小児救急標準テキストーbasic編ー
内容
プロフェッショナルな小児救急医を目指すための,日本小児救急医学会公認テキスト.
本書は,「改訂版 小児救急医療の教育・研修目標」の内容に準拠し,小児救急の基本的な知識と技術のノウハウを平易かつ網羅的にまとめている.症候編,疾患・外傷編,手技編の3本の柱に分け,各エキスパートの診療技術を集約し,標準化した.小児救急医が身に付けておかなければならない土台となる知識が詰まった,羅針盤的教科書である.
序文
推薦文
日本小児救急医学会元理事長の故山田至康先生が教育・研修委員会委員長として「小児救急医療の教育・研修目標」を公表されたのは2008(平成20)年3月14日でした.それに引き続いて,2009年11月5日には教育・研修目標の具体的な指導のあり方をマニュアル化するという目的で作成された「ケースシナリオに学ぶ 小児救急のストラテジー(編集:教育・研修委員会,監修:日本小児救急医学会・日本小児外科学会)」が発行されました.
それから10年以上が経過し,日本小児救急医学会ではこの間の医療の変化と進歩を反映する形で,2020年に「小児救急医療の教育・研修目標改訂版」を公表しました.そして,「小児救急医療の教育・研修目標改訂版」の実践的な解説書として,今回「小児救急標準テキスト―basic編―」が上梓されました.小児救急医療の教育・研修目標改訂WG,小児救急標準テキスト作成WGにおいてともに委員長を務められた井上信明先生の指揮の下,本書は日本小児救急医学会がその総力を結集して世に問う標準テキストです.
初版の「小児救急医療の教育・研修目標」はどちらかというとExpert Opinion的要素が強かったのに対して,改訂版では客観的な根拠(修正デルファイ法)に基づき,小児救急医が獲得すべき7つの能力(コアコンピテンシー)を基盤とする到達目標を設定した点が特徴です.これにより,小児救急医療は小児救急医,コメディカル,患者・保護者,社会全体が連携して成立するとする当学会の基本姿勢が明確に示されたと思います.その意味で,本書はまさに小児救急医療の診療現場の臨場感を伝えつつ学問的体系化を具現化した信頼に足る教科書といえます.
さらに,本書の内容は症候編,疾患・外傷編,手技編の3部構成になっていますが,何といっても本書の白眉は手技編にあります.実際に臨床現場において日頃からその手技を自ら実践し,かつ若手に実地指導している人にしか書けない記述が随所にあふれています.もちろん,症候編,疾患・外傷編も含めて,診療科・職種を問わず多彩な執筆陣により小児救急医療の魅力や奥深さが満喫できる充実した内容になっており,当学会が擁する人材層の厚さを大変頼もしく感じました.
「小児救急医療の教育・研修目標改訂版」は小児救急医であれば身に付けておくべき基本目標を示したものであり,逆に本書を読めば日本小児救急医学会が想定する小児救急医像が具体的にイメージできるということにもなります.小児救急医療に興味・関心のある方はもちろん,小児救急医療に関係するすべての方々に,まずは通読をお勧めする所以です.
最後に,本書の刊行にあたり,多忙な日常業務の中で多岐にわたる項目について執筆者の調整・手配や本文の校閲・編集など煩雑な業務に献身的に取り組んでいただいた小児救急標準テキスト作成WGの委員の先生方に深謝するとともに,わが国における小児救急医療のあり方を常に気にかけておられた故市川光太郎前理事長の霊前に報告できることをうれしく思います.
2023年6月
一般社団法人日本小児救急医学会 理事長
長村敏生
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序文
日本小児救急医学会が総力をあげて取り組んだ,「小児救急標準テキスト―basic編―」がようやく出版の運びとなりました.まずご尽力くださった諸先生方に心から感謝申し上げます.
日本小児救急医学会では,2020年に「小児救急医療の教育・研修目標」を改訂いたしました.初版の「小児救急医療の教育・研修目標」が作成された際,小児救急医療を学ぶ方々のための教材として,「ケースシナリオに学ぶ 小児救急のストラテジー」が作成されています.「ストラテジー」の愛称で呼ばれた本書は,小児救急医療に関する勉強会やセミナー等で広く活用いただきました.
今回,「小児救急医療の教育・研修目標」が改訂されたことに伴い,前回と同様に小児救急医療を学ぶ方々のための教材が必要となり,「ケースシナリオに学ぶ 小児救急のストラテジー」の後継本として,本書の作成を企画することになりました.
「小児救急標準テキスト―basic編―」には2つの特徴があります.
まず,日本小児救急医学会の公認テキストであるということです.日本の小児救急医療をリードする立場にある学会の理事が監修を担当し,かつ120名近い執筆者を理事と監修補佐で選定させていただきました.各エキスパートの診療技術をできる限り標準化し,小児救急に携わる研修医や若手の医師に知っておいていただきたい,小児救急の基本的な知識と技術のノウハウを平易かつ網羅的に解説する内容となっています.
もうひとつの特徴は改訂版「小児救急医療の教育・研修目標」の内容に準拠していることです.この教育・研修目標は,昨今世界の医学教育の主流となっているコンピテンシー基盤型カリキュラムの形を踏襲しています.そのなかには,小児救急医療を学ぶ人が経験すべき症候や症例,また手技が記載されています.これらは米国において小児救急医療を研修する医師たちが最終的に学ぶべき項目と照らし合わせ,日本の現状に合わせて作成されています.本書の項目は,若手医師を意識して選考していますが,かなり意欲的なところもあります.ただ本書をすべて読んでいただくことで,米国で小児救急医療を学んでいる医師たちと,ほぼ同じ内容を学べることになります.
最後になりましたが,最初の構想から2年間にわたり,根気強く,かつ丁寧に本書の完成まで導いてくださった小児救急標準テキスト作成WG(監修補佐)の池山由紀先生(あいち小児保健医療総合センター救急科),伊原崇晃先生(兵庫県立尼崎総合医療センター小児科),竹井寛和先生(兵庫県立こども病院救急科),尾藤祐子先生(神戸大学医学部附属病院小児外科),また何よりも中外医学社編集部の鈴木真美子様,中畑謙様には,心からお礼を申し上げます.
なお,勘の良い方はお気づきかもしれません.“basic編”とあるからには“advanced編”もあるのではないかと.“advanced編”は,小児救急医療を専門的に,本格的に取り組みたい方が対象となる予定です.“basic編”の完成で,高い山を登りきった感はありますが,一息ついて新たな高みを目指すことにいたします.
2023年6月
小児救急標準テキスト作成WG 代表
井上信明
目次
目 次
ChapterI 症候編
[1]異物
[2]陰囊痛・腫脹
[3]黄疸
[4]嘔吐
[5]咳嗽
[6]活気不良の乳児
[7]顔色不良
[8]肝脾腫
[9]吸気性喘鳴
[10]筋力低下・弛緩性麻痺
[11]けいれん(熱性・無熱性)
[12]下痢
[13]血尿
[14]高血圧
[15]呼気性喘鳴
[16]呼吸窮迫
[17]昏睡・意識障害
[18]消化管出血(上部・下部)
[19]心雑音
[20]鼠径部腫瘤
[21]体重減少
[22]脱水
[23]チアノーゼ
[24]疼痛
[25]無呼吸
[26]跛行
[27]発熱
[28]鼻汁
[29]鼻出血
[30]頻尿
[31]動悸・頻脈
[32]不機嫌
[33]腹部腫瘤・膨満
[34]浮腫
[35]便秘
[36]発疹
[37]めまい
[38]リンパ節腫大
ChapterII 疾患・外傷編
A 蘇生
[1]呼吸不全・呼吸停止
[2]循環不全・ショック
[3]心停止
[4]新生児蘇生
B 外傷
[1]脳神経・脊椎脊髄の外傷
[2]筋・骨損傷
[3]創傷
C 内科的治療が必要な救急疾患
[1]アレルギー性疾患
[2]循環器疾患
[3]皮膚疾患
[4]内分泌疾患
[5]消化器疾患
[6]血液疾患
[7]感染症
[8]神経疾患
[9]腫瘍関連疾患
[10]呼吸疾患
[11]腎疾患
[12]リウマチ疾患・免疫疾患
D 外科的治療・コンサルテーションが必要な救急疾患
[1]小児外科(消化器疾患)
[2]眼科
[3]泌尿器科
[4]産科・婦人科
[5]整形外科
[6]脳外科
[7]心臓外科・胸部外科
E 中毒
[1]家庭内薬品
[2]処方薬
F 環境因子が影響するもの
[1]動物咬傷・ヒト咬傷
[2]溺水
[3]窒息(誤嚥・縊頸)
[4]高体温症(熱中症)
G 心理社会的問題
[1]子どもの虐待
[2]思春期の子どもにみられる障害
[3]疼痛評価
[4]死因究明
[5]終末期医療
H 高度な医療ケアを要する小児患者
[1]呼吸・気道に関するケア
[2]消化器系に関するケア(経管栄養チューブの管理など)
[3]中心静脈路に関するケア(中心静脈カテーテルの管理)
ChapterIII 手技編
A 総論
[1]患児の抑制
[2]清潔操作(感染防御)
[3]医療安全
B 心肺蘇生に関する手技
[1]一次救命処置(BLS)
[2]気道補助デバイス,酸素投与,気道吸引
[3]バッグマスク換気
[4]気管挿管のための急速導入
[5]気管挿管
[6]中心静脈路確保
[7]骨髄路確保
[8]電気ショック(除細動,カルディオバージョン)
C 外傷初期診療に必要な手技
[1]輸血
D 処置のための鎮静と鎮痛
[1]静脈鎮静・吸入麻酔
[2]局所麻酔
[3]疼痛管理
E 新生児に関する特別な処置
[1]新生児蘇生
F 神経・脳外科的処置
[1]腰椎穿刺
G 耳鼻科的処置
[1]上気道異物除去
[2]耳鏡検査
[3]耳垢栓塞の除去
[4]外耳道異物除去
[5]鼻出血の管理
[6]鼻腔異物除去
H 循環器関連手技
[1]心電図の解析
[2]上室頻拍の止め方
[3]静脈穿刺と末梢静脈路確保
[4]留置された中心静脈へのアクセス
I 呼吸器関連手技
[1]パルスオキシメーターの使用
[2]呼気CO2モニターの使用
[3]ピークフローの計測
[4]定量吸入器,スペーサー,ネブライザーの使用
[5]気管吸引
[6]気管切開カニューレ交換
J 消化器関連手技
[1]経口補水療法の指導
[2]胃管挿入
[3]鼠径ヘルニア整復
K 生殖器関連手技
[1]外陰部の診察
[2]尿道カテーテル挿入
[3]恥骨上膀胱穿刺
L 整形外科関連手技
[1]副子固定
[2]肘内障整復
M マイナーエマージェンシー処置
[1]一般的な創傷処置
[2]縫合
[3]熱傷(外来対応可能な熱傷)の管理
[4]筋肉注射,皮下注射,自己注射
[5]経鼻・経頬粘膜・経直腸粘膜投与
N 検査関連手技
[1]グラム染色・検鏡
O 中毒・環境因子救急関連手技
[1]胃洗浄
[2]活性炭の投与
P 超音波検査手技
[1]eFAST
[2]救急腹部超音波検査
Q 搬送
[1]施設間搬送
R 災害・マスギャザリング
[1]災害トリアージ(START法)
S 子ども虐待
[1]子ども虐待防止活動