
坂口 学  大阪大学医学部附属病院脳卒中センター神経内科・脳卒中科 
長尾毅彦  日本医科大学多摩永山病院脳神経内科部長/臨床准教授 
飯原弘二  九州大学大学院医学研究院脳神経外科教授 
西村 中  九州大学大学院医学研究院脳神経外科助教 
吉村紳一  兵庫医科大学脳神経外科学講座主任教授 
高橋 淳  国立循環器病研究センター脳神経外科部長 
酒向正春  健育会竹川病院院長補佐 回復期リハビリテーションセンター長 
大槻美佳  北海道大学大学院保健科学研究院准教授 
鴨打正浩  九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学教授 
高橋愼一  慶應義塾大学医学部神経内科准教授 
上原敏志  国立循環器病研究センター脳血管リハビリテーション科医長 
松岡秀樹  鹿児島医療センター脳・血管内科医長 
藤本 茂  自治医科大学附属病院脳卒中センター教授 
上坂義和  虎の門病院神経内科部長 
黒田 敏  富山大学医学部脳神経外科教授 
土肥栄祐  広島大学大学院医歯薬保健学研究院脳神経内科学 
倉重毅志  広島大学大学院医歯薬保健学研究院脳神経内科学 
細見直永  広島大学大学院医歯薬保健学研究院脳神経内科学講師 
後藤 淳  済生会横浜市東部病院脳神経センター脳血管内科部長 
片岡大治  国立循環器病研究センター脳神経外科医長 

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