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書籍詳細

腎臓の声が聞こえないと、先生の思う診療はできませんよ

腎臓の声が聞こえないと、先生の思う診療はできませんよ

杉本俊郎 著

A5判 160頁

定価3,740円(本体3,400円 + 税)

ISBN978-4-498-32406-0

2025年12月発行

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腎機能を正しく診ることが,日常診療を変える.その力が楽しく身につく一冊.
外来でも病棟でも,腎機能の数値を前にどう判断するか迷う場面は少なくありません.腎生理を正しく理解していれば,慌てて腎臓内科にコンサルトする必要が減り,診療の選択肢は格段に広がります.本書では,腎臓専門医でなくとも「腎臓の声」を聴けるようになるための実践的なヒントを臨床現場の目線でまとめました.小ネタも散りばめ楽しく学べるよう工夫された本書は,若手腎臓内科医はもちろん,総合診療医やプライマリケア医にも役立つ内容です.腎機能を確実に読み解く力は,診療の質を上げ,患者さんにとっても医師にとっても安心につながります.

まえがき

本書は,筆者が2020年に著した「もう困らない外来・病棟での腎臓のみかた」の続編にあたり,そして応用編といえるものです.2020年からの約5年間に,「勤務医の働き方改革」「社会保障費年間4兆円削減可能性」「8割以上の病院の収支が赤字」等,医療の現場は激動の時代を迎えつつあります.この激動の時代に対応する方略として,我々医師は,質の高い「標準療法」「State of Art Therapy」を行う必要があると考えます.「標準的治療」は,明確・単純なことが多く,外来・病棟で他職種の理解が得やすく,総力をもって対応にあたることになるので,不測の事態の減少となり,タスクシェアがすすみ,「勤務医の労働時間の減少」となります.そして,入院時間の短縮から対応できる症例の増加にもなります.これは,地域住民や病院経営にプラスになると考えます.「標準的治療」の施行は,「勤務医よし」,「住民よし」,「経営よし」の三方良し改革と言えます.現状の姑息的な改革「宿日直許可」「自己研鑽」は,三方一両損の改革だと思います.
この「標準療法」「State of Art Therapy」,特に適切な薬物療法を行うには,すべての薬剤を排泄する能力がある「腎臓の声」を適切に聞く必要があります.つまり,腎臓の下支えがないと「標準療法」は張り子の虎状態となります(心不全のガイドラインにおいて,腎機能が低下するとエビデンスと推奨のレベルの低下がみられる表1).そこで,腎臓を専門にしない医師にも「腎臓の声」が聞こえるようになることを目的に本書を著しました.しかし,本書は,腎臓学の教科書ではないので,本書の内容に疑義を持ちながら読んでいただき,ご自分自身でその根拠を確認していただくことを推奨します.現状のAIの進歩を鑑みると,AIに聞くべき内容さえ明確になれば,AIは答えてくれるようになるはずです.また,本書より,詳細な記載が多く,基本的な概念を扱った前著を合わせて読んでいただければより理解が深まると思います.
筆者は昨年還暦を迎え,今現在,勤務医として「終活中」です.よって,本書は,従来の筆者の書籍と比較して,本音・私見が多いのが特徴です.筆者は,滋賀県高島市の出身です.同市は,我国の陽明学の開祖である中江藤樹先生の生誕地でもあります.陽明学は江戸時代において異端の儒学であり,「行動することを求める」学問であります(有名な陽明学者には,大塩平八郎,佐久間象山,吉田松陰,河井継之助,山田方谷等がおられます).筆者は小学生の時に,授業で中江藤樹先生のことを習い(習った内容は,脚気心で末期の心不全になった藤樹先生が,毎晩起座呼吸で苦しいので枕を重ねて就寝されていたのですが,翌朝,老母に心配かけないために枕を下げていたという親孝行の話でしたが),最後の弟子の一人を自認しています.よって,本書は「筆者の行動」であり,読者の皆様に「腎臓の声をきいて標準治療を行う」行動を促す書です.
無学な私は,箴言集という古典の存在を先日知りました.箴言とは,戒めの言葉あるいは人生の教訓を含む短い言葉といった意味だそうです.箴言集で有名なのは,「ラ・ロシュフコー箴言集」であり,フランスモラリスト文学の代表作である格言集として知られているそうです.本書を校正していて驚きました.本書は,偶然にも,「箴言」とその根拠となる私の「エセー」(有名なもう一人のモラリストがモンテーニュであり,彼は,人間とは何か,どのように生きるべきかを考察した試みを,エセー「essai」としてまとめたことが知られている)で構成されています.啓蒙思想家・モラリストは「うざい」ことを言うことが定番でありますが,あえて,未来の医学・医療のために,「箴言」・「うざい」ことを残すべきと考え,本書を執筆しました.
このような筆者のわがままな思いをまとめる機会を与えていただき,編集の労を賜った中外医学社の鈴木真美子氏,大重祐紀氏をはじめとする中外医学社の編集部の皆様,そして,常々筆者を支えてくださっている職場の滋賀医科大学総合内科学講座・国立病院機構東近江医療センターの皆様に深謝いたします.

表1 CKD 合併心不全に対する薬物治療の推奨とエビデンスレベル
推奨クラス エビデンスレベル Minds推奨グレード Mindsエビデンス分類
CKD ステージ3 (eGFR 30~59 mL/分/1.73m2)
β遮断薬 I A A I
ACE阻害薬 I A A I
ARB I B A II
MRA I A A I
ループ利尿薬 I C C1 VI
CKD ステージ4〜5(eGFR<30 mL/分/1.73m2)
β遮断薬 IIa B B II
ACE阻害薬 IIb B C1 III
ARB IIb C C1 IVb
MRA IIb C C2 V
ループ利尿薬 IIa C C1 VI
〔日本循環器学会/日本心不全学会. 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版) .〕

2025年9月
滋賀医科大学総合内科学講座教授
東近江総合医療センター総合内科診療部長
杉本俊郎

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目次   
はじめに   
   
救急編   
1 先生の病院の血液ガスの機械は,上等ですか? / 血液ガス検査
2 アニオンギャップが1ダース,いつの時代の話や / 酸塩基平衡
3 過換気の高乳酸血症 ドッキリする前に冷静に病態を考えよう / 酸塩基平衡
4 急性アルコール中毒には輸液では改善しません / 中毒
5 体内で最も多く産生される酸は,CO2です 蘇生の基本は,肺からのCO2の排泄だ / 酸塩基平衡
6 救急室でメイロン(商品名)の大きなバッグ250 mLを使うな / 酸塩基平衡
7 酸塩基平衡異常 小ネタ集 / 酸塩基平衡
8 急性・症候性低Na血症は,脳浮腫を防げ / 低Na血症
9 処暑環境下の運動後の救急搬送例,何も考えずに,リンガー液は,心停止を来すことあり / 輸液
10 Kを含んでいない輸液でも,血清K濃度は上がる / 輸液    
11 高K血症,十分量のグルコン酸Caを投与しよう / 高K血症
12 高K血症で不整脈がでる理由を知っていますか? / 高K血症
13 尿路結石は,最も多い尿細管疾患 内科へ紹介しよう / 尿路結石
   
外来編   
1 SGLT2阻害薬 いつもと様子が違うならケトン体の測定を / SGLT2阻害薬
2 SGLT2阻害薬 アルブミン尿がない,または微量アルブミン尿期の糖尿病関連腎症に腎保護作用が本当にあるのか? / SGLT2阻害薬
3 腎保護療法の基本的理論を知っていますか? / 腎保護療法
4 SGLT2阻害薬の心保護作用は実感しているが,腎保護作用はいまいちである / 心腎連関
5 筆者の不安 慢性期の血清クレアチニン値からのeGFRは,ひょっとすると,高齢者の筋肉量の変化をみているだけかもしれない / 腎機能
6 うっ血の有無の評価はむずかしい / うっ血性心不全
7 利尿薬は,水を尿へ出す薬剤ではない,Naだ.漫然と使用される薬剤 それは,輸液と利尿薬 / Na利尿と輸液
8 水を飲むと,体重が減るらしい? / 水代謝
9 PTHとビタミンDが両方存在しないと,尿細管でのCaの再吸収は行われませんよ / 高Ca血症の腎障害
10 高Ca血症の病態の鑑別に関する小ネタ このことが病態の解明につながることがある / 高Ca血症
11 電解質異常の影にMg欠乏あり / Mg
12 下剤による高Mg血症に注意しよう / Mg
13 高K血症 野菜や果物を控えようではない / 高K血症
14 魚のPaCO2は5 mmHg 我々哺乳類はPaCO2 40 mmHgを意識しています / 呼吸性アシドーシス
15 高齢者の外来診療 薬剤性の電解質異常ばかりなり / 薬剤性腎障害
16 分子標的薬 腎臓内科医も知らない 尿細管障害・電解質異常がおこりうるよ / 分子標的薬
17 腎臓内科の診療で,厳密な腎機能を要求される診療はほとんどない / 薬剤性腎障害とコンサルテーション
   
入院編   
1 腎保護薬 急性期と外来では考え方が異なる / 腎保護療法
2 腎機能に関する小ネタ集 / 腎機能
3 アルブミンとフロセミドの静脈内投与を行っても利尿は増えませんよ.むしろ,浮腫・うっ血が悪化する可能性がありますよ / 利尿薬
4 利尿薬に関する小ネタ集 / 利尿薬
5 輸液に関する小ネタ集 / 輸液
6 入院で最も多い酸塩基平衡異常は代謝性アルカローシスだ / 酸塩基平衡
7 尿中アニオンギャップは難しい これを強要されると,尿細管アシドーシス嫌いになるのは無理ないな / 酸塩基平衡異常
8 入院しているのに,「太平洋一人ぼっち」は,病院の恥 / 病棟での高Na血症
9 低Na血症の成因を知ることが治療の基本となる / 低Na血症への対応の基本
10 病棟はストレスだらけ,あっという間に血清Na濃度が下がるよ / 低Na血症の病態
11 経腸栄養剤に含まれる食塩量がゼロだから,単純に低Na血症になるわけではない / 低Na血症の成因への誤解
12 ループ利尿薬とサイアザイド利尿薬の低Na血症 Na利尿が多いから低Na血症になるわけではない / 低Na血症の成因への誤解
13 経口NaClの投与は,細胞外液量を増加させるのであり,血清Na濃度をあげるのではない / 慢性低Na血症の治療の基本原則
14 低Na血症の補正 すべての症例に補正による浸透圧性脳症(ODS)の発症を恐れる必要はないが,発症のリスクの高い症例には十分に注意を / 低Na血症
15 病棟での高齢者の低Na血症の病態,血清Na濃度を補正して予後が改善するのか? / 慢性低Na血症
16 慢性低Na血症の治療の新しい試みの提言 / 慢性低Na血症
17 慢性低Na血症の薬物療法 「なんでもSGLT2阻害薬か?」 / SGLT2阻害薬
   
おわりに   
索引   

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執筆者一覧

杉本俊郎 滋賀医科大学総合内科学講座教授/東近江総合医療センター総合内科診療部長 著

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