北大式小児がんのキャンサーボード 連携診療実践ハンドブック
真部 淳 編著
A5判 320頁
定価5,940円(本体5,400円 + 税)
ISBN978-4-498-24508-2
2025年11月発行
在庫あり

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北大式小児がんのキャンサーボード 連携診療実践ハンドブック
真部 淳 編著
A5判 320頁
定価5,940円(本体5,400円 + 税)
ISBN978-4-498-24508-2
2025年11月発行
在庫あり
本邦初のキャンサーボード実践ハンドブック!
北海道大学病院小児科で行われている実際のキャンサーボードをロールモデルとして,
読めば各施設に応用して明日から実践できるようになるための必読書!
がん患者の状態に応じた適切な治療を提供するために主治医はもちろん手術,放射線療法,病理,化学療法,緩和ケアにかかわる専門医師や看護師,臨床心理士,社会福祉士等治療に携わるすべての医療関係者に役立つ1冊.
出版社からのコメント
お寄せいただきました書評をご紹介
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富澤大輔(国立成育医療研究センター 小児がんセンター 血液腫瘍科・診療部長)
日本人は「名医」を好む。「ブラック・ジャック」や「Dr.コトーの診療所」、「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」に代表されるように、圧倒的な技術とカリスマ性を備えた医師が患者を救う物語は、漫画や小説、テレビドラマなどに数多く描かれてきた。このような名医像は爽快感やドラマ性に富み、娯楽としては大きな魅力を持つ。しかし、現実の医療は、ひとりの名医の存在だけで完結するほど単純ではない。とりわけ、がん医療はその最たる例である。
がんは、診断ひとつを取っても、病理診断、画像診断、ゲノム診断など、複数の専門的手法を組み合わせた総合的な判断が不可欠である。治療においても、外科手術のみならず、化学療法、放射線治療、造血細胞移植、さらに近年では分子標的治療や免疫療法など、多様な治療法を適切に組み合わせる必要がある。加えて、現代医療は「病気を治す」ことだけを目的とする時代ではなくなった。生存率が80%を超えるまでに向上した小児がん医療においては、晩期合併症への対策や、退院後の家庭・学校への復帰を見据えた身体的、心理・社会的支援を含む、包括的な医療・ケアの提供が強く求められている。このように高度かつ複雑化した医療を、ひとりの「名医」だけで担うことは不可能である。医師を中心に、看護師、薬剤師、リハビリテーションスタッフ、心理士、栄養士、チャイルド・ライフ・スペシャリストなどの療養支援担当者、保育士、医療ソーシャルワーカー、さらには院内学級の教諭まで、多職種の医療専門職が連携・協働し、患者にとって最適な医療とケアを提供する「チーム医療」の実践が不可欠となっている。がん医療において、このチーム医療を具体的に機能させる中核的な場が「キャンサーボード」である。
本書『北大式小児がんのキャンサーボード:連携診療実践ハンドブック』は、全国15の小児がん拠点病院のひとつとして北海道ブロックの小児がん医療を牽引する北海道大学病院における小児がんキャンサーボードの実践を、体系的にまとめた一冊である。本書の編著者である真部淳医師は、北海道大学小児科学教室の主任教授であり、同病院における小児がん診療の責任者を務めている。真部医師は、小児がんで最多の疾患である白血病の分野における世界的な専門家であり、小児がん医療の領域においてその名を知らぬ者はいない、まさに「名医」と呼ぶにふさわしい存在である。しかしながら、本書において真部医師自身が執筆した部分は、I章「キャンサーボードとは」(8ページ)を含め、索引を除いた全299ページのうち合計22ページと、全体の1割にも満たない。むしろこの点こそが、本書の最大の特徴を端的に示していると言える。残る9割強は、外科や放射線科、歯科といった他領域の医師に加え、前述した多様な医療専門職など、現在進行形で北海道大学病院のキャンサーボードを支え、実践しているメンバーによって執筆されている。II章「小児がん診療を支えるキャンサーボードの実際」では、それぞれの医療専門職が、どのような立場と視点、問題意識をもって小児がん医療に関わっているのかが丁寧に描かれており、チーム医療の実像を具体的に理解できる構成となっている。さらに、III章「症例で見る実際」では、実際の症例を提示しながら、キャンサーボードにおける検討の経過や直面した課題が生き生きと記されており、読者はあたかもその議論に同席しているかのような追体験を得ることができる。
真部医師は本書の「序」において、次のように述べている。「このすべてを取り入れていただこうとは思いませんし、私たちのシステムもこのまま変わらないということもないと思います。あくまでも、日本に15ある小児がん拠点病院の一つで、日本の中心から離れた施設の現在の取り組みが示されていると考えていただければ幸いです。」実際、わが国の小児がん患者の約7割は、15の小児がん拠点病院以外の医療機関で診療を受けている。キャンサーボードという名称を用いているか否かにかかわらず、各医療機関において、それぞれの地域性や体制に応じた工夫を重ねながら、多職種によるチーム医療が実践されていることと思われる。本書に記されている北海道大学病院での取り組みは、そうした多様な実践の中の一つのロールモデルとして位置づけられるべきものであろう。本書を通じて示された北大病院のキャンサーボードの実践を参考にしつつ、各医療機関がそれぞれの現場に即した形でチーム医療をさらに発展させていくことを、心から願いたい。どこで、どのような立場で小児がん医療に携わっていようとも、「すべては小児がん患者のために」という想いは、私たちすべてに共通しているはずなのだから。
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