まえがき
医療スタッフに、自分が手術を受けることになったら自己血輸血を選択するかどうか尋ねると、ほぼ全員が自己血を選択すると答えます。ところが、自己血輸血がどのように行われるのか、どういった問題点があるのか、について知っている医療スタッフはほとんどいません。
医学教育では、知識だけではなく経験も伝えなければなりません。ますます忙しくなる医療スタッフに「自己血輸血の知識と経験をどう教えればよいのか」悩んでいたところ、「マンガとアニメは日本が誇る文化のひとつである」という言葉に出会いました。そこで、マンガの持つ力を借りて、自習できる本を著すことにしました。
小さな本ですが、自己血輸血の基本を学びたい方に、あるいは、患者さんに役立つことでしょう。
著 者
注意 本書の内容は著作時の医学的コンセンサスに合わせ、学会ガイドライン等に準じたものですが、実際の診療では最新の正確な情報に従ってください。本書に提示された症例、施設あるいはデータは実在のものではありません。
あとがき
人間は他人の身になって考えることができる唯一の動物です。そこから「恕(じょ)」、つまり「おもいやり」の気持ちが生まれます。
この本には、研修医が患者と入れ替わってしまうという奇想天外な場面が設定されています。このような手法は今までのお堅い医学書では不可能でした。まさに、マンガで学ぶ医学書の長所です。登場人物が患者として感じた「不安」を読者の皆さんが理解できれば、医療における「仁」を伸ばすことに役立つかもしれません。
謝辞
原作にすばらしい絵を付けてくれた漫画家の桓田楠末様、先駆者である岩田健太郎先生、そして中外医学社の皆様にお礼申し上げます。
二〇一七年八月 著者
主な登場人物
若松 遼(わかまつ りょう)
5年目の若い医師。いわゆる後期研修をほぼ終了したが、何科を専攻するのか迷っている。頼りないが憎めない性格。物語が進んで行く過程で、自ら学び、成長してゆく(途中、自分自身が患者に入れ替わり、自己血輸血を体験する仮想場面がある)。遼の祖父・若松 正が後に患者として登場。
安積 彩(あさか あや)
看護師3年目。これからは看護師も専門的な資格が必要と考えていた。姉の宮城 静の入院をきっかけに、学会認定・自己血輸血看護師資格を取得することになる。
岩城一馬(いわき かずま)
大学病院の輸血部の准教授。 若松、安積を指導してゆく過程で、自らも輸血について問題点を再認識する。輸血学を担う人材(認定医、認定看護師など)の育成に努力する。 それが成し遂げられた時、なんと……。
ウサギ
『血液製剤の考え方、使い方』の「ウサギ」でおなじみ! 神出鬼没。ストーリーに割り込んで登場。でも、登場人物には見えない。読者にだけ有益な情報を伝えてくれる。1.用語の解説、2.補足説明、3.図表の説明を行う。