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書籍詳細

明日のアクションが変わる 補助循環の極意 教えます

明日のアクションが変わる 補助循環の極意 教えます

川上将司 著

A5判 422頁

定価6,820円(本体6,200円 + 税)

ISBN978-4-498-13434-8

2018年07月発行

在庫あり

循環器救急においてとくに重要な手技のひとつである“補助循環管理”は、著者の前著『循環器救急の真髄 教えます』のなかでも、とくに好評だったテーマ。そこで本書は第2弾として補助循環の管理にテーマを絞り、著者が国立循環器病研究センター勤務時代に培った経験をベースに執筆。数少ないエビデンスの冷静な分析と病態生理に基づいた血行動態の評価を踏まえ、明日からのアクションにどう生かせばよいかを丁寧にわかりやすく解説。

序文

至誠にして動かざる者は,未だ之れ有らざるなり
吉田松陰

 拙書『明日のアクションが変わる 循環器救急の真髄 教えます』(中外医学社)を上梓して1年が過ぎました.“エビデンスを使いこなす”をテーマに,少しでも臨床実地で活きる知識やエッセンスをお伝えしたい—その一心で綴った同書に対して,現場の第一線で働く医師,そしてコメディカルの皆様からたくさんの温かいお言葉をいただきました.筆者自身もこの執筆を通じて,改めてたくさんの学び(と疲労)を得ることができました.

 今回は,その中でも特にご好評をいただいた補助循環の管理について,さらに幅広く,さらに深く掘り下げた究極の補助循環管理指南書を目指して,本書を書き上げました.今回のテーマは“エビデンスの向こう側へ”.補助循環装置が必要な患者さんはもちろん重症です.しかしエビデンスはまだまだ不十分で,解明されていないこともたくさんあります.補助循環は正しく使えば最強の救急救命装置である一方で,管理中に起こる合併症は重篤なものが多く,管理する医療チームにも経験が必要です.

 しかし,その経験がモノを言うのは,説得力のある主張の裏付けとなる場合に限られます.説得力のある主張とは,数少ないエビデンスの冷静な分析と病態生理に基づいた血行動態の評価のことであり,それらを補助循環管理の一挙一動に反映させることが重要なのです.これは補助循環管理に限らず,臨床の現場に共通するプリンシプルです.

 本書にまとめた補助循環管理のプリンシプルは,筆者の師匠である国立循環器病研究センター心臓血管内科を率いる安田聡先生から学んだ流儀に基づいています.その流儀に基づき,筆者を含む同センターCCUの医師・看護師・臨床工学技士が築き上げてきた現場のマネージメントを,少しでも読者の皆様にわかりやすく,リアリティをもってお伝えしたいと思います.本書が臨床の現場で戦う皆様の明日のアクションに少しでも知識と勇気を添えることができれば,これ以上の幸せはございません.

 最後に,本書の企画・編集において中外医学社の宮崎雅弘様,中畑謙様にお世話になりました.お礼を申し上げます.

2018年6月
川上将司




巻頭言

 著者の川上将司先生は,飯塚病院で総合的な研修を終え,国立循環器病研究センター心臓血管内科レジデント,さらには全国でも指折りの救命救急センターを有する済生会千里病院での経験を経て,国立循環器病研究センターCCUのスタッフとして活躍し,同病院でのティーチング・アウォード受賞をしている研究マインドも有する優れた臨床家です.このたび『明日のアクションが変わる 補助循環の極意 教えます』を刊行されるのは,循環器重症例を共に議論しながら診療にあたった仲間として誠に喜ばしいことでありかつ誇りに思います.

 1960年代に設立されたCCUは冠動脈集中治療室として世界中で普及し,1970年代から爆発的に普及した経皮的冠動脈形成術により急性心筋梗塞への再灌流療法として確立されました.これらによりCCUでの急性心筋梗塞の死亡率は5%以下となり,循環器医はCCUの現場から離れ,その治療の場はカテーテル治療室へ移行し,終日カテーテル治療に専念するようになりました.しかし,心原性ショック例の死亡率は50%前後で推移し,決して改善されたとはいえず,重症心不全を含めた循環管理の場として心血管集中治療室(Cardiovascular Intensive Care Unit:CICU)の再構築が求められています.本書は,まさにこのCICUにおける心原性ショックについての考え方を病歴からフィジカルアセスメント,血液ガス分析から解説し,ショックの早期からの対応について,それぞれの補助循環の適応と限界,合併症について触れ,最新のImpellaの可能性について言及しています.症例提示とエビデンスを紹介しながら,適切な薬物治療の選択方法や再灌流療法まで含まれ,実臨床で役立つようわかりやすく記述されています.

 循環器救急・集中治療に携わる救急医や集中治療医,さらには循環器専門医に一読いただければ,補助循環を用いた循環管理を駆使して自信を持って診療に当たれるようになる必携の書です.

2018年7月

静岡県立総合病院集中治療センター センター長
野々木 宏




刊行によせて

 補助循環装置を目の前にして「入門書を読むか?」「専門書を読むか?」迷っている“あなた”に本書を推薦します.

 補助循環装置を使用する施設や部署に配属された“あなた”,そして補助循環装置を使用するかもしれない,もしくは使用している患者を担当する“あなた”の毎日は希望に満ち足りているでしょうか?

 【極意(ごくい)】とは,秘訣(ひけつ)や奥義(おうぎ)が同義語であり,「極意を授かる」「極意を会得する」のように使用されるため,本書を手にした読者は難しいことに挑戦するような錯覚にとらわれるかもしれません.ただし,【極意】とは,“今”の“あなた”にとって核心となる大切なことを意味します.

 本書の魅力は,初心者から専門家まで,すなわち専門医のみならず,研修医,看護師,臨床工学技士まで補助循環装置を使用する患者に携わる可能性のある全ての医療従事者を対象に,それぞれの読者にとっての“今”必要な情報が網羅されています.したがって,本書を読み終えた後にそれぞれの読者が得る【極意】は異なることでしょう!

 興味があるならば,どこから読んでもかまいません.昨日は“血液ガス分析”,そして本日は“PCPSの離脱”に「あっ,そうなんだ!」と思った瞬間が【極意】を得た瞬間です.1つかもしれませんし,たくさんあるかもしれません.同じ章をもう一度読み直した時に以前は感じなかった「あっ,そうなんだ!」という感覚を経験することもあるでしょう!

 症例を経験するごとに本書を読むことをお勧めします.読み終えた後に“あなた”が得る新しい【極意】は,“あなた”が明日に担当する患者にとっても希望を与えてくれるものとなることでしょう.

2018年7月

国立循環器病研究センター 心臓血管内科
田原良雄

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目次

第1話 ようこそ,補助循環の世界へ
  1 重症患者でもやっぱり病歴・身体所見
  2 ショックは必ずしも低血圧とは限らない
  3 血液ガス分析と暮らす
  4 補助循環を一直線上に並べるな
  5 エビデンスの向こう側へ補助循環を駆使しハートチームを牽引せよ

第2話 補助循環管理のルーティン
  1 初期診療のルーティン:ABCD+E3
  2 肺動脈カテーテルは死なない
  3 肺動脈カテーテルは悪くない.要は使い方
  4 肺動脈カテーテル指標を意識して心エコーをする
  5 肺動脈楔入圧vs左室流入血流速度波形
  6 1回拍出量vs左室流出路速度時間積分値
  7 [手技実践!] 肺動脈カテーテルを留置する
  8 肺動脈カテーテル指標の計測は呼吸相に注意

第3話 IABPを知る
  1 IABPの原理は2つ
  2 IABPの駆動タイミングを調整する
  3 IABPはノーエビデンス?
  4 ハイリスクPCIでのIABPのエビデンス
  5 ガイドラインでのIABPの位置づけ
  6 ST上昇型心筋梗塞+心原性ショックのワークアップ
  7 強心薬と昇圧薬(血管収縮薬)は全然違う!
  8 実臨床でのIABPの適応を考える
  9 IABPが禁忌となる場合
  10 [手技実践!] IABPを挿入する
  11 IABP管理のやりかた
  12 IABP管理中の合併症・トラブル
  13 IABPの理にかなった離脱

第4話 IABPの導入:NSTEMI 
症例実況中継 1
  1 急性冠症候群と安定型冠動脈疾患の区別は“アート” 
  2 急性冠症候群の分類は心電図! 
  3 急性冠症候群の3つの病態 
  4 非ST上昇型急性冠症候群のキーワードは“リスク層別” 
  5 非ST上昇型急性冠症候群の血行再建術のタイミング 
  6 冠動脈バイパス術vs PCI 

第5話 IABPの管理:致死性不整脈とポンプ不全
症例実況中継 2
  1 致死性不整脈でフリーズしないために
  2 Regular wide QRS tachycardiaを鑑別する
  3 Regular wide QRS tachycardiaを鑑別する:アデノシン編
  4 Regular wide QRS tachycardiaを停止させる
  5 多形性VTをみたらQT時間と虚血をチェック!

第6話 IABPの離脱:STEMI
症例実況中継 3
  1 STEMIはとにかくカテ!
  2 STEMIの心電図診断が難しい病態を知っておく
  3 aVR誘導にも注目せよ
  4 さようならDoor-to-balloon.舞台はプレホスピタルへ
  5 Primary PCIの適応:アップデート2017
  6 STEMIの非梗塞責任血管へのPCIの是非
  7 心原性ショックを合併した多枝病変患者のprimary PCI
  8 混合静脈血酸素飽和度を使いこなす

第7話 PCPSを知る
  1 PCPSの原理を知る
  2 PCPSと人工心肺を比較してみる
  3 PCPSにエビデンスはあるのか?
  4 PCPSのエビデンス:院内心停止(IHCA)編
  5 PCPSのエビデンス:院外心停止(OHCA)編
  6 ガイドラインでのPCPSの位置づけ
  7 PCPSの予後指標:SAVEスコア
  8 実臨床でPCPSの適応をどのように考えるか
  9 [手技実践!]PCPSの導入
  10 下肢虚血予防のための工夫
  11 心停止患者のPCPS駆動時に注意すること
  12 心停止患者に対する5つの脳保護戦略
  13 脳保護を意識した体温管理
  14 PCPSで行う体温管理
  15 PCPSの“呼吸”の管理
  16 PCPS管理のやりかた
  17 PCPS管理中の心機能回復を評価する:右橈骨動脈のPaO2
  18 PCPS管理中の心機能回復を評価する:ETCO2
  19 PCPS管理中の心機能回復を評価する:SvO2
  20 PCPS管理中の心機能回復を評価する:心係数
  21 PCPS管理中の心機能回復を評価する:左室駆出時間
  22 PCPS管理中の心機能回復を評価する:VTI
  23 PCPS管理中の心機能回復の評価が難しい病態
  24 PCPS管理中の適切なボリューム管理とは
  25 PCPS管理中に強心薬は必要?
  26 PCPS管理中に血管拡張薬は必要?
  27 PCPS管理中に人工呼吸器・IABPは必須?
  28 PCPSの合併症・トラブル
  29 PCPSの離脱:ウィーニング(国循編)
  30 PCPSの離脱:ウィーニング(海外編)
  31 PCPSの離脱:抜去
  32 自己心が回復したにもかかわらずPCPSが抜去できない時

第8話 PCPSの導入:急性僧帽弁逆流
 症例実況中継 4
  1 心雑音が聞こえない? 僧帽弁逆流
  2 僧帽弁の解剖と乳頭筋断裂について
  3 心雑音から疑う心室中隔穿孔

第9話 PCPSの管理:劇症型心筋炎
 症例実況中継 5
  1 心筋炎と心膜炎の区別
  2 心筋炎の診断に必ず心筋生検は必要か
  3 心筋炎の心電図
  4 免疫グロブリンとステロイド

第10話 PCPSの離脱:IHCA
 症例実況中継 6
  1 PCPSの離脱に重要なこころがけ

第11話 VADを知る
  1 INTERMACSとは何か
  2 BTDBTBBTCBTTBTRDT
  3 VADの分類
  4 わが国で移植適応患者を登録する
  5 J-MACSでわが国の現状を知る
  6 体外設置型VADを知る
  7 VAD患者で右心に注目することの重要性
  8 VAD装着前に右心不全のリスクを評価する
  9 VAD前の臓器障害は可逆性?

第12話 VADの導入:続・劇症型心筋炎
症例実況中継 7(5の続き)
  1 実際のところ,BTRは可能なのか
  2 VADの離脱基準はあるのか

第13話 Impellaを知る
  1 Impellaの特徴を知る
  2 左室を強力にアンローディングする
  3 [手技実践!]Impella 2.5を導入する
  4 Impella 2.5の管理
  5 Impella 2.5のトラブルと対処
  6 Impellaのエビデンス
  7 Detroit Cardiogenic Shock Initiative
  8 Impella 5.0で知っておくべきこと
  9 知っておきたいImpellaの欠点

◆INTERVIEW ◆お話相手 西連寺智子先生

索引

謝辞にかえて

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執筆者一覧

川上将司 国立循環器病研究センター心臓血管内科 飯塚病院循環器内科 著

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