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書籍詳細

日本一やさしい胚培養士実践テキスト

日本一やさしい胚培養士実践テキスト

堤 治 監修 / 古里咲綺乃 編集 / 青野 展也 編集 / 沖津 摂 編集 / 猪鼻達仁 編集

A5判 370頁

定価7,150円(本体6,500円 + 税)

ISBN978-4-498-17600-3

2025年08月発行

在庫あり


命の奇跡をつなぐ、すべての胚培養士に
これから胚培養士を目指す方,あるいは臨床現場に出たばかりの方に向けて,実践的なノウハウをわかりやすく解説したマニュアルが登場しました.胚培養士の業務内容や必須の専門知識,機器の取り扱い,各種検査・治療・評価のポイントまで,現場で求められる知識を経験豊富な先達の視点から網羅的にまとめています.

巻頭言

 ロバート・エドワーズから話を始めましょう.エドワーズは1978年,世界で初めて体外受精に成功し,2010年にはその功績でノーベル生理学・医学賞にも輝いたことを皆さんご存知でしょう.その成功の前にヒトの卵子を体外で培養,精子と受精,受精卵の培養など数多くの研究の積み重ねがありました.エドワーズはいわば世界最初の胚培養士embryologistであり,体外受精成功に導いたそれらの業績は胚培養士の活躍の軌跡あるいは奇跡の積み重ねということができましょう.
 生殖補助医療を支える両輪といえば,胚培養士と生殖を専門とする産婦人科医ということができます.エドワーズの相棒はステプトーという産婦人科医で腹腔鏡を得意とし,エドワーズの指示に従って腹腔鏡で卵子を取り出しました.当時は,経腟超音波はもちろん早発排卵を抑える薬剤もなく,尿中のLHを頼りに採卵時期を決めていました.余談になりますが,エドワーズのボンホール研究所を訪問した際,embryologistから,LHサージの検出はハイゴナビス(持田製薬の高感度妊娠反応キット)を使っていると聞き,日本企業の貢献を嬉しく思ったものです.
 現在,排卵誘発剤,排卵誘発法は多種多様で,その応用で良好な卵子を一定数得ることは,生殖補助医療の成功を左右するといえます.胚培養士にとっても排卵誘発剤,排卵誘発法は必須の知識であることはいうまでもありません.本書でもページを割いています.重要なことでしっかり勉強していただきますが,ただ単に教科書を丸覚えするのではいけません.排卵現象は脳によりコントロールされ,卵巣局所で卵胞が発育するという,生命の精密な仕組みによって制御されています.その仕組みを知ること自体が楽しいことです.さらにそれを知ることによって排卵誘発剤,排卵誘発法の役割が身近に感じられ慣れ親しむことができます.よく勉強してよく考えると胚培養士の仕事はより楽しいものになります.
 胚培養士の業務は重要かつ崇高です.医療に関わる業務は保健師助産師看護師法(昭和23年制定)など詳細に国が規定し,国家資格として認定されています.残念ながら2025年の時点では胚培養士の国家資格化は道半ばという状態です.現在胚培養士の認定に携わる日本卵子学会,日本臨床エンブリオロジスト学会の両学会の協力体制が整ったと聞き期待しています.その際必要になるのが,胚培養士がどのような教育カリキュラムで学習し,どのような業務を実践するのかの明確な規定だと思います.本書は「日本一やさしい胚培養士実践テキスト」と銘打たれておりますが,必要と思われるカリキュラムを網羅し,業務に対応できるマニュアルとして完成されました.皆さん安心して勉強してください.
「コロンブスの卵」といっても何の卵だという人がいるかもしれません.コロンブスは1492年大西洋を渡りアメリカ大陸を発見しました.帰国後ある会合で大陸発見は誰でもできることだと言う人々に対して,コロンブスは卵を立てられるか試させました.誰もできないのを見て,卵の片端をつぶして立ててみせたという故事によります.人が思いつかないことを最初に達成することの意義を示すものです.私は胚培養の話をする時に「エドワーズの卵」を枕詞にしています.今や日本では生まれる子どもの9人に1人は体外受精といわれる時代で,当たり前の治療になっていますが,エドワーズの努力なしにはありえなかったかもしれません.エドワーズの偉業を称えるとともに,これから胚培養に従事する人にはエドワーズの先見性にならって,前例のない思いもよらないトラブルに出会っても成功への道を探ってもらいたいという気持ちも含めています.
 胚培養士として皆さんが自己実現し活躍することは即子どもを欲する患者の幸福に結びつく素晴らしいことです.胚培養士を目指す皆さん,あるいはすでに胚培養士として活躍している皆さんにとって,「日本一やさしい胚培養士実践テキスト」はいつも頼りになり,やさしい味方になります.ぜひ座右においてご愛読ください.

2025年8月
堤  治

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目次
 
巻頭言 〈堤 治〉

1 胚培養士の仕事
 1.胚培養士の紹介 〈古里咲綺乃〉
 2.胚培養士の仕事 〈古里咲綺乃〉
 3. 医療チームにおける胚培養士の役割と協力の重要性 〈沖村匡史〉

2 生殖と内分泌
 1.女性の生殖器 〈吉野 修〉
 2.男性生殖器・内分泌 〈永尾光一〉

3 配偶子形成
 1.卵子形成と成熟 〈川越雄太〉
 2.卵子の構造,細胞小器官 〈川越雄太〉
 3.精子形成と成熟 〈水田真平〉
 4.精子の構造と細胞小器官 〈水田真平〉

4 受精・発生・着床のメカニズム
 1.受精のメカニズム 〈小林達也,樋口香子〉
 2.卵子活性化のメカニズム 〈小林達也,樋口香子〉
 3.着床前の胚発生と着床のメカニズム 〈小林達也,樋口香子〉

5 培養環境
 1.培養液 〈八尾竜馬〉
 2.オイル 〈八尾竜馬〉
 3.培養方法 〈八尾竜馬〉
 4.タイムラプスインキュベーター 〈渡邉英明〉
 5.製品,培養液の選び方 〈泊 博幸〉
 6.成績管理 〈泊 博幸〉

6 培養室の構造機器の取り扱い
 1.培養室の設置位置 〈福永憲?,浅田義正〉
 2.生殖補助医療における培養環境 〈湯本啓太郎〉
 3. CO2,O2,N2,液体窒素の取り扱いと管理方法 〈福永憲隆,浅田義正〉
 4. インキュベーターの使い方と管理方法 〈福永憲隆,浅田義正〉
 5.顕微鏡の使い方と管理方法 〈吉川晃彦〉
 6.機器の滅菌方法 〈赤石一幸〉

7 不妊症の概要,検査法,治療法
 1.不妊症の定義 〈堤 治〉
 2.不妊症の原因 〈堤 治〉
 3.不妊症の検査 〈小野洋輔〉
 4.治療の進め方 〈宮下 大〉
 5.卵巣刺激 〈堤 治〉
 6.黄体補充 〈大木麻喜〉
 7.妊娠判定と妊娠初期 〈堤 治〉
 8.生殖医療の合併症 〈小川達之〉
 9.生殖医療で生まれた児の予後 〈小川達之〉

8 精液検査,精子調整
 1.精液検査の目的と方法 〈岸田拓磨〉
 2.精子調整の目的と方法 〈岸田拓磨〉
 3.精巣精子の回収 〈江頭昭義〉
 4.精子精巣組織凍結保存の目的と方法 〈江頭昭義〉
 5.特殊症例の精液検査と精液調整の方法 〈水田真平〉

9 卵子・胚の操作方法,採卵
 1.卵子,胚の操作方法 〈鈴木亮祐〉
 2.検卵の方法 〈鈴木亮祐〉
 3.採卵時の卵子の評価 〈鈴木亮祐〉
 4.前培養 〈鈴木亮祐〉
 5.特殊症例の精液検査と精液調整の方法 〈高野智枝〉

10 体外受精
 1.ディッシュ作成方法 〈名古 満〉
 2.体外受精の方法 〈名古 満〉
 3.らか処理 〈名古 満〉

11 顕微授精(ICSI)
 1.らか処理 〈長谷川久隆〉
 2.針のセッティング 〈長谷川久隆〉
 3.ディッシュの作成方法 〈長谷川久隆〉
 4.conventional ICSIの方法 〈長谷川久隆〉
 5.PIEZO ICSIの方法 〈岩山 広〉
 6.様々なICSI 〈水本茂利〉
 7. 変性回避と成績向上のポイント 〈沖津 摂〉
 8.人為的卵子活性化 〈中園亜由美〉

12 卵子,胚評価
 1.未受精卵子の評価 〈澤井 毅〉
 2.受精卵の評価 〈井上岳人,田口朝優姫〉
 3.分割期胚の評価 〈渡辺真一〉
 4.胚盤胞の評価 〈渡辺真一〉

13 卵子,胚凍結保存,融解
 1.卵子・胚凍結の目的と原理 〈江副賢二〉
 2.卵子,胚の凍結・融解方法 〈江副賢二〉
 3.卵巣組織の凍結融解方法 〈畑 景子〉

14 胚移植
 1.胚(受精卵)移植 〈古橋孝祐〉
 2.アシステッドハッチングの目的と方法 〈武田信好〉

15 着床前遺伝子診断
 1.着床前遺伝学的検査の目的 〈桑原 章〉
 2.TE-バイオプシー,Tubingの方法 〈後藤優介〉
 3.解析の原理 〈服部裕充,芦川享大〉
 4.PGT-A/-SR結果の読み取り方 〈杉本 岳〉

16 安全管理・KPI
 1.取り違え防止 〈武田信好〉
 2.感染症の取り扱い,感染対策 〈赤石一幸〉
 3.無菌操作・清潔操作 〈青野展也〉
 4. 凍結保存タンク・液体窒素の安全管理 〈入江真奈美,水野里志〉
 5.災害時の対応 〈菊地裕幸〉
 6.非常用電源の必要性,使い方 〈菊地裕幸〉

17 データ処理・統計処理
 1.データ管理の意味,必要性 〈上野 智〉
 2.各種成績の算出方法 〈上野 智〉
 3.データ処理・適切な統計処理 〈上野 智〉
 4.培養成績の評価と重要評価指標(KPIs) 〈長瀬祐樹〉

18 胚培養士の将来像
 1.学会,勉強会等での情報収集 〈藤田健太郎〉
 2. 学会発表・論文執筆の意義と目的 〈沖津 摂〉
 3.指導者となるためには 〈猪鼻達仁〉
 4.胚培養士のキャリアアップ 〈青野展也〉

19 生殖医療の倫理的課題,法律,学会のガイドライン
 1.生殖医療の保険適用と先進医療 〈堤 治〉
 2.生殖医療に関わる主な法律と倫理的課題 〈久慈直昭〉
 3.生殖医療実施のガイドライン 〈堤 治〉
 4.研究倫理とガイドライン 〈武内大輝〉
 5.安全管理 〈佐藤 学〉
 
あとがき 〈岸上哲士〉
索引

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執筆者一覧

堤 治 国際医療福祉大学大学院教授 山王病院名誉病院長 監修
古里咲綺乃 山梨大学 高度生殖補助技術センター 特任助教 編集
青野 展也 株式会社IVFラボ 副社長 編集
沖津 摂 楠原ウィメンズクリニック培養室 室長 編集
猪鼻達仁 国際医療福祉大学大学院講師 山王病院培養室室長 編集
  

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